4月3日 国際報道2017
フィリピンの首都マニラにある国立のプラネタリウム。
客席に入ると
長さ約3メートルの巨大な投影機がある。
1970年代に日本で作られたアナログ式のものである。
その特徴はなんといっても星空の美しさ。
天井全体に8、500個もの星を鮮やかに浮かび上がらせる。
その秘密は
投影機にあるいくつもの小さな穴にある。
穴に光を当てることで1つ1つの星が天井に再現されていく。
一方最新のデジタル式は星空全体を映像として映し出す。
アナログ式の方が
星が明るく輝き
本物に近い星空を表すことができるのである。
技術スタッフの1人 ロベルト・シルベストレさん(64)。
プラネタリウムがオープンした直後から40年にわたり投影機の整備を担当してきた。
(シルベストレさん)
「アナログ式投影機は星や惑星がデジタル式に比べてより本物に見えます。」
しかしアナログ式は操作が手動で手間がかかる上に機械は老朽化。
このためプラネタリウムではコンピューター制御のデジタル式への交換を予定していた。
今年11月に定年退職を迎えるシルベストレさん。
これまで
部品を自分で作って修理するなど投影機を大切に手入れしてきた。
(シルベストレさん)
「思い出がたくさん詰まっています。
修理したり手入れするのが好きでした。
この投影機にはまだ活躍してほしいです。」
美しい星空を映し出すアナログ式の投影機を残したい。
シルベストレさんは製造した日本のメーカーに思いを伝えた。
(日本メーカー担当者)
「こんなに長い間
大事に使っている施設がフィリピンにあったというのが本当に驚きです。」
プラネタリウムを休館にし
シルベストレさんは日本の技術者と一緒に投影機を完全にオーバーホールすることにしたのである。
1つ1つの部品を分解。
ていねいにメンテナンスして約1年後
投影機は新品同様に若返った。
さらにデジタル映像の機能も加えて
宇宙や惑星などのCGも映し出せるようにした。
(シルベストレさん)
「新旧の技術を取り入れた
フィリピン唯一のプラネタリウムです。
たくさんのお客さんが身に来てくれることを期待しています。」
そして迎えたリニューアルオープンの日。
開館の前から長い列ができた。
(客)
「宇宙が見たい。」
「新しいプラネタリウムが楽しみです。」
アナログ式が映し出す満天の星空。
そしてデジタル式が映し出すダイナミックなCG。
その美しさと迫力に子どもも大人も夢中である。
(客)
「とてもよくて勉強になったよ。」
(シルベストレさん)
「とても誇らしい気持ちです。
こんなに長く活躍してくれるとは驚きです。
これからまだまだ活躍すると思うと本当にうれしいです。」
フィリピンの技術者の思いのこもったアナログ式のプラネタリウム投影機。
きょうも人々を星空の世界へといざなっている。