7月30日 NHKBS1「国際報道2020」
アメリカ経済のひずみをめぐっては
7月29日 大きな注目が集まった。
アメリカの巨大IT企業
Google、Apple、Facebook、そしてAmazon
いわゆるGAFA4社のトップが揃って議会の公聴会に出席した。
これは日本の独占禁止法にあたる反トラスト法に基づく調査の一環である。
新型コロナウィルスの感染拡大が続くなかでもGAFAが膨大な利益を上げているなか
4人は何を語ったのか。
アメリカ議会の下院で29日に開かれた公聴会。
GAFAの首脳たちは
“巨大企業が独占的な地位を利用して適正な競争を妨げている“という批判に対してこう反論した。
(アマゾン・ドット・コム ベゾスCEO)
「アマゾンのシェアは世界の小売市場の1%に満たず
米国内でも4%に満たない。
42州で10万人規模の雇用を生み出し
最低賃金の倍(15ドル以上)を支払っている。」
(フェイスブック ザッカーバーグCEO)
「常に新たな企業が生まれている。
これは競争だ。」
(アップル クックCEO)
「アップルはいかなる製品でも支配的なシェアは保有していない。」
また
巨大IT企業が中国市場に便宜を図っているとの批判を背景に
“中国軍に協力しているのではないか”という質問が飛び出すと
(グーグル ピチャイCEO)
「我が社は中国軍に協力していない。
中国では
AI=人工知能に関する小規模なプロジェクトに参加しているだけだ。」
各社のトップたちは穏やかな中にもはっきりとした口調で議会側に反論していた。
議会からの指摘は
レーダーの活用やアプリの開発
それに他社のサービスの買収といった
企業戦略の根幹にかかわるものであるだけに
“譲ることはできない”というトップの意思を感じた。
ただ
デジタル時代のインフラを提供し絶大な影響力を持つ4社には今
さまざまな批判が出ている。
シリコンバレー在住の著名な投資家ロジャー・マクナミーさん。
創業間もないFacebookをいち早く見出したが
いまは巨大IT企業を批判する急先鋒として知られている。
(投資家 マクナミーさん)
「アマゾン グーグル フェイスブックは技術を独占し
自分の利益になることにしか使っていない。」
アマゾンの本社がある西海岸のシアトル。
この町でカフェを経営するヘンダーソンさん。
アマゾンが会社の規模を拡大するなか
中心部の家賃が高騰し
店を維持するために住んでいたアパートから引越しをせざるを得なくなった。
(カフェ経営 ヘンダーソンさん)
「アマゾンはこの5~10年で急成長を遂げたが
市民の負担は増えた。
中小企業は苦しくなる一方です。」
町はこれまで雇用の拡大など恩恵を受けてきたが
こうした状況を受けて
7月 市議会が動いた。
アマゾンなどの大企業に対して新たな税金を課し
新型コロナウィルス対策やホームレスの人など社会的弱者の支援にあたることにしたのである。
(シアトル市議会 サワント議員)
「巨大IT企業は実力に見合った貢献をしていない。」
議会の公聴会でアマゾンのジェフ・ベゾスCEOは
“社会的な役割を果たしている”と主張したが
議員からの追求はやまなかった。
「アマゾンは他のビジネスでも搾取的な手法を取っているのか?」
(アマゾン ジェフ・ベゾスCEO)
「言えることは私たちは顧客中心の企業だということだ。」
たたみかけるような厳しい質問を前に
時に言いよどんだりする場面もあった。
これに対して4社のトップの中には
中国の動きを例にあげ
国際的な競争の激しさを説明する場面もあった。
フェイスブックのザッカーバーグCEOは
「中国は独自のインターネットを構築し海外に輸出している」と指摘した。
アメリカが対立を深める中国との競争で優位に立つためにも
アメリカには“巨大で強いIT企業が必要だ“と訴えているようにも聴こえた。
今回の公聴会でも巨大IT企業に対する批判は簡単には変わらない。
5時間余りの公聴会でも
4社に対する懸念を払しょくするまでには至らなかった。
また厳しい批判は
新型コロナウィルスの影響で経済が深刻な打撃が受けるなかでも
4社が莫大な利益を上げていることへの市民の不満とも無関係ではない。
それを象徴するのが
最近耳にする経済のV字回復ならぬ“K字回復”という言葉である。
(Kを少し傾けて)多くの企業が回復の糸口を見いだせないまま
右肩下がりになっていく一方
巨大IT企業は成長を続けていくという現状を表していて
拡大する格差に不満を持つ市民は少なくない。
こうした市民の不満を背景に
4社に対してはアメリカの与野党双方から批判があがっている。
今回の公聴会の最後には委員長が「適切な規制が必要だ」と述べていて
今後 風当たりがさらに強くなることも予想される。