11月6日付 読売新聞編集手帳
謹賀新年。
昨年を振り返りますと、
毎朝、
目がさめるたびに、
何かしら世の中に信じられないようなことが起こっていて、心が安まるひまのない一年でした。
日本中に自然災害が吹き荒れ…。
安藤百福さんが96歳の時、
2007年元旦付の年賀状の書き出しだ。
インスタントラーメン発明王は味わい深い文章や言葉も多数残した。
語録「安藤百福かく語りき」(中央公論新社)に〈最後の年賀状〉として紹介されている。
安藤さんは年賀状や年頭所感を大切にし、
じっくりとしたためた。
06年も確かに、
豪雪、
豪雨、
竜巻などで大変な年ではあったが、
では今年を、
存命ならばどう振り返るだろう。
天国から頂戴できないものかと想(おも)う。
全国で年賀はがきの販売が始まった。
未曽有の災厄の中で、
どんな賀詞がよいかと悩んでいる人も多いようだ。
特に被災地の知人宛ては難しい。
ならば安藤さんのように言葉を尽くしてはいかがだろう。
今こそ、
近況と心境を丁寧に伝え合いたい。
できれば復興支援にもあてる寄付金付き年賀はがきで。
〈最後の年賀状〉は次代の子供たちに期待する言葉で前向きに締められていた。