
ぼくはビートルズが大好きだし、「サージェント・ペパー」も大好きです。
このアルバム、ビートルズの最高傑作、というより、ポピュラー音楽史上でも有数の名作と言われていますね。
すでにいろんな方によって批評しつくされていると思うので、ぼくは、「サージェント・ペパーのあれこれ」について書いてみようと思います。といっても、よく知られた話ばかりだと思いますけれど。
★このアルバム、「ペパー軍曹のバンドのショウ」というコンセプトを持っています。これは、ポピュラー音楽史上、初めてのトータル・アルバム(ひとつの主題のもとに統一された内容を持つアルバム)だと言われています。
★このアルバムは、1967年度のグラミー賞で、「最優秀アルバム」「最優秀コンテンポラリー・アルバム」「最優秀エンジニア」「最優秀ジャケット・デザイン」の四つの賞を受賞しました。
★このアルバムを聴いたレナード・バーンスタイン(NYフィル常任指揮者)の評。
「ビートルズのサウンドはバッハのフーガにも匹敵する美しさを持っている。彼らは今世紀最高の作曲家だろう。いや、今世紀ならずとも、シューベルトやヘンデルなどより素晴らしい」
・・・最大級の賛辞ですね。
★サイケデリックなジャケットはポールのアイデアで、以前のビートルズを葬って新しく出発する、という意味が込められているそうです。
ジャケットに登場しているのは、ビートルズのメンバーそれぞれが好きな人物ばかりです。それら著名人の肖像権を得るため、EMIは問題が発生した時の用意として1000万ドルのロイヤリティを確保していましたが、今のところトラブルは発生していないようですね。
おもな登場人物は
◎メイ・ウエスト(女優)
◎アルバート・アインシュタイン(物理学者)
◎ボブ・ディラン(ミュージシャン)
◎マレーネ・ディートリッヒ(女優)
◎ルイス・キャロル(作家)
◎カール・ユング(心理学者)
◎白雪姫
◎エドガー・アラン・ポー(作家)
◎シャーリー・テンプル(女優)
◎カール・マルクス(社会学者)
◎ソニー・リストン(ボクサー)
◎トーマス・E・ローレンス(軍人=アラビアのロレンス)
◎H・G・ウェルズ(作家)
◎アレイスター・クロウリー(20世紀の有名な黒魔術師)
◎スチュアート・サトクリフ(元ビートルズのメンバー)
◎マーロン・ブランド(俳優)
◎オスカー・ワイルド(作家)
◎ジョニー・ワイズミュラー(水泳選手・俳優)
◎ジョージ・バーナード・ショウ(作家)
といったところで、総勢では62人を数えます。日本代表としては、「福助」が出場していますね。
★アルバムの発表とほぼ同時期に、ポールの「LSD体験発言」があったりしたので、アルバム自体も、「ドラッグとの深い関わり」を指摘されました。
♪ジャケットにマリファナが描かれている。
♪「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」の歌詞に「…ハイになる」という部分があるためドラッグ・ソングだと言われた。また、タイトルの「ちょっとした助け」が文字通り、「ドラッグに助けられる」という意味に解釈された。
♪「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」という曲のタイトルの頭文字が「LSD」となるほか、サイケデリックな歌詞の内容もドラッグによる幻想を連想させるため、ドラッグ・ソングだと言われた。
♪歌詞の内容から「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」をドラッグ・ソングと解釈して放送禁止とした放送局もあった。
♪同じく歌詞の内容から「フィクシング・ア・ホール」もドラッグ・ソングだと解釈された。
・・・以上の「ドラッグとの関わり」は、今ではほとんどがこじつけだったとされています。「ルーシー・イン・ザ・スカイ~」などは、ただ単にジョンの息子(ジュリアン・レノン)が描いた絵がヒントになっているだけだそうだし、「フィクシング~」はポールが別荘の屋根を修繕したことを元に作った歌なんだそうですね。だいたい、イマジネーション豊かなビートルズの面々が、ドラッグによる幻想からしか曲を作ることができないなんて、とても思えないですよね。
★ポールはLSD発言直後にテレビ出演しています。
「あなたは若者のアイドルなのだから、彼らに与える影響を考えるとLSD発言は公表しないほうが良かったのではないですか?」
「ぼくは真実を言ったまでだ。もし誰かかマネすることを心配するなら、あんたたちマスコミこそ報道を控えるべきだったんじゃないかい?」
・・・ある意味もっともだと思うなぁ。
★インド音楽の影響を深く受けている8曲目の「ウィズイン・ユー、ウィズアウト・ユー」には、ビートルズからはジョージしか参加していません。
★9曲目の「ホエン・アイム・シックスティーフォー」は、デビュー間もない頃に、ポールが父のジム・マッカートニーのために作った曲だそうです。
★13曲目の「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」終了後、約8秒間、犬にしか聴こえない2万ヘルツの信号が録音されています。「まだ動物がビートルズのファンになったという話は聞いてないから、犬にしか聴こえない音を入れよう(ポール)」という理由からだそうです。そしてその後には、ビートルズによる意味不明の挨拶が約22秒間録音されています。
★「サージェント・ペパー」の発売披露パーティで、リンダ・イーストマンという女性がカメラマンとして出席していました。リンダとポールは、そのパーティの数日前に初めて出会っており、この日「再会」したわけです。ご存知の通り、彼女はのちにポールと結婚、リンダ・マッカートニーとなりました。
それにしても、実に創造的で素晴らしいアルバムですね。今聴いても、しみじみそう思います。
◆サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド/Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band
■歌・演奏
ビートルズ/Beatles
■リリース
イギリス1967年6月1日、アメリカ1967年6月2日、日本1967年7月5日、
■レコーディング
1966年12月6日~1967年4月1日
■プロデューサー
ジョージ・マーティン/George Martin
■収録曲
A① サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド/Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band
② ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ/With a Little Help from My Friends
③ ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ/Lucy in the Sky with Diamonds
④ ゲッティング・ベター/Getting Better
⑤ フィクシング・ア・ホール/Fixing a Hole
⑥ シーズ・リーヴィング・ホーム/She's Leaving Home
⑦ ビーイング・フォー・ザ・ベネフィット・オブ・ミスター・カイト/Being for the Benefit of Mr. Kite!
B⑧ ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー/Within You Without You
⑨ ホエン・アイム・シックスティーフォー/When I'm Sixty-Four
⑩ ラヴリー・リタ/Lovely Rita
⑪ グッド・モーニング・グッド・モーニング/Good Morning Good Morning
⑫ サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(リプライズ)/Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band(Reprise)
⑬ ア・デイ・イン・ザ・ライフ/A Day in the Life
※composed by Lennon & McCartney①~⑦、⑨~⑬ George Harrison⑧
■録音メンバー
【Beatles】
ポール・マッカートニー/ (lead-vocals, harmony-vocals, background-vocals, bass, electric-guitars, acoustic-piano, electric-piano, organ)
ジョン・レノン/John Lennon (lead-vocals, harmony-vocals, background-vocals, acoustic-guitars, electric-guitars, organ, percussions, final piano E chord)
ジョージ・ハリスン/ (lead-vocals⑧, harmony-vocals, background-vocals, acoustic-guitars, electric-guitars, sitar, tambura, harmonica, percussions)
リンゴ・スター/Ringo Starr (drums, percussions, harmonica, lead-vocals②, final piano E chord)
【Additional Musicians】
ニール・アスピノール/Neil Aspinall (tambura, harmonica)
マルコム・エヴァンス/Malcolm Evans (harmonica, alarm-clock, final piano E chord)
ジョージ・マーティン/George Martin (harpsichord⑤, harmonium⑦, organ②⑦, glockenspiel⑦, piano④⑩, final harmonium chord)
サウンド・インコーポレイテッド/Sounds Incorporated (the saxophone sextet⑥)
ニール・サンダース/Neil Sanders (french-horn①)
ジェームス・W. バック/James W. Buck (french-horn①)
ジョン・バーデン/John Burden (french-horn①)
トニー・ランドール/Tony Randall (french-horn①)
■チャート最高位
1967年週間チャート アメリカ(ビルボード)1位(7/1~10/7 15週連続)、イギリス(メロディ・メーカー)1位(6/3~10/28 22週連続)
1967年年間チャート アメリカ(ビルボード)10位、イギリス1位
1968年年間チャート アメリカ(ビルボード)6位
1960年代ディケイドチャート アメリカ(ビリボード)1位
1987年週間チャート イギリス3位、日本(オリコン)3位
2009年週間チャート イギリス5位、日本(オリコン)20位
2017年週間チャート アメリカ(ビルボード)3位、イギリス1位、日本(オリコン)5位
こんにちは。
コメント、失礼致します。
MINAGI様のこの作品にまつわるお話を大変興味深く拝見致しました。
僕は、このアルバムを18年位前に友人にレコードを借り、テープに録音して何度も聴いてみましたが、はじめは、良いアルバムではありますが最高傑作との評価はよく分かりませんでした。
今でも、僕は アルバム単位では『RUBBER SOUL(ラバー・ソウル)』(‘65年)、『REVOLVER(リボルバー)』(‘66年)、『THE BEATLES(ザ・ビートルズ)』(‘68年)、そして『ABBEY ROAD(アビイ・ロード)』(‘69年)が好きなのですが、コンセプト・アルバムのトータル性は素晴らしく、この作品の以前・以後で音楽界全体を分けられる程の影響力の大きさは今でも十分に感じられます。
じっくり時間を掛けられた一曲 一曲を丁寧にまとめあげた作品ですね。
また遊びに来させて頂きます。
ではまた。
>はじめは、良いアルバム~
同感です。ある程度こちら(聴き手)が成熟しないと見えてこない部分というのがあると思うのですよ。ぼくも、収録曲の好みだけでいうと「マジカル・ミステリー・ツアー」や「アビイ・ロード」が好きなのですが、別な観点から評価すると、やはりこの「ペパー」は他の追随を許さない素晴らしい作品ということが言える、と思うんです。
早い話が、「ぼくはペパーが好き」ってことなんですけどね。