8月3日 読売新聞「編集手帳」
「桜隠し」というそうだ。
コロナで志村けんさんが亡くなった3月末のその日、
都内では桜の花が雪で覆われた。
思いもよらぬ出来事だった。
あれから4か月が過ぎた。
この間、
暮らしぶりも様変わりした。
仕事もその一つだろう。
会社に属さず、
個人で仕事を請け負うフリーランスという働き方への関心が高まっていると聞く。
ただ、
報酬や条件を一方的に変更させられたり、
仕事でけがをした時の公的補償がなかったり、
不安定な立場の人も多い。
志村さんは、
独立するかどうか迷っている人に三つの問いを立てている。
「何をしたいか、
すぐ答えられるか」
「これだけは自信がある、
という特技はあるか」
「他人から『ちょっと変わってるね』と、
よく言われるか」――。
一つでもノーがあればやめた方がいい、
と著書「志村流」(三笠書房)で語っている。
政府はフリーで働く人の労働環境を改善することを決めた。
どんな人を対象にして、
契約方法や労働法制をどう見直すか。
課題山積だが、
個性をいかせる場が広がると考えれば、
その意義は小さくない。
「だいじょうぶだぁ」と思える人が増えるといい。