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人参果(にんじんか)

2014-05-31 08:00:00 | 編集手帳
5月17日 編集手帳

『西遊記』に、
匂いを嗅ぐだけで360年も長生きできる「 人参果(にんじんか) 」という果物が出てくる。
三蔵法師一行は万寿山の仙人を訪ねた折に振る舞われている。

その実は希少なことこの上なく、
花が咲き、
実が成って熟するまでに1万年かかるという。
「こどもの日」から「母の日」「父の日」につづく季節になると、
いつもその一節を思い出す。

わが子を亡くしたつらい経験をもつ親御さんにとって逝きし子は、
この先何万年待とうとも再びはめぐり合えぬ唯一無二の命だろう。
希少で掛け替えのないことは、
人参果の比ではない。

韓国の旅客船「セウォル号」の沈没事故からひと月がたった。
修学旅行の生徒を含む284人が犠牲となり、
行方不明者はなお20人を数える。
その海外ニュースが心のどこかに影を落とすなかで「こどもの日」や「母の日」を過ごした方も多かろう。

『西遊記』の作者も霊妙で希少な人参果を創案するとき、
あるいはわが子のことがちらりと頭をかすめたかも知れないと、
そう思うときがある。
実のかたちは「生まれて3日もたたない人間の赤んぼうそっくりであった」と、
物語にある。

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