貢蕉の瞑想

青梅庵に住む貢蕉の日々のつぶやきです。

無常なる無上?

2020-03-28 09:02:11 | 日記

無常なる無上?

令和2年3月28日(土)

  川下にある美術館とモニュメントのある

広場の方から、ご夫婦か父娘連れの方

と説明板の所で擦れ違う。

 女性の方が、足を洗いに一本立って

いる水道の所へ行かれる。

「美術館の方は如何でしたか。」

「特に・・・。」という返事だったので、

寝覚めの床の方へ歩いて行く。

 警報音のブザーが耳障り乍ら進むと、

「立ち入り禁止」の札。

ここまでかと諦めて戻ると、

二人乗りの関西電力の小型トラックが

来て停止する。

 おひとりは、川の様子を目視し、

もうひとかたは「立ち入り禁止」の札を

外して持って来られる。

 挨拶を交わし、立ち入ってよいかの

確認をとる。

 瞬時の幸運に感謝!

 一番乗りである。

取りあえず寝覚めの床という床の上

から風情を楽しもうと、道なき岩場を

慎重に突き進む。

 滑って転んだら大怪我だ。

「最近も救急車でと・・・。」

受付の方の注意もあったので、

より慎重にゆっくり浦島堂を目指す。

 目指す浦島堂。


 

 すると、跡を追うように4・50代の男性が

一人忍者の如く岩から岩へ飛ぶように

来る。

「今日は幸運です。美術館の方から

 入ると無料です。」という話。  

 たぶん立ち入り禁止だという判断

だったのかな。

「私は臨川寺から入ったから、200円

払いました。」。

 木曽らしいといえば木曽らしい?

入口によって対応が違う。

これまた一興。

 その方の跡を追いたいのだが、

とてもとても。

 数年前だったら…?

 只淡々と自分のペースを守って!

 何とか浦島堂に辿り着く。

 そこで、20代の若者二人と出会う。

 私ひとり汗びっしょり。

 一息つき、飴玉をしゃぶる。

 素手の若者二人にも「どうぞ」とお裾分け。

「ありがとうございます。」と快活な応対。

 幸運な寝覚めの床の寸話をし、

それぞれの感性の赴くままに・・・。


 

 浦島堂は、一枚岩の上に立ち、

十数本の赤松に囲まれ守られている。

とにかく自然の凄さ、素晴らしさに

圧倒される。

 水の音が弛まず勢いよく、

「ダッダーダッダー」「サアーサア-」

という輪唱。

 雨上がりなので浅黄色の水の地色だが、

白波の線が場所場所によって見事。

規則的であったり、そうでなかったり・・・。  

    頂上の緑の松に囲まれた所で再度寝そべる。

ひんやりとした感じが、汗ばむ体をしっとり

とほほえむように包んでくれた。

 空は灰白色一色。 

 松の枝には、小さく尖った松ぼっくり

の実がいくつか実っていた。                    

 行きはよいよい、帰りはこわい…。

 一度岩と岩の間にお尻から滑る。

 リュックで命拾い!

 その後、這うようにして一つ一つの

床岩を降り、その場その場の光景を

目に焼き付けておこうとする。

 臨川寺の和尚が

「畑を打つ 土中の虫に詫びながら」

という箴言をも噛みしめて…。

 一切は無常、そして無上!

  芭蕉はこんな光景をさぞ喜んだであろう

に、なぜここで一句も詠まなかったの

だろう?

 『更科紀行』では、

「途中で出会った老僧がいろいろ話しかけ

てくるので気が散って一句もまとめること

ができなかった」

と愚痴をこぼしている…。

 あながち言い訳でもないだろう。