2021年5月19日 NHK「おはよう日本」
1978年から43年間 基本設計を変えていないオートバイの名車
ヤマハ発動機の SR400。
排ガス規制が厳しくなるなか
9月末で国内向けの生産が終了する。
あと数か月
根強いファンの愛着がいまフルスロットルで高まっている。
排気量250㏄以上では国内唯一キックでエンジンをかけるオートバイ SR400。
昔懐かしい乗り味が楽しめる。
金属パーツがふんだんに使われている。
ヘッドライトも今では少なくなったガラス製である。
かつての人気車種は厳しくなる規制に対応できず次々と生産をやめている。
SR400は排ガスを抑える装置の開発など細かい改良を重ねて乗り越えてきた。
しかしそれももう限界。
一段階高いレベルの規制がせまり
9月末で生産終了となった。
3月に最終モデルの販売が始まると予約が殺到。
(販売店 店員 金子さん)
「僕が入社して以来初めてじゃないですかね。
もう電話がなりっぱなしで。」
鮮やかにキックスタートを決める大学生のれみさん。
この店の予約一番乗りである。
(れみさん)
「もう美しくて。
デザインが細部にわたってめちゃめちゃ好きです。」
SRは品質の高さで支持されてきた。
2人1組で入念に組み立て作業。
1日で23台しか生産できない。
生産ラインの責任者 中村さん。
作業工程にもうひと手間を惜しまない。
このメーカーのものづくりの精神はSRから培ったという。
(SR400担当 職長 中村さん)
「もうひと手間の考え方だとか
思考の部分をあらためて考えさせてくれるモデルだと思います。
SRの生産終了は確かに残念ですけど
最後の最後までお客様の笑顔のために作ります。」
43年の歴史が育んだ川崎市にあるSR専門の修理店。
ずらりと並んだSRの中には古いモデルもある。
40年近く前の1983年製。
修理に持ち込んだひとの亡くなった父親が乗っていた。
“形見となったオートバイを引き継ぎたい“という依頼である。
SRは長く乗れるよう大切に扱う人が多いという。
(オートバイ修理店 水品さん)
「何十年も眠っていたのが調子よく走り出すと嬉しいですからね。
そのオートバイをいい状態に保つ手助けを今異常にしたいと思います。」
生産終わるからこそ珍しいお客も。
ちひろさんは自分が乗るために買いに来たのではない。
生まれて11か月になる息子の新車である。
ちひろさん自身はすでにSR400を持っている。
お子さんのためには今しか買うチャンスがない。
(ちひろさん)
「免許取得する16年後だと思うんですけど
世の中どうなっているかわからないですし。
本当に私個人の夢で
やっぱり同じ道を走りたいって思います。」
昭和から令和を駆け抜けた名車が
多くの人に惜しまれながら走り去ろうとしている。