3月7日 キャッチ!
韓国経済の低迷によって大きな影響を受けているのが韓国の若者たちである。
若者の失業率は去年9,8%となっていて
2000年以降で最悪の数字となっている。
2月下旬に行われた国立ソウル大学の卒業式。
韓国中からエリートが集まるこの大学でもいまだ就職先が決まらない卒業生が数多くいる。
(卒業生)
「まだ何も決まていません。
卒業することに意味があります。」
「就職が決まっていないので頑張って探さないと。」
大卒の2人に1人しか就職できないとされる韓国。
公務員試験や様々な資格取得のための塾が並ぶソウルのノリャンジン地区には
就職を目指す若者が集まってくる。
別名「就職浪人街」と呼ばれている。
この町で多く見かけるのが
「コシュウォン(考試院)」と言われる受験生のための簡易宿泊施設である。
2畳ほどの広さにベッドと机のみ。
イ・スンヨプさん(29)は2年前からここで暮らしている。
地方の大学を卒業し
5年にわたって公務員試験を受け続けているがいまだ合格していない。
景気が低迷し企業が採用を控えるなか
公務員の人気はうなぎのぼりで競争率は100倍にもなると言われている。
(イ・スンヨプさん)
「今年もだめだったら親に申し訳ないです。
友達やいとこにも合わせる顔がありません。
あまりにも長い間勉強しているので会いたくないのです。」
大学卒業後 親からの仕送りは一切受け取っていないイさん。
コシュウォンの部屋代は掃除などを手伝う代わりに免除してもらっている。
さらに食事付きのアルバイトを掛け持ちし
生活費を切り詰めながら暮らしている。
アルバイトを終え部屋に戻るのは夜9時ごろ。
空いた時間は全て勉強に充てている。
(イ・スンヨプさん)
「無味乾燥に働いて勉強して寝る。
その繰り返しです。
これ以上年をとって行くところがなくなるのが本当に怖いです。
今が人生を決めるときですが将来を考えると恐ろしいです。」
若者たちが集うインターネットのサイトで頻繁に使われるようになったのが
「ヘル朝鮮=地獄の朝鮮」という言葉である。
身分制度があった朝鮮の時代を思わせる
韓国の過酷な格差社会を象徴している。
これ以上こんな国に住みたくない
移民がうらやましい
韓国での就職をあきらめ
海外に活路を求める若者も増えている。
オーストラリアやニュージーランドへの移住やワーキングホリデイの相談にのる会社。
ここを訪れたパク・サラさんは海外での就職先を探している。
「最終目的は移住を考えています。」
パク・サラさんは地方の大学でアニメーションを学んだが
正社員の仕事は見つからず非正規雇用の仕事を続けてきた。
そんなときに起きた政治スキャンダルで韓国社会に深い失望を抱いたという。
(パク・サラさん)
「社会的地位や経済的な豊かさで待遇が違う不平等を強く感じます。
それで海外への移住を考えるようになりました。」
「韓国が嫌いで」と題された本は若者たちの人気を呼びベストセラーとなっている。
主人公は名門大学を出た20代半ばの女性。
コネも資格もない自分には韓国では生きられないと
オーストラリアへ渡ることを決意する。
作者のチャン・ガンミョンさんは多くの若者たちへ取材を重ねて小説を書いたと話す。
(「韓国が嫌いで」著者 チャン・ガンミョンさん)
「財閥の子どもが違法な特典をもらうとか
大学にコネで入るという事例を見て
韓国での暮らしがつらく
これからも良くならないという挫折感が広がっていると思いました。」
韓国社会のひずみを自らの手で変えようと
政治に参加する若者たちもいる。
3月5日に開かれた「われわれの未来党」立党大会。
5,500人いる党員の平均年齢は27歳。
韓国で最も若い政党である。
(「われわれの未来党」 ウ・インチョル代表)
「準備はできました。
われわれの未来党と共に政権交代・時代交代・未来交代を宣言しましょう!
われわれはやるぞ!」
大会の司会を務めたカン・ナウルさん(28)。
大学を卒業後 社会福祉士として貧しい人たちの支援を行ってきた。
仕事を通じ社会の不平等を目の当たりにしてきたカンさんが政治の道を歩むきっかけとなったのが
パク・クネ大統領の事件だった。
(「われわれの未来党」 カン・ナウルさん)
「既存の政治勢力は権力争いばかりに夢中です。
国民のための政治は誰がするのかと今回の事件で思いました。」
カンさんは週に1度ネットの生放送番組で
同世代の若者と共に党の政策を考える活動を行っている。
「より良い社会のため耐えている皆さんのため放送します。」
(「われわれの未来党」 カン・ナウルさん)
「事件がきっかけで世論が盛り上がったのはかえって良かったと思います。
普通の人たちが社会を変えていく時代だと思います。」
韓国では正社員の非正規雇用の賃金格差が日本以上に大きく倍以上になっている。
特に15~24歳までの若い世代を見ると
非正規雇用の割合が急速に高まっていて半数近くになっている。
財閥企業への就職には
親が資産家であったりコネがあったりすることなどが有利に働くケースが多いため
生まれながらにして自分の人生や一生が決まってしまうという悲観論が広がっている。
親の資産や収入により
「金のスプーン 銀のスプーン 土・泥のスプーン」といった階級を現す言葉も生まれている。
こうしたなかで
パク・クネ大統領の友人であるチェ・スンシルの娘が
名門大学に裏口入学をしたという容疑が持ち上がって
格差に苦しむ若者に火をつけた。
「未来党」に参加している若者の多くが非正規の労働者であったり学生たちである。
広がる格差に不満を感じながらも
これまで政治に関わってこなかった人たちがほとんどである。
「われわれの未来党」の政策に掲げているのは格差の是正である。
・最低賃金を現在の1,5倍に引き上げること
・大学の学費を無料にすること
・育児休業を3年に延長すること
彼らは今年の大統領選挙にも候補者を立てたいとしている。
こうした若者の力が
「ヘル朝鮮」と呼ばれるようになった韓国をこれから幸せな国にしていけるかどうか関心がある。