secret boots

ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

トリプルX

2008-06-22 23:10:04 | 映画(た)
評価点:77点/2002年/アメリカ

次世代アクションスターの誕生だ!(……のはずだった。)

アメリカNSAは、エージェントを送り込み、化学兵器を開発しているアナーキー99という組織の情報を入手しようと試みた。
しかしエージェントは任務に失敗。
次なるエージェントととしてザンダーが選出された。
ザンダー(ヴィン・ディーゼル)は、派手なスタントを売りにしている犯罪者。
自分の犯罪行為をビデオにとりマニアに売りさばく。
いきなりエージェントとして働くことを強要されたザンダーは、アナーキー99に潜入。任務であった情報を手に入れる。
しかし彼には更なる危険な任務が用意されていた。

▼以下はネタバレあり▼

新感覚スパイ映画。次世代アクションムービー。とにかくアクションがすごい。
スノーボード、バイクの暴走、カーチェイス、スカイダイビング、銃撃戦、そして爆発。
すべての要素を組み込んだ大型アクション映画。
アクション好きなあなたが、考えられるすべてのアクションを魅せてくれることは確実。
これで満足できなければ、十本くらいの映画を観ないといけないだろう。
それほどまでにすさまじい。
期待以上のヴィン・ディーゼルの暴れぶりは、映画館で見ないといけない(もう無理だけど)。
古都プラハの美しさとアクションの非日常的出来事が対照的に描かれていて面白さもアップだ。

大きな見せ場はおそらく雪崩のシーンだろう。
けれどその前に幾度となく見せ場を持たせているため物語の面白さが倍増している。
これはニコラス・ケイジのアクション三部作(「ザ・ロック」「コン・エアー」「フェイス/オフ」)にも共通することで、
一番の見せ場の前にワンクッション置くことが、成功の秘訣だと僕はみた!

しかしそれだけではないのが、この映画のすごいところ。
ストーリーのスパイ部分もきちんと作られている。
007なみのアイテムや無理難題を吹っかけるボス。
映画好きならニヤリと微笑むこと間違いなしの展開。

適度に笑いの要素を含んでいるのがいい。
「ビバリーヒルズ・コップ」に出てくる刑事を髣髴とさせる武器マニア(ちなみに彼がザンダーに出会ったとき、「現場に出てどれくらい?」と聞いた。
その後ザンダーが「二日目」と答えると彼は「ヒドいな」と返す。
その理由はなんと「俺も早く現場に出たい」という彼の現場への憧れであることがわかり笑える。)、
タバコは体に毒だ、などとキャラに似合わぬ台詞を言うと思えば、
それは終盤への伏線であったり、ありったけの火器で武装しているわりには役立たずな車やありえない双眼鏡が出てきたりと、世界観を壊さない程度に笑えるからうまい。

気になった点も確かにある。
見せ場を作ろうという魂胆ばればれの展開、ちょっとボンドガールに対抗しきれていないヒロインや、音響が大きいためガラスが割れるシーンでは耳が痛くなる
(その大きさがまたいいんだけど)など。
おそらくストーリー部分は細かく見れば、相当荒いつくりだろう(アウトローがいつの間にか「007」になっているし)。

冒頭の音楽の使い方も気になった。
スパイらしき人物が人目を忍んでなにやら工作活動をして、敵に見つかったところがライブハウスという場面。
工作活動をしているシーンもガンガンに音が鳴り響いていて違和感がある。
どうせならドアを開けた瞬間にヴォリュームを上げてほしかった。
静寂 → 騒音というギャップがほしい。

でもそんなことどうでもいい。
ただただ現実を忘れさせてくれるアクションに陶酔できる。
常々思っているが、いい映画は、観客に荒を忘れさせるものだ。
どれだけナンセンスでもそれが観ている時にバレなければ、成功しているといえる。

ちなみにヒロインのアーシア・アルジェントは、撮影に入る前に妊娠していたのだそう。
それはすごいけど、もっと美人を連れてきてほしかった。
彼女の立場をもっとはやく明かしてほしかったのも確かだ。

ヴィン・ディーゼル、彼は次世代を担うアクション・スターになってほしいと切に願う。
頭が悪いような役柄だが、実はこの映画の総指揮も手がけている。
脚本も書ける(あくまで書けるだけであって出来は知らないが)らしい。
頼もしい限りである。

観て損はない映画。
たとえるなら、たっぷりのいくら丼の隣に、てっちりが用意されさらにイタリアンのフルコースをつけてもらった感じだ。(たとえが陳腐でごめんなさい)
間違いなく今年(2002年)三本の指には入る。
次回作が楽しみだ。

敵の協力者がロシアからの研究者という設定がアメリカちっくだけれど、あまり気にならないので許そう…
そういえば、アメリカが核兵器技術を漏洩するような映画はない。
あれだけ核を持っていれば実際はありそうなものだけど。

(2002/11/16執筆)

ご存じの通り、僕の予想とは反して、ヴィン・ディーゼルは今ではもうすっかり「誰それ?」扱いの役者になってしまった。
ゴシップネタは読まないので全然わからないけれど、彼はどうなったのでしょう。
う~ん、時代は彼のようなヒーローは要求していなかったらしい。

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