昨年亡くなった母は、大正生まれの多くの女性が多分そうだったように
日常生活を着物で過ごす人でした。晩年の数年はちょっと無理でしたが。
だから、私にも結婚するときにたくさんの着物を持たせてくれました。
その着物たちは数十年和ダンスに眠ったままです。親不孝ですね。
一念発起、タンスの中を整理しようという気になりました。ところが、こ
れが奥深い。今のところ、出して眺めている段階です。こんな可愛い
絵羽織がありました。
シックな臙脂色の地に童女の刺繍。木の枝を持って遊んでいるのでしょ
うか、ふくよかな笑顔です。この子たちにも陽の目を見せてあげなくては、
そのためには、着物を勉強しなければなりません。種類や格や季節や、
帯との合わせ方や、なかなかむずかしそうです。
伝統的な花模様の黒い絵羽織もあります。母がいれば、これはどういう
時に、どのように着るのか教えてくれたのでしょうが、今となっては。
呉服屋さんが反物を持ってきて、母があれやこれや楽しそうに選んでい
た昔が蘇ります。以前は思わなかったのに、今見るとなんとも美しく雅
やかに思われます。なんとかタンスの肥やしで終わらせないようにしよ
うと思っているのですが。