8月28日 NHKBS「国際報道2020」
世界的なベストセラーとなっている本
「FACT FULNESS」。
世界の状況について私たちがどれだけ間違った認識を持っているかを考えさせる内容である。
FACT (ファクト) FULNERSS(フルネス)
事実やデータをもとに世界を正しく捉えることで
さまざまな問題により冷静に対応できるというものである。
この本が2年前に出版されてから日本をはじめ世界中で大ヒットしているが
コロナの感染拡大とともにさらに売れ行きを伸ばしている。
都内の書店にずらっと並んだ「FACT FULNESS」。
1万部売れれば成功とされる外国の翻訳書だが
今年に入ってさらに売り上げを伸ばし
累計92万部を突破している。
(八重洲ブックセンター)
「短期間でこれだけの部数を伸ばすというのは
非常にすごいことだと思います。」
この本は
貧困・格差・環境問題など世界の状況について
私たちがいかに誤解しがちかを示したうえで
その原因は“人間が抱える10の本能“にあると指摘している。
・分断本能
・“世界はどんどん悪くなっている”ととらえるネガティブ本能
・直線本能
・危険でないことを恐ろしいと思い込む恐怖本能
・目の前の数字が一番重要だと考えてしまう過大視本能
・パターン化本能
・宿命本能
・単純化本能
・犯人捜し本能
・焦り本能
かつて人類の祖先が危険から身を守るために身につけた“脳の性質”により
世界を現実以上にネガティブに捉える傾向があるという。
この本を執筆したのは
医師のハンス・ロスリング(2年前に他界)さんと
データ分析の専門家である息子のオーラさん
その妻のアンナさんの3人である。
(著者 アンナ・ロスリングさん)
「人間は常に分かりやすい派手なストーリーを求めていて
ゆっくりとして地味な変化よりも
極端で劇的なことが記憶に残りやすい。
私たちはこの本を通して
人々が自分の力で情報を正しく捉える方法を教えたいと思った。」
なぜ事実を正しく把握しなければいけないのか。
本には医師としてアフリカ モザンビークで働いていたハンスさんの苦い経験が書かれている。
あるとき海沿いの集落を訪れたところ
数百人が足の麻痺や目が見えなくなるなど原因不明の症状に苦しんでいた。
“もし感染症だったら
一刻も早く手を打たないと
都市部に広がり大変な事になる”と焦る市長。
ハンスさんは市長に集落に通じる道路を封鎖すべきか相談され
とっさに賛同した。
すると翌日
市場に向かうためボートでの移動を余儀なくされた住民たち20人が
波にさらわれ亡くなったのである。
その後の調査で
症状は感染症ではなく食中毒によるものだったことが分かり
ハンスさんは大きな後悔を抱えることになった。
しばらく私はショックで茫然としていた
恐れに支配され時間に追われて最悪のケースが頭に浮かぶと
人は愚かな判断をしてしまう
一刻も早く手を打たなければという焦りから
冷静に分析する力が失われてしまうのだ
新型コロナウィルスに関するさまざまな数字が飛び交う今
不安に苛まれデマに振り回される人も少なくない。
アンナさんは
今こそこうした本能を自覚し
データを冷静に捉えることが大切だという。
(著者 アンナ・ロスリングさん)
「例えばコロナの感染者数の多さを見ると怖くなります。
でもさまざまな関連情報を見てみないと
その数を多いとみるべきか少ないとみるべきか判断できません。
パンデミックに直面すると私たちは恐怖にとらわれてしまい
極端すぎるものの見方をしてしまいがちです。
事実を正しく見られるようにすることで
人々が現実的にスピーディーに対応できるようにしているんです。」
ネット上には
“この本を読んで見方が変わった”という声が数多くあがっている。
“コロナの重症者数にしても読み返すと色々と思う節ばかり”
“ファクトフルネスには
グラフを正しく見ることや自分で調べる大切さが書いてあった”
“コロナも正しく恐れるべし”
アンナさんたちは今
世界に関する様々なデータを正しく把握する手助けにしてほしいと
独自のサイトで発信を続けている。
新型コロナウィルスについても現状をどう捉えればいいのか
夫のオーラさんとともにSNSで分かりやすく伝えている。
(夫で著者 オーラ・ロスリングさん)
「“今週亡くなった人”の数を
“前の週に亡くなった人”の数で割るといいんです。
それが1以上ならウィルスの勝ち(感染が広がっている)
1より少なければ私たちの勝ちです(感染が抑えられている)」
次々と立ちはだかるグローバルな問題に向き合うために
アンナさんは
ファクトに基づいて世界を見る力を社会全体で育てていく必要があると
考えている。
(著者 アンナ・ロスリングさん)
「時間はかかると思いますが
教育システムを変えなければなりません。
授業で教えるデータや統計の使い方をアップグレードしなければならないんです。
同時に
人間の脳は情報を扱うのが苦手だと学ぶ必要があります。
謙虚になり
好奇心を持つことが大事なのです。」