11月末付で派遣さんが退社する。
上司から聞いた退社理由は「新しい仕事が見つかり、そちらで社員になるそうです」
私は派遣さんが退社することを止めることはしない。
皆さんそれぞれ色々なことを思って判断していると思う。
ただ、次の仕事も決まっていなかったら「決まるまではがんばってみない?」と声はかけるかもしれない。
私は、他人の人生まで面倒みることはできない。
だから、退社についても素直に受け入れた。
「11月には入籍するとも言ってました」
「そうですか」
またその話なのか。
本当であれば、それはおめでたい話である。
ところが同僚たちに聞いたところ、それは「怪しい」との事だった。
今までにも何度となく「婚約する」「結婚する」と言ってきたが、どれも現実とはなっていない。
同僚たちも、「彼女の話は2割ぐらい聞いておけばいいのよ」というありさま。
「そろそろ年末でしょ、人恋しくなって、かまってチャンになっているのよ」
「次の就職先も実は決まっていなかったみたいよ。慌ててハローワークに行ったみたい」
「結婚するから、事務の仕事にするらしいけど、次も派遣らしいわよ」
「5月に挙式はしないけど、結婚式はするから会場を予約したと言ってましたよ」
「婚約はいつするのか突っ込んで聞いたら『まだはっきりは』って言うから、ちゃんと決めないと出来なくなるよって言いました」
なんだか良くわからない。
「辞める」と言ったら、誰かが引きとめてくれると思ったのだろうか。
「ミケさんには最後まで話さないと言ってました」
どういう意味なのだろうか?
40代前半の彼女、大人になりきれていないところがある。
なぜなんだろう?って考えた。
彼女の会話の端々に出てくるのが家族の話。
会社社長の父親、小学校教諭の母、3つ年上の姉。
厳格な母に育てられ、習い事もたくさんして、何についてもトップでなければいけなかった。
親の思いに背かないように生きることが大切。
そう、育てられたように感じた。
母親は倒れて寝た切りの生活。
だからこそ余計にいい子でいなくちゃと思っているのだろうか。
今の彼女に足りないのは、結婚生活と子供。
いつでもトップで、みんなにちやほやされていたのが、結婚生活や子育てについては話が出来ない。
その想いって辛いのだろう。
誰が悪いって、両親の育て方だったのだと思う。
私は子供がいないから、育児の大変さはわからない。
ただ「いい子でいなくちゃダメ」は大きくなってからの弊害は大きいと思う。
親はいつまででも親であるが、いつまでもいる存在ではない。
親がいなくなった時、彼女は呪縛から解き放たれるのか。
それとも、喪失感でますます辛い思いをするのか。
怖がらずに、自分を見つめる時間を作れば、もう少し楽に生きられるのではないだろうか。
そんなことを思った。