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ヨーロッパ仕立ての愛を、柔らかな調べにのせて

2018-12-07 07:00:00 | 編集手帳

11月9日 編集手帳

 

 1970年代初め、
日本の音楽界はあるミステリーに沸いた。
発端は仏クラシック界の大物チェリストが来日中に漏らした一言だった。
「あれは私の曲だよ」

当時はフランス映画ブーム。
街のいたるところで『男と女』や『白い恋人たち』の音楽がかかり、
フランシス・レイという作曲家が知られていた。
レイはクラシック音楽家の仮の姿か? 
謎が深まるなかレイ氏が取材に応じ、
チェリストの冗談だとわかった。

この騒ぎもファンの関心ゆえだろうか。
レイ氏が86歳で亡くなった。
サントラ盤がレコード店の中央に置かれた時代を懐かしむ方は多かろう。

かつて本紙に映画音楽にかかわる喜びを語っている。
「音楽をせりふ同然に使い、
 観客の想像にゆだねる。
 それが面白いのです」。
『ある愛の詩(うた)』は越路吹雪さんが岩谷時子さんの訳詞でカバーしている。
『愛と哀(かな)しみのボレロ』は戦争に引き裂かれた家族の愛を描く。
ヨーロッパ仕立てのさまざまな愛を、
柔らかな調べにして運んだ人だろう。

当欄の前段で『男と女』と書いたところ、
しばらく耳の奥にメロディーが響いて止まらなかった。
♪ダバダバダ…



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