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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

ブロークンシティ(V)

2023-09-05 18:44:29 | 映画(は)
評価点:55点/2013年/アメリカ/109分

監督:アレン・ヒューズ

いかにも中途半端か。

刑事のビリー(マーク・ウォールバーグ)は、暴行容疑の市民を一方的に撃ち殺したとして、追及された。
嫌疑不十分で不起訴になったが、当時の署長から辞職するように促される。
7年後、私立探偵になったビリーは、そのときの署長で現市長のホステラー(ラッセル・クロウ)に呼び出される。
妻が不倫している可能性があるので、調査してほしい、とのことだった。
市長選が間近に迫っていたが、高額の報酬に目がくらんだビリーは、二つ返事で受け入れる。
妻が訪れたのは、市長選の対抗馬とされていた男ヴァリアントの、参謀のアドリュース(カイル・チャンドラー)だった。

手頃な作品を観ようと思って、何も考えずにアマゾンプライムの再生ボタンを押した。
マーク・ウォールバーグとラッセル・クロウが出ている。

話の流れはわかりやすく、それほど驚かされる展開でもない。
もう少しドラムとしてのひねりがほしかったところ。

▼以下はネタバレあり▼

何しろ人間ドラマの部分が弱すぎて、サスペンスとしても人間ドラマとしても弱すぎた。
サスペンスとしては、早い段階からラッセル・クロウが不穏すぎて疑う余地もないほどの黒幕で、どんな悪事を働いていても驚かない展開だった。
そして土地の再開発問題がずっと選挙の争点として流されていたので、そこに落とし穴があることも読めただろう。
だから、不倫相手を探せという依頼も、すべてが観客にとっては疑わしく、サスペンスとしては弱かった。

対抗馬や他のミスリードになるような真相もなさそうだったので、むしろ話は一直線といった様相だ。
そうなると、気になるのは7年前の射殺事件の真相となる。
酒で酔っていたビリーは、本当に無罪だったのか、間違えて恋人の妹を襲ったとされる男を、射殺してしまったのか。

観客が同化しているビリーが、悪人なのか善人なのか。
悪人であれば、ビリーは窮地に立たされることになり、善人なら恋人の妹を襲った犯人を殺した、という英雄となる。
この真相だけが物語のキーとなっていた。
結果的には、実は無実の人間を殺していたことに気づかされる。
だから、恋人は彼の元を去っていくことになる。
彼は偽りの英雄の人生を生きていたのだ。

途中で辞めていた酒を、再びあおり始めて、彼は「刑事」に戻る。
正義感に目覚めた彼の行動動機は、私立探偵としてではなく、正義を貫く刑事へと変わっていく。
だが、同時に自分が犯してしまった罪をいかに償うのか、という自分自身へも正義の目で見つめ直すことになる。

実は悪人だった、という真相は、観客としてはカタルシスが小さくなってしまい、不穏な気持ちをもったまま映画館を後にすることになる。
この映画の満足度が低いのはそのためだ。
もちろん、バッドエンディングがだめだというのではない。
それならそれで、もっと彼の内面をえぐる何かがほしかった。
小さなことで激高する彼の姿は、確かに幼い。
けれども、その行動と、ホステラーを追い詰めていく様子がいかにもちぐはぐだった。

観客は何を軸に映画を観れば良いのかわからなくなっていく。
もう少しビリーに感情移入しやすい独白を入れるなり、気づきや変化を入れるなりしたほうがよかった。
ああ、あのとき俺は復讐のあまり観察眼を失っていたんだ、というような気づきだ。
だから、物語は結果的に、なんだか中途半端な感じになってしまった。

恋人のアバズレ具合も消化不良で、だから妹が襲われたんちゃうん?というような人種差別に発展しかねない描写も気になる。
別につよい正義感を振りかざすようなヒーローが登場しなくても、もっと素朴な善悪を峻別する感覚を、しっかり描けていればよかったのに。
おもしろい視点や要素がたくさんあっただけに、残念な作品になってしまった。

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