日暮しの種 

経済やら芸能やらスポーツやら
お勉強いたします

昔とは父母のいませし頃を云い

2014-03-01 08:00:00 | 編集手帳
2月25日 編集手帳

川柳作家の故・麻生路郎にしみじみとした一句がある。
〈昔とは父母のいませし頃を云い〉。
長命の両親に恵まれ、
いつまでも“昔”を顧みずにいられる人は幸せである。

母親を病気で亡くし、
小学3年生の少女は漁師の父親と二人暮らしをしていた。
1年前の記事をご記憶の方もあろう。
北海道湧別町で激しい吹雪のなか、
父親は娘をかばい、
覆いかぶさるように抱いて一夜を過ごした。
娘は助かり、
父親は死亡した。

『応援してくれた全国の皆さまへ』と宛名にある。
4年生になった岡田夏音(なつね)さん(10)が本紙に託したお礼の手紙を読んだ。

いまは同じ町内の親戚の家で暮らしている。
〈わたしは今とても元気です〉。
連れていってもらう温泉が好き。
理科と図工が好き。
漢字の練習が好き。
10歳の胸に抱く“昔”は、
それでもやはり重たいのだろう。
夜のベッドで、
父親・幹男さん(当時53歳)の優しい顔が浮かんできて涙が出ることもあるという。

手紙は結ばれている。
〈お父さんが遠くから安心して見守ってくれるよう、
 人を想おもえる大人になれるようがんばります〉。
天国のお父さんが目を細めて泣いている。

コメント    この記事についてブログを書く
« アルジェリア事件から1年 ... | トップ | 密輸されるサイの角 »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

編集手帳」カテゴリの最新記事