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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

バイオハザード2 アポカリプス(V)

2009-07-06 23:42:46 | 映画(は)
評価点:24点/2004年/アメリカ

監督:アレクサンダー・ウィット

この映画には、本当に三分に一度驚きがある。

「1」の直後、ラクーンシティには謎の病原菌により死体がよみがえり、人々を襲うという奇病が蔓延し、アンブレラ社が街を隔離した。
コンピューターエンジニアの男は、娘が街の残されたままだということを知ると、防犯システムをハックし、娘の居所を突き止める。
しかし、すでに閉鎖状態になった街に入ることができず、内部の生存者である警官のジル・バレンタイン(シエンナ・ギロリー)や元特殊工作員のアリス(ミラ・ジョヴォビッチ)に救出を依頼する。
逃げ道を閉ざされたアリス達は、脱出を交換条件に依頼を受けるが…。

人気ゲームの映画化第二弾。
ミラ・ジョヴォビッチのすばらしい活躍により難を逃れた一作目からの完全な続編。
前作のノリを継承するので、前作を知らない人は観ないほうがいい。
前作を知らないファンでも……というノリの映画ではない。

また、これをいきなり観て、なんじゃこれ、ゾンビ映画じゃないじゃんと突っ込むかもしれない。
けれど、それも前作を観ていないあなたが悪いのだ。
とにかく、ミラが好きで好きでたまらない人にのみ、おすすめする、超マニアック映画であることは知っていてほしい。
 
▼以下はネタバレあり▼

先にも書いたように、この映画は「マトリックス」や「ロード・オブ・ザ・リング」なみに自律性のない映画である。
よって、前作を知らない人には全く楽しめない映画である。
その時点で僕の評価は思いっきり下がってしまうのだが、前作を知っている人ならそれなりに免疫があると思われるので、何とか楽しむ余地はある。

「バイオハザード」は間違いなくゾンビをモチーフにしたゲームだが、この映画シリーズのモチーフにゾンビはない。
この映画のモチーフ(作品製作の動機)はミラ・ジョヴォビッチその人である。
言い方を換えよう。
ミラジョヴォビッチによる、ミラ・ジョヴォビッチのための女スティーブン・セガール映画なのである。
よって、この映画の魅力は徹頭徹尾、首尾一貫して、彼女の格闘シーンをいかにかっこよく撮られているのかという一点のみである。
そのノリについてこれなければ、全く楽しめない映画になっている。
もちろん、それがかっこいいかどうかは、これまた観る側の好意的かつ主観的な判断が必要になるわけだが。

観客は完全に置き去りにされている。

私のペースで進めるから。
あんたたち、ついてきたいならついてきなよ。
という自己中心的、自画自賛な映画になっている。
だから、この映画は三分に一度驚きが隠されているのだ。

例えば冒頭からいきなりおかしい。
一企業のアンブレラ社が軍隊を用意し、一般住民をいきなり閉じこめはじめる。
そこに国の軍隊はなく、警官もアンブレラに反抗さえできない。
そしてその警官であるジル。
彼女の登場シーンはまさにアクション映画のヒーローの登場シーンのそれと同じだ。
警察署内で銃をぶっぱなし、「こいつらは頭を狙えばいいのよ」とゾンビ退治の専門家のような台詞をのたまふ。
しかも、びっくりするくらい棒読みの英語。

なぜ彼女がその対処方法を知っているか、という問いは一切受け付けない。
「ただそうなのだ」といういぶし銀な設定しか観客には提供されない。
彼女の設定は、ただ名前と、警察にしては恥ずかしい格好をしている程度しか分からない。
だが、彼女の見せ場はこれまで。さようなら。

真打ちのアリス姉さんがバイクで登場すると、映画は完全にアクション映画になる。
スローモーションで登場すれば、ばりばりに武装し、クリチャーを殺しまくる。
そこにまったく戸惑いや迷いはなく、恐怖すらない。
なぜそこまで戦えるのか、「2」には情報として提示されないため、違和感の塊のような存在になってしまっている。
感情移入できる要素が全くないのだ。
しかも、話す言葉も冷たいものばかりで、基本的に無口。
それまでカッコよかったはずのジルは黙り込んで弱々しくなる。
彼女の登場で映画としてまったく違うものになってしまうのだ。

挙げ句、高架を飛び越え、ワイヤーアクションにふける。
やはりそこでもなぜそれが可能なのか、「マトリックス」世界に迷い込んでしまったのか、よくわからない。

一方、街の反対側ではネメシスなる人造人間が起動する。
これも全くの説明不足。
アンブレラ社は何を狙っているのか、全く意図がつかめない。
不慮の事故だったのか、計画的に街を破壊したのか、なぜそこまでやる必要があるのか(べつに街で実戦する必要はない情報が漏れる可能性があるのだから、リスクが大きすぎる)だれも説明しないし、そのまま強引に話が進んでいく。

そして、娘の救出を計画する科学者と、企業、生き残ったアリス達という三者が街を舞台にドラマを繰り広げるのだ。
だが、その誰にも感情移入するどころか、事態の把握すらままならないため、観客(おもに僕)の見どころは、ただ無理なシーンについていかに面白く突っ込むか、という程度だ。

そして、ネメシスとアリスの邂逅。
なぜか格闘映画のようにタイマンで闘うことになる。
こうなるとほとんどチャイニーズカンフー映画だ。
ネメシスはどう見ても怖いというよりも、着せられた役者が可哀想なくらいカッコ悪い容貌。
まるで仮面ライダーに出てくる三流の敵のような、着ぐるみバレバレの質感しかない。

戦いは当然アリスの勝利となるわけだが、そのあとの蛇足なドラマも頂けない。
それまでの前置きが劇中(前作にはある)にないため、感動や哀しみ、同情といった類の感想を持てない。
実は生き別れた恋人がネメシスの実験体にされていたなんていうことを、一番の目玉にされたとしても、感動はできない。
だって、「2」で一度も生きた形で出てこないんだもん。

そしてさらに蛇足なのが、「3」も作れますよ的なラスト。
アリスだけが生き残っていくという設定(今回は他の仲間も生きてますが)は、「エイリアン」のリプリーのようだ。
そもそも、遺伝子操作で肉体改造されたアリスは、「エイリアン3」から「エイリアン4」になった時のリプリーとそっくりだ。
こうなるともうミラの発想の乏しさとあこがれの対象がはっきりしてくる。

「エイリアン4」を観た「エイリアン」シリーズのファンのミラ。
「ああ、私もあんな映画撮ってみたいわ!」

スティーブン・セガールを観たミラ。
「ああ、私もあんな風にバンバン敵を倒す役をやりたいわ!」

なぜか「バイオ」のオファーが来てしまったミラ。
「是非私をかっこよく撮ってね! 絶対よ! 私ゾンビ殺しまくりたいわ!」

なんとも悲しい映画なのだろう。
全然面白くない。
そして、だが、ある意味面白い。

僕としては唯一の見どころは、ラストでミラが脱いでいるところだ。
「やっぱり胸ないな」
予想が当たって嬉しかった。

三分に一度、観客を驚かせる。
本当にこんな映画あったんだ。

(2006/7/28執筆)

「3」は怖くて手を出していない。
いつも見ようか迷ってしまうのだが、どうしてもレンタルする気にはなれない。
けれど、やっぱり見ないと仕方がないですね、ここまでの傑作を目の当たりにすることは、まあ、少ないでしょうから。

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