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ハクモクレンの咲く季節

2020-03-28 07:00:00 | 編集手帳

3月3日 読売新聞「編集手帳」


「花明かり」という言葉がある。
広辞苑が第2版の補訂版(1976年)から掲載している。
桜が満開となり、
闇の中でもほのかに明るいことをいう。

気象エッセイストの倉嶋厚さんは、
比較的新しい言葉のうえ、
春の夜を明るく照らすのが条件ならばハクモクレンも含めていいのではと本紙に寄稿したことがある。
きのうの朝、
街路樹のそれが白い卵に似た花を枝いっぱいに咲かせているのに気づいた。

唐代の詩人、
白楽天が好んだことでも知られる。
植物学者の荻巣樹徳(みきのり)さんによると、
世界に約70種分布するモクレンのうち、
30種ほどが中国原産だという。

だが今、
かなり迷惑な“中国原産”の病原体が世界を騒然とさせている。
その国の施政が適切な時期に適切な手段を取っていれば、
これほど世界を脅かすことはなかったのに――などと思うと、
かの国からの美しい贈り物であるはずの花木を眺めながら、
複雑な心持ちになる。

日中政府は来月上旬に予定された習近平国家主席の国賓としての来日を延期する方針という。
妥当な判断だろう。
過去、
未来。
日中関係の何を話すにしても足元の明るさが足りない。


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