2月20日 おはよう日本
古都奈良の観光で人気なのが奈良公園のシカ。
そのシカに好物のシカせんべいをあげるとおじぎを見せてくれる。
このしぐさが“かわいい”とか“礼儀正しい”と観光客に好評だが
そこには思いがけない危険も潜んでいる。
奈良公園のシカにせんべいを与えると見られるおじぎを見たさに来る人もいるほど
奈良観光の定番になりつつある。
(観光客)
「かわいい♡
おじぎは『くれてありがとう』の意味?」
「感謝の気持ちを込めてやってるんだと思います。」
シカはなぜおじぎをするのか。
奈良女子大学で動物の生態を研究している大学院生の西山若菜さんは
奈良公園で
人に向かっておじぎをするシカのべ2,676頭を調査した。
その結果
子どもの鹿はせんべいを持っている人と持っていない人をあまり区別せずおじぎをしていた。
それが大人になると
せんべいを持っている人にだけおじぎをするシカの割合が増えることが分かった。
成長するにつれて
おじぎをすればせんべいがもらえると学習しているのではないかと
西山さんは見ている。
(奈良女子大学大学院 西山若菜さん)
「えさを持っている人に対して積極的にやっていくので
えさをもらうための行動。
人で言うところの催促とかアピールとか。」
西山さんを指導する奈良女子大学の遊佐陽一教授は
おじぎには別の意味もあると考えている。
(奈良女子大学理学部 遊佐陽一教授)
「おじぎの起源としては
オス同士の威嚇・けん制というような意味があるんじゃないか。」
発情期の秋になるとオスたちはメスをめぐって争い
頭突きをしあったり
角と角を激しく突き合せたりする。
おじぎのもとになっているのは
こうした攻撃の前に頭を低くするけん制行動の可能性があるという指摘である。
おとなしいと思われがちなシカ。
攻撃的な一面もあり
トラブルになってしまうケースも増えている。
奈良県などが設けた相談窓口には
外国人観光客の急増を背景に
シカから被害を受けたという報告が相次いでいる。
シカのおじぎをじっくり見たり
写真を撮ったりするため
せんべいをなかなか与えず怒らせた結果
かみつかれたり
なかには突き飛ばされたりして骨折した人もいる。
では攻撃してくるシカにはどんな特徴があるのか。
奈良女子大学の西山さんの実験から見えてきた。
せんべいを与えず見せたままにしたところ
あきらめるシカと攻撃するシカに分かれた。
あきらめるシカは長くゆっくりとお辞儀をする。
一方小刻みなおじぎを繰り返すシカは
せんべいをもらえないとすぐさま攻撃してくる傾向がみられた。
シカのなかにも
気の短いものやのんびり屋といった
それぞれ個性がうかがえる結果となった。
(奈良女子大学大学院 西山若菜さん)
「攻撃するかどうかは個体個体の気性の荒さによりきかな。」
(奈良女子大学理学部 遊佐陽一教授)
「シカと人みたいに
違う種の動物たちがコミュニケーションするということはあまりわかていない。
何しろ野生動物ですから
人の側も注意をしつつ
シカせんべいをあげて
シカとのコミュニケーションを楽しむという形がいいのではないか。」
かわいいしぐさに潜む危険
シカの習性をよく知っていないと思わぬトラブルに合うかもしれない。