2月23日 おはよう日本
卒業を控えた愛知県犬山中学校の3年生。
目指すは800メートル先を流れる木曽川。
川岸に到着すると裾をあげて川の中へ。
用意したスポンジやたわしで一生懸命汚れを洗い落とす。
卒業生や保護者らも大勢詰めかけ
すっかり2月恒例となったこの行事。
“机・腰掛け洗い”。
犬山中学校が昭和24年から続けている。
川岸にたたずむ男性は
この“机・腰掛け洗い”を始めた一人 佐藤登喜雄さん(83)。
後輩たちの様子を見に来た。
佐藤さんが中学生の当時は戦争が終わってまだ3年余。
物が全く無い時代だった。
そんなとき真新しい机といすが支給されて皆大喜び。
生徒会長だった佐藤さんは
“汚したまま後輩に渡したくない”という仲間の声を受けて
みんなで洗うことを決めたという。
(佐藤登喜雄さん)
「ピカピカの机といすを最初に使わせてもらった。
汚い状態で次の人たちに残していくのは申し訳ない。
水道も蛇口が4つか5つしかなかった。
どうしようかということになって
“じゃあ川で洗うしかないな”という話につながっていった。」
その後この行事は後輩たちに脈々と受け継がれていった。
去年まで生徒会長を務めた伊藤颯(そよか)さん。
颯さんは春から名古屋市の高校へ進学が決まっている。
父親も祖父も犬山中学出身。
3代続けての参加になる。
それだけにこの日を楽しみにしていた。
3年間の生活を思い出しながら汚れをていねいに洗い落としていく。
そして洗い終わった後はみんなで温かい足湯。
(生徒)
「みんなと寒いけど最高の思い出ができたところが楽しかった。」
「後輩たち
寒いけど絶対頑張ってくれ!
絶対楽しい思い出がつくれるぞ おー!」
作業のあと佐藤さんは颯さんにねぎらいの言葉をかけた。
(佐藤登喜雄さん)
「きょうは冷たかったでしょう。」
(伊藤颯さん)
「はい。
最初は机を持ってくるのも大変だった。
川に入ってからも大変だった。
終わったあとは机もきれいになって達成感もある。
みんなと
もうすぐ卒業だけど最後に思い出がまたできて良かった。」
(佐藤登喜雄さん)
「自分たちだけでおしまいだと思っていた。
こんなに長く続くとは夢にも思っていなかった。
とにかく『ありがとうございました』と言って洗ってもらえればうれしい。」
物を大切にして感謝の気持ちを伝えたい。
68年前の佐藤さんたちの思いは
今年も確かに引き継がれた。