9月18日 海外ネットワーク
南米の大国ブラジルは豊富な資源などを背景に成長を遂げ、
経済規模では中国に次ぐ新興国にのし上がった。
2014年にはサッカーW杯、
1016年にはオリンピックの開催を相次いでひかえている。
急ピッチで進められるインフラの整備は経済の躍進を象徴している。
一方で物価は急上昇し、1年間でトマトの値段が50%上がるなど
食料品や生活必需品が相次いで値上がりしている。
駐車場料金が1時間当たり日本円で1000円を超えるところもある。
ブラジルは人口1億9千人余で世界5位、
去年には新車の販売台数351万台とドイツを抜いて世界4位に浮上など
国民の旺盛な消費に支えられて経済成長を遂げてきた。
去年のGDPの成長率は7,5%と1986年以来の伸び率を記録した。
今年の伸び率は3,5%とブラジル中央銀行は予測している。
高度成長にブレーキがかかろうとしているのだろうか。
経済が成長するにつれ物価が上昇してきたことは
人々の生活を直撃ししている。
好きな料理を皿に盛り重さに応じて料金が決まるレストランはブラジルでは一般的なスタイル。
食材の値上がりで100グラムあたり20%値上がりした。
ブラジルの好調な経済を牽引してきたのは購買意欲旺盛な中間層だが、
物価高のなか少しでも出費を抑えようと食品はスーパーよりも安い市場で購入し、
食事は外食を控えできるだけ手作りしている。
月収約2,500レアル(11万余)はブラジルの平均的な世帯収入を
わずかに上回る家庭では、
光熱費・食費など毎月約2,000レアルで給料の80%を占めるまでになった。
節約を重ねても貯金は出来ない。
ブラジルでは個人の所得が増えるにつれて、
貧困層は全体の10%にまで減った。
豊かになった中間層の多くの消費により商品の値段が上昇した。
この事態に対応するためブラジル中央銀行が金利を引き上げ、
12%台に設定しお金が銀行に集まるよう誘導。
物を売れにくくし物価の上昇を押さえようという狙いだ。
しかし、高い金利を目当てに外国の投資化がいっせいにブラジルに注目し、
貯金や投資信託を運用するために世界中でレアルが買われ、
為替相場でレアル高がすすんだ。
痛手をうけているのはブラジルの国内産業である。
サンパウロ市内のボタンの製造工場では今年に入り注文は激減している。
原因はレアル高によって安い中国製品の輸入が増えシェアを奪われていることだという。
価格競争に勝てず販売先は200社から130社に減少。
今年、物価の上昇に伴い従業員の給料を15%アップしたが、
従業員14人中6人を解雇せざるを得なかった。
人件費も重くのしかかっている。
レアル高に危機感を強めたブラジルの中央銀行は2年ぶりに金利引き下げた。
しかし、金利を引き下げたことで
再び物価上昇を抑えられなくなるのではないか懸念が広がっている。
主要国の金利
EU 1,5% アメリカ 0~0,2% 日本 0,1%
ロシア 8,2% 中国(貸し出し)6,5%(預金)3,5%
インド 8% ブラジル 12%
ブラジルで中間層と呼ばれる世帯の一月あたりの平均収入は日本円で10万円ほどである。
平均的な所得の水準が日本より低いにもかかわらず、
物価は日本と同じか、より高いモノもある。
たとえば世界中にチェーン店を展開しているマクドナルドのハンバーガーを
経済専門誌は世界でいくらで売られているのかで比較している。
ブラジル475円世界4番目
日本320円世界13番目
ブラジルは1990年代、物価が年間20倍以上上昇し
経済が混乱した苦い経験がある。
一方で通貨レアル高が国内の経済成長の足かせになっているのいう実態もある。
中央銀行は消費の動向を見極めながらレアル高対策をして
年内にさらなる値下げを行なうか検討することになるが、
難しい判断を迫られている。
日本の銀行や証券会社が販売しているブラジル国債などを組み込んだ金融商品がある。
新興国に関連した金融プランのなかでもブラジルは特に高い。
日本で低金利の貯金をするよりも
ブラジルの国債、株を取り入れた商品のほうが高い利回りが見込めるということで
年金の運用で購入する人も増えている。
それだけにブラジルの経済が減速すると利回りにも影響してくる。
ブラジル三井住友銀行 小西輝久社長
「去年のブラジルのGDP実質成長率は7,5%と非常に高い成長率を実現したが、
最近3%前半の成長率でかなり落ち着いてきている。
サッカーW杯は2014年、五輪が2016年にブラジルで開催される。
国際的なイベントが経済にポジティブな影響を与えるところも非常に期待できる。
ブラジル経済が腰折れするような状況に追い込まれるシナリオは描きにくい。」