
奇妙奇天烈な顔芸(って言っていいのかな)と、おバカなギャグで売り出したジム・キャリー。
とにかく、バカさ加減のケタが違います。とくに「エースにおまかせ」や「マスク」のキチガイじみた芸風では大笑いさせてくれました。
しかし「ライアー、ライアー」あたりからただのコメディアンではないことを示してくれています。本人も、「ライアー~」については、「やっと人間らしい役を貰えたよ(笑)」と言っています。
その「ライアー~」以降のジム・キャリーですが、例えばヒューマニズムとか、人間の生き様とか、そういうものを訴えかける作品に積極的に取り組んでいるように見えます。
この「マジェステック」は、第二次世界大戦後、実際にハリウッドを吹き荒れた「赤狩り」の時代を場面に借りて、薄れつつあるアメリカの良心を見直そうと訴えかけているような気がします。
右傾向の強まる昨今の横暴なアメリカに対しての批判は強まるばかりですが、おそらくこの映画は、それに対する警鐘を鳴らそうとしているのでしょう。
この作品のクライマックスでは、主人公ピーター(ジム・キャリー)に、合衆国憲法修正条項第1条を例にあげさせて、真の自由とは何か、米国の良心とは何か、ということを堂々と語らせています。
そうです、「Majestic」という単語には「堂々とした」とか、「荘厳な」という意味があるのですね。
ストーリーの設定には「大人のメルヘン」がほどよくちりばめられているような気がします。メルヘンチックなところがありながら、決して浮世離れしていません。そういうところも好感をもって見ることができた理由かな。
ただ、いわゆる「ノンポリ」だったピーターが信条を持つに至るまでのエピソードの積み重ねは、良くも悪くも、いかにもアメリカ映画的だと思いました。
「大人のメルヘン」といえば、この作品の監督であるフランク・ダラボンは、監督としては寡作で知られていますが、彼の撮った3つの映画(「ショーシャンクの空に」「グリーン・マイル」「マジェスティック」)はいずれも寓話性のある大人のメルヘンなんじゃないかな、と思っています。どこかウェットで、ひしひしと人情味を感じるというか、、、だからこそ観終えた後いつまでも余韻に浸っていられるんじゃないでしょうか。
第二次世界大戦で多くの若者を失い、火が消えたようになってしまった小さな町ローソン。
戦地から帰って来ない愛する息子ルークを、心のどこかで待ち続けながら寂しく暮らすハリー。
偶然によるピーターの出現で、町は活気を、ハリーは生きる喜びを取り戻します。
そして蘇った映画館「マジェスティック」。
ルークの喪失によって消えた希望の灯を、はからずもピーターが再び灯すのですね。
そして、音楽好きのぼくにとっては、ルークと間違えられた記憶喪失のピーターが、帰還を祝うパーティで無理やりピアノを弾かせられるシーンが、たいへん印象に残っています。
町の音楽教師・アイリーンが、ピーターに、リストの「ハンガリー狂詩曲第2番」を弾かせて、記憶を取り戻させようとやっきになるのですが、ピーターは自分がピアノを弾けるかどうかすら覚えていないので、おそるおそる鍵盤に触れてみるだけで、全く期待に応えられません。
会場を埋め尽くした町の人々の顔に失望の色が浮かんできます。しかし、困惑しながら鍵盤を探っていたピーターは、ある音を押さえたのがきっかけとなって何かを思い出し、見事にジャズを弾きこなしてみせるのです。
ここで聴かれるピアノが、実によくスウィングするブギウギ調で、素晴らしいグルーヴを出しています。
ちなみに、このパーティの場面で、友人のスペンサーの吹くクラリネットも、1930~40年代のスウィング・ジャズが好きな人なら、とても心地よく聴けることでしょう。
◆マジェスティック/The Majestic
■公開
アメリカ 2001年12月
日 本 2002年6月
■製作国
アメリカ
■監督
フランク・ダラボン
■音楽
マーク・アイシャム
■撮影
デヴィッド・タッターサル
■出演
ジム・キャリー(ピーター・アプルトン/ルーク・トリンブル)
マーティン・ランドー(ハリー・トリンブル)
ローリー・ホールデン(アデル・スタントン)
デヴィッド・オグデン・スティアーズ(スタントン医師)
ジェイムス・ホィットモア(スタン・ケラー)
ジェフリー・デマン(アーニー・コール町長)
ロン・リフキン(ケヴィン・バナーマン:ピーターの顧問弁護士)
アレン・ガーフィールド(レオ・クーベルスキー:ピーターのエージェント)
アマンダ・デトマー(サンドラ・シンクレア)
ブレント・ブリスコー(セシル・コールマン保安官)
チェルシー・ロス(エイブリー・ワイアット)
マット・G・ウィーンス(スペンサー・ワイアット)
メイベル(キャスリーン・デント:食堂の女主人)
ボブ・レファート(カール・バリー)
カール・レファート(ブライアン・ハウ)
ジェリー・ブラック(エメット・スミス:「マジェスティック」のスタッフ)
スーザン・ウィリス(アイリーン:「マジェスティック」のスタッフ、ルークのピアノ教師)
ボブ・バラバン(エルヴィン・クライド院内顧問)
ハル・ホルブルック(ドイル議員)
フランク・コリソン(召喚状を渡すFBI)
ブルース・キャンベル(劇中劇の探検家「ローランド」)
マット・デイモン(ルーク・トリンブルの声) etc・・・
■上映時間
152分
ピアノマン!今(ちょっと前か…)話題の!
そういわれてみるとそうですよね~。
あのピアノね、暇な時にひそかにコピーして弾いてみようかな、と画策してるんだけど、ムリっぽいな~。シロウトピアノしか弾けないぼくには難しそうです。
あれは、誰が弾いてるんでしょ…
想像ですけど、映画の音楽担当か、製作会社がピアニストに発注してるんじゃないでしょうか。無名でも実力がある人とか、ほとんど映画関係の仕事で予定が詰まってる人とかいますからねぇ。
カッコいいピアノでしたよね。
私もだいぶ前に見たのですが、ピアノマンを思わせるストーリーですよね。
確かにこのピアノかっこエエですね~
リストを弾かせようとするのはパーティの場面で、サックスが入るのは確か映画館の修繕をするくだりですね!
誰か著名なピアニストが弾いてるのですかね?
MINAGIさん知りませんか?