おじいさんの旅 | |
Allen Say,大島 英美 | |
ほるぷ出版 |
Grandfather's Journey | |
Allen Say | |
Houghton Mifflin Harcourt |
ぼくのおじいさんは、若者の時世界を見ようと旅に出た。初めて洋服を着て、太平
洋を渡った。汽車や蒸気船で、砂漠や、果てしない草原や、高くそびえる山々や、
工場群や高層建築の町を見た。黒人、白人、東洋人、インディアン、いろいろな人
に出会った。一番気に入ったのはカリフォルニア。おじいさんは故郷へ帰り、結婚
して新妻とカリフォルニアへ渡った。サンフランシスコで娘が生まれた。やがてお
じいさんの心にふるさとを懐かしむ気持ちが強くなり、娘が大きくなると日本へ帰っ
た。故郷は昔のまま、友だちもいた。けれど娘には田舎が合わず、一家で都会
へ出た。そこで娘が結婚して、ぼくが生まれた。おじいさんは、カリフォルニアを
懐かしむようになり、またもう一度戻ろうと考えた。ところが、戦争が始まった。
戦争が終わると何もかもなくなっていた。おじいさんは二度とカリフォルニアを訪
れることはなかった。ボクがおじいさんと同じ若者になった時、カリフォルニアに
行き、その地が好きになった。そしてボクにも娘が生まれた。ぼくも故郷が恋しく
なる。「不思議なことに、いっぽうにもどると、もういっぽうが恋しい」
Tree of Cranes | |
Allen Say | |
HMH Books for Young Readers |
作者のアレン・セイは日系アメリカ人の母と韓国人の父の間に横浜で生まれました。
セイは16歳の時、父親と一緒にカリフォルニアヘ渡ります。その後一度日本の戻っ
たものの、結局またアメリカに行き、兵役を経て、商業カメラマンになります。
その後40歳過ぎから絵本を書き始め、次々と素敵な作品を発表しています。その絵
は一目見てわかるように日本画的な独特の風合いがあります。このTree of Cranes
など、セイの自伝的な物語のようですが、母が松の木に折り鶴を吊るしたクリスマ
スツリーを作ってくれたお話です。どう見ても舞台がカリフォルニアとは思えない
光景です。「おじいさんの旅」もそうですが、2つの文化の間で揺れる人間の心理
がとてもうまく描かれています。アメリカは移民の国だから、共感する人が多いの
ではないでしょうか。「不思議なことに、いっぽうにもどると、もういっぽうが恋しい」
はるかな湖 | |
Allen Say,椎名 誠 | |
徳間書店 |
彼の絵本はどれも、どことなく神秘的で懐かしさを感じる絵と、しみじみした
文章に、いつの間にか引き込まれる、不思議な絵本です。