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インドネシアで混乱 ワクチンの「ハラル」 

2021-06-02 07:25:31 | 報道/ニュース

2021年5月17日 NHKBS1「国際報道2021」


国民の9割近くがイスラム教徒のインドネシアでは
新型コロナウィルスのワクチンの接種が宗教上問題ないかどうかで大きな論争になっている。
イスラム教には豚肉や酒類などを口にすることを禁じる戒律がある。
食品などに表示されているのがハラル認証を受けたことを示すマークである。
ハラル認証は
成分や製造過程を確認して戒律に反していないことを証明するものである。
食べ物だけではなく
体に入るワクチンについてもハラルかどうかの確認が行われるが
一部のワクチンが認証を得られなかったことから混乱が起きている。

今年1月にワクチンの接種が始まったインドネシア。
政府はPRビデオで国民に接種を呼びかけている。
♪みんなで国のためにワクチン接種を成功させよう
ジョコ大統領が接種を受けたときにはインターネットで生中継。
背後のパネルで強調されたのは
ワクチンが安全でハラルだということだった。
インドネシアで最初に使用が認められたのは
中国の製薬会社シノバックが開発したワクチンである。
イスラム教団体の研究所がワクチンの成分を分析。
中国で製造過程も確認してハラル認証した。
ところが続いて認められたアストラゼネカのワクチンが波紋を呼んだ。
イスラム教団体は“アストラゼネカのワクチンはハラルではない”とした。
ハラル認証のための調査を行うイスラム教団体の研究所。
アストラゼネカのワクチンの書類を確認したところ
ブタに由来する酵素トリプシンが使われていることが判明したという。
(ハラル研究所 所長)
「宗教的な見解を出す委員会は我々の情報に基づき
 ハラルの要件を満たしていないと判断しました。」
この判断にアストラゼネカ側は反論。
ワクチンに使われるウィルスを培養する際に豚由来のトリプシンを使っているものの
その後の製造過程で取り除き
ワクチンには成分として残っていないと説明している。
国民の間に動揺が広がった。
「私はハラルを選びます。
 極めて重要です。」
「何がハラルかはイスラム教団体が決めることです。」
インドネシアのイスラム教徒は他の宗教や文化に比較的寛容で
“穏健なイスラム”と言われてきた。
しかし近年
ヒジャブをかぶる女性や
コーランやアラビア語の教育に力を入れる学校が増加。
イスラム教の教えを大切にしようとする人たちの社会や政治への影響力が強まっている。
経済発展にともなって急速に社会が変化するなか
心のよりどころを宗教に求める人が増えたことが背景にあると指摘されている。
こうしたなか2月に行われた調査では
“ワクチンがハラルかどうかを重視する“と答えた人が8割を超えた。
(ハラル研究所 アリンタワティ所長)
「“扱うものすべてで神の教えに従うべき”という考えが強まっています。
 ハラルでないものを体に入れたと知れば
 イスラム教徒は罪の意識さえ感じるのです。」
一方イスラム教は
“自らの命を守ることが義務“と説いている。
(コーラン)
「自分の手で自らを破滅に陥れてはならない」
インドネシアのイスラム教団体は
“感染を防ぐためにハラルでないワクチンを打っても戒律に背くことにはならない”としている。
しかし団体幹部は取材に対し本音をのぞかせた。
(イスラム教団体 アバス事務局長)
「“豚肉を食べねば死んでしまう”という状況なら豚肉を食べることが義務となります。
 ただ実際にはすでにハラルと認められたシノバックのワクチンがあります。
 イスラム教徒はアストラゼネカのワクチンを接種すべきではありません。」
危機感を強める政府は
なんとか接種を進めようと説明に追われている。
(インドネシア 新型コロナ対策本部 報道官)
「政府はアストラゼネカのワクチン使用を決定しました。
 イスラム教団体も見解を示していますし
 規制当局から緊急使用許可も得ています。」
人々の信仰心と感染症対策をどう両立させるのか。
専門家は
“緊急時はハラルではないワクチンを接種してもよい”とするイスラム教の公式見解を丁寧に伝え
人々の不安を取り除いていくべきだと指摘している。
(シアクラ大学 ハラパン医師)
「ワクチン接種の判断において宗教は最も影響する要因の1つです。
 政府はイスラム教団体の見解を分かりやすく説明し
 国民が情報を得られるようにすべきです。」

3年前インドネシアでははしかの感染拡大が深刻で
政府は子どもを対象にはしかと風疹のワクチンの接種を広めようとした。
ところがそのワクチンがハラルと認められず
接種を拒否する保護者が相次ぎ
最終的な接種率は政府の目標を30%近く下回った。
政府は今回
“ワクチンはハラル”と大々的にアピールすることが接種の促進につながると考えたのである。
インドネシア政府は来年3月までに約1億8,000万人に接種する計画を立てている。
今のところインドネシアに供給されているアストラゼネカのワクチンは約640万回分。
シノバックの10分の1程度と少量なので
接種計画に直接大きな影響を及ぼしているわけではない。
ただシノバックのワクチンだけでは十分ではないので
政府としては
アストラゼネカのワクチンも含めて着実に摂取を進めたい考えである。
中東諸国や同じアジアのイスラム教国マレーシアでも
ワクチンがハラルかという点は重視されている。
各国でワクチンに対するハラル認証がされているし
自国でハラルワクチンの開発を目指す動きもある。
一方で
接種を着実に進めようと
マレーシアでは
政府が接種開始前から
ハラルではないワクチンを接種してもよいという見解を広めてきた。
またUAEアラブ首長国連邦でも
イスラム教の団体がこうした見解を強調している。
政府や宗教団体がどうかかわるかで接種の促進に大きな影響が出る。




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