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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド

2025-03-01 20:55:49 | 映画(か)
評価点:47点/2025年/アメリカ/118分

監督:ジュリアス・オナー

主語が違うんだ。

アベンジャーズのスティーブ・ロジャーから盾を引き継いだのは、ファルコンとして活躍していたサム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)だった。
彼は、インド洋沖で見つかった完璧な物質アダマンチウムが、秘密裏に盗み出され、取引される情報を手に入れた。
そこで、大統領のロス(ハリソン・フォード)から頼まれ、取引を未然に防いだ。
その功労者として、アダマンチウムを巡る国際条約の調印の場に呼ばれたサムは、かつての戦友だったイザイア(カール・ランブリー)をその場に呼ぶことを条件に応じた。
サムは、大統領と確執があったが、ロス大統領は娘との和解のために歩み寄りたいと考えていた。
しかし、大統領官邸で突然イザイアが心神喪失状態に陥り、テロを起こしてしまう。
真相を探るため、サムは大統領の制止を振り切り、単独で捜査を始める。

新しいアベンジャーシリーズへと着実に進むマーベルの、新生キャプテン・アメリカの劇場公開作品。
ディスニープラスなど、連続ドラマでも話を展開しており、私は完全に置いてけぼりになっている。
あまりついていく気もないのだが、時間が少しあったので消去法的選択で見ることにした。

細かい設定を覚えていない、知らないので、シリーズをこよなく愛する人からすれば、わかっていない、となるのは辛抱いただこう。
それでもおもしろい、熱くさせるのがマーベルシリーズだと信じているので。

▼以下はネタバレあり▼

劇場でヒット作を作らなくても、サブスクで契約してもらえばそれでいい、という考え方もある。
よって、この作品がひどくつまらないものでも、興行的には問題ないのかもしれない。
とにかく、「シビル・ウォー」で感じた熱さやうまさはまったくない。
はっきり言えば、おもしろくない。
知的でもないし、説得力もない。

主人公のサム・ウィルソンや、その役者アンソニー・マッキーが悪いのではない。
この作品をつまらなくしているその原因はわからないが、つまらないのは確かだ。

この作品のヴィランとなるのは、レッドハルクとなる大統領のロスだ。
彼は自分の心臓病を克服するために、サミュエル・スターンズという学者に特効薬を開発させる。
それでなんとか生き延びることができた。
しかし、スターンズは幽閉されたままとなり、不満を募らせていた。
復讐を考えたスターンズは、ロス大統領のその薬に怒りを増幅させることで怪物に変身するように仕込んでいた。
怒りが爆発したロス大統領は、物語終盤でレッドハルクとなってワシントンDCで大暴れしてしまう。

いわばこの作品の真の主人公ともいえるのが、大統領である。
新しいキャプテン・アメリカと対峙するように、深く彼の内面が描かれる。
怒りをあらわにして怪物になる様子は、まさしく現実のアメリカ大統領のそれであり、わかりやすい隠喩になっている。
ハリウッドがどのようにトランプ大統領に対して考えているかがわかるわけだが、その姿をみたアメリカ国民たちは感情移入できるのだろうか。

怒っているのは、アメリカ大統領なのか。
それともその姿をみて投票したいと思ったアメリカ国民なのか。
私は、大統領にすべての責任を負わせたこの話の展開が、まったく理解できなかったし、説得力を感じなかった。
この映画では、大統領だけが怒っていて、国民は置いてけぼりにされている。
大きな日米同盟の話を広げているが、そこに国民が全くいない。
ただ大きな政治の話をしているだけで、民衆の声は全く聞こえてこない。
あたかも選挙活動をテレビ越しに見ているかのような、画面という冷たい壁がそこには歴然としてあった。

ロス大統領が怒れば怒るほど、「おまえの個人的な怒りよりも、崩壊している国民の怒りを描けよ」と思って冷めてしまうのだ。

トランプ大統領がどうとか私にはわからないが、彼に託すしかないアメリカ国民の悲哀は置き去りにされている。
だから、怒っている主語が違うのだ。

こんな物語に、娘と和解するために条約を急ごうとする怒りにまみれた大統領の物語に、一体どういう人が感情移入するのだろう。
キャプテン・アメリカがサムで適任か、というような問題は映画としては些細なことだ。
ファンにはとりわけ重要かもしれないが。

映画としての完成度はだから非常に低い。
いかにもアメリカ国民が好きそうな、戦闘機による空中戦を見せたり、日本との友好の象徴である桜並木で決戦を繰り広げたり。
なるほど、歓心を買うことに必死なのは理解できる。
しかし、それとて枝葉末節に過ぎない。

アベンジャーズの柱となるヒーローがいない現状では、目玉になる集約できるキャラクターが不可欠だ。
しばらくまだまだ模索が続くのか、「X-MEN」の登場が待たれる。

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