1月12日 キャッチ!
エルサレムの旧市街のあちこちから鳴り響く数々のアザーン。
聖地ならではの厳かな雰囲気をかもしだしている。
アザーンは1日に5回。
イスラム教の礼拝の開始を住民に広く知らせるのが目的である。
アザーンを唱えるタウフィーク・エラヤンさん(50)は
声の良さが認められ
10代前半から“ムアッジン”と呼ばれるアザーン専門の役割を担ってきた。
(ムアッジン タウフィーク・エラヤンさん)
「ムアッジンが出来るのも神の恵みで
イスラム教徒としての務めです。」
イスラム教徒の人たちにとって生活の一部となっているアザーン。
ところがイスラム教徒とユダヤ教徒が隣り合わせて住むエルサレムでは
アザーンが対立の火種にもなっている。
アラブ系のパレスチナ人が住む東エルサレムのベイト・サファファ地区は
ユダヤ人入植者が住むギロ地区の隣町である。
(ユダヤ人地区住民 オフェル・アユビさん)
「こっちがユダヤ人のギロ地区で
向こう側がパレスチナ人のベイト・サファファ地区です。
とても近いでしょ。」
祈りの時間を迎えるころになると近くに5か所あるモスクから一斉にアザーンが聞こえてくる。
入植者の住民代表のオフェル・アユビさんは
特に早朝のアザーンが苦痛だと訴えている。
(ユダヤ人地区住民 オフェル・アユビさん)
「アザーンがとてもうるさく生活に支障をきたしています。
たとえ何の音であれ
朝4時半に起こされるのは耐えられない。」
住民たちの訴えは議会でも検討された。
政権与党が
拡声器を使ったアザーンを制限する法案を提出したのである。
これに野党のアラブ系議員は猛反発。
ユダヤ系が多数を占める議会で自らアザーンを唱えて抗議した。
結果 議場は大混乱。
(極右政党議員 ロバート・イラトブ議員)
「スマホのアラームがある時代になぜスピーカーでの放送が必要なのか。
別にイスラム教を攻撃したいわけではありません。」
(アラブ系議員 アハマド・ティビ議員)
「これは明らかにイスラムを標的にした攻撃で
宗教の冒とくにほかなりません。」
議会での論戦を横目にアユビさんは問題解決に向けて住民同士の話し合いを進めた。
地元の警察署に集会を依頼。
市当局もアザーンの騒音調査を実施した。
3年間にわたる隣町の住民との交渉の結果
問題解決に向けて協力していくことで合意したのである。
(ユダヤ人地区住民 オフェル・アユビさん)
「宗教や習慣を傷つける意図は全く無く
生活を守りたいだけだと説得しました。」
一方 イスラム教徒の住民代表のモハンマド・エラヤンさんは
地域にあとから入植したユダヤ人の訴えになぜ耳を貸さなければならないのかと
放送に難色を示す地域住民の説得は簡単ではなかったという。
(イスラム教徒住民代表 モハンマド・エラヤンさん)
「最初は住民から批判が殺到して
理解は全く得られませんでした。」
しかし粘り強い説得で話し合いがもたれた結果
街中でのスピーカーの設置は低い位置に分散させ
また大きな音量を出さないというルールのもとに
今後もアザーンの放送を続けるようにした。
(イスラム教徒住民代表 もk半窓・エラヤンさん)
「アザーンはイスラエル建国前から変わらずあるものです。
私たちは生活を守り
宗教を守るために行動したのです。」
神聖なアザーンは騒音なのか。
異なる宗教の人々が隣り合う聖地で
新たな議論が交わされている。