11月9日 キャッチ!ワールドEYES
海の水質汚染が深刻化し
半年ものあいだ閉鎖されるという異例の措置が取られた
フィリピン中部のリゾート地 ボラカイ島。
(フィリピン プヤット観光相)
「ボラカイ島の再開を宣言します!」
10月26日 半年間の閉鎖を経て観光客の受け入れが再開されたボラカイ島。
アメリカの旅行雑誌で“世界一の島”にも選ばれたビーチリゾート。
その再開を待ちわびた観光客たちが初日から次々と訪れた。
(日本人観光客)
「何回も来ているが
前と比べるとゴミがなくなっているかなと楽しみにして来た。」
(ドイツ人観光客)
「きれいになった島で休日を楽しみます。」
観光客の立ち入りが半年間禁止されたことで
再び美しい海が戻っていた。
閉鎖される前の年には200万人の観光客が訪れたボラカイ島。
大勢の観光客を目当てに乱立したホテルなどが汚水をそのまま海に流していた。
その結果
売りだった青い海と白い砂浜には大量の藻と悪臭が。
閉鎖された半年間にフィリピン政府は島の改造に乗り出した。
しかし20年以上にもわたる無秩序な観光地開発がもたらした負の遺産が立ちはだかった。
地面の中から現れたのはホテルや住宅などが違法に設置した下水管。
下水道料金を支払うのを避けるため設けられたもので
ここから汚水が海に直接流されていた。
その数は当初の想定をはるかに超える2,000か所以上。
実態の把握もままならない状況に追い込まれ
閉鎖中の半年で改善するという計画は立ち消えになった。
急きょ政府が求めたのは
ホテルの自己負担で敷地内に下水の浄化槽を設けることだった。
営業再開のために800万円もかけて浄化槽を整備したホテル。
一方で多くのホテルは予期せぬ巨額の費用を支払えず
いまも6割以上のホテルが営業を再開出来ていない。
フィリピン政府は
「下水管の工事だけでなくホテルなど地元の人たちの意識を変える必要もあり
抜本的な解決には時間がかかる」と話す。
(観光インフラ企業経済区庁 COO)
「多くの人は下水管を設置すれば何を流しても良いと思っているんです。
我々はインフラの整備だけでなく
意識改革もしなければならないのです。」
下水問題とともにフィリピン政府は
大勢の観光客を受け入れるためのインフラの整備に取り組んでいる。
しかし市民の生活を顧みない強引なやり方に反発も広がっている。
ビーチにつながる狭い道沿いに違法に建てられていた住宅やレストランは全て取り壊し。
汚水を海に流していたとみられる建物を減らすとともに
リゾート地にふさわしくない交通渋滞をなくすために道路を広げた。
道路の拡張に合わせて半分が切り取られた家。
家の持ち主の65歳の男性。
十分な説明も受けられないまま
20年以上家族と共に暮らした家を失った。
(家の持ち主)
「政府の人間に“協力しないと訴える”と言われたんです。
何のための道路拡張なんですか。
ここは観光角の来る遊泳場じゃない。
政府が何を考えているのか分かりません。」
この他にもフィリピン政府は
排ガスを減らそうと
島で唯一の公共交通である三輪タクシーの電動化を進めている。
そのしわ寄せを真っ向から受けているのが
これまでガソリンの三輪タクシーを運転していたドライバーたちである。
ガソリンの三輪タクシーを15年運転してきたドラ―バー。
電動の三輪タクシーを会社から借りる料金が
収入の半分以上になってしまうため
生活ができなくなるという。
今後 島ではガソリンの三輪タクシーは禁止されるため
ほかに選択肢は無いということである。
(三輪タクシー運転手)
「政府の支持なのでどうしようもない。
反対したけど聞いてもらえなかった。」
半年間の閉鎖を経て再開された“世界一の島”ボラカイ島。
今も乱開発がもたらした負の遺産と向き合い続けている。