久々に幼稚園で実践しました
実践前
久しぶりに幼稚園で、対話型鑑賞を行いました。1学期に2回実施していましたが、夏休みがあり、9月は学校行事で慌ただしく、10月にやっと2学期初の実践ができました。2回目からのインターバルが長かったので最初に1回目と2回目の作品を映して、おさらいをしようと考えました。
また、床に直接座って見ると、姿勢が悪くなる子が多く、集中力も続かないので2回目から椅子に座ってみてもらうことにしました。この選択はよかったと思っています。画像を見てもらうとわかると思いますが、姿勢もよいし、当てられて発表するときには立って話すので、誰が話しているのか他の子にもよくわかって、聞く態度もよくなります。
みて、考えて、話して、聞く という活動が、園児たちの中に見える形となって入っていくので、椅子に座らせることは効果的だと思いました。
また、久々の実践だったので、この鑑賞活動についてのルールも最初に確認しましたが、多くの園児が覚えていて、挙手して発言してくれました。「静かにみること」「友だちが話しているときは静かに聞くこと」「手を挙げて、当てられたら話すこと」「はいはい、と大きな声を出して手を挙げず、黙って手を挙げること」など、細かいルールまできちんと覚えていて、子どもってすごいなあ。と、改めて感心しました。特に最後の「はいはい、と大きな声を出して手を挙げず、黙って手を挙げること」については、言った私が忘れていました。本当に子どもは侮れません。わずか5歳~6歳の子どもたちなのに、立派です!!
いよいよ実践
ウオーミングアップに1回目、2回目にみた作品をさっと見せました。1回目はメアリー・カサット「孫たちに本を読んで聞かせるカサット夫人」2回目は小倉遊亀「径」でした。1回目の作品を映し「この作品を覚えている人?」と訊ねたら、ほとんどの子が覚えていると挙手しました。「どんなお話をしたかな?」と聞くと「おばあさんに本を読んでもらっている」と的確な答えが返ってきました。記憶力なのか、絵をみて記憶が呼びさまされたのか、本当に感心します。2作品目を映して同様の質問をしたら「お買い物に行って、帰るところ」と、これまた、その時にみんなで話した内容をちゃんと答えてくれました。大人の皆さん、特にお父さん、お母さん、子どもだから、昔のことは忘れてるだろうと、タカをくくってはいけませんよ。約束したことだって、ちゃんと覚えていると思いますよ。だから、都合が悪くなって、大人が忘れたふりをしてはいけませんよ。本当にそう思わせる子どもの記憶力の確かさを強く感じたひと時でした。
さて、いよいよ今日の作品です。今日の作品は、ピカソの「白いドレスを着た少女」です。「child_with_a_dove」が原題のようですのでどんな作品かは検索してください。この作品を映した瞬間、子どもたちの中に嘆息とも感嘆ともいえないような声が漏れました。思わず作品にひきつけられるような空気が流れました。一瞬みただけで手を挙げる子どもがいて、つられて手を挙げる子も2~3人いましたが、「もっとしっかりみて・・・。」とみることを促しました。かなり長い時間、静かにみていました。そろそろいいかな。と思いつつも「もう少しみたい人?」と聞くと、パラパラと手が挙がったので、もうしばらくみました。そして、「もういいかな?」と訊ねて、みんながうなずいたので、「では、誰からでもいいよ。何か言える人?」と聞くと、一斉に手が挙がりました。8割くらいの子どもが手を挙げています。みんなに1回は話してほしいと思っているので、順番に当てていきました。
①「字みたいなものがかいてある」→これはピカソのサインのところです
「鳥がいる」→「ひよこ」「小鳥」の意見も。
「ハト」と言う子が出たので、鳥の名前は「ひよこ」や「小鳥」と言うかな?と、園児に考えさせました。「「ひよこ」は何の鳥の子ども?」と聞くと「ニワトリ」とみんな声をそろえて答えたので、「そうだよね。カラスの子どもは「ひよこ」って言わないよね。」と言って、鳥の名前について気付かせるように働きかけました。「「ニワトリ」や「カラス」が鳥の名前だよね。だとしたら、この鳥の名前は?「ひよこ」なの?「ことり」なの?「ハト」なの?」と聞くと、みんな「ハト?」って、ちょっと自信なさそうに答えました。もしかしたら、この子たちは「ハト」を見たことが無いのかも知れません。見たことのある子が「ハト」と答えてくれたのかも知れません。幼稚園の年長さんなら「ハト」を見たことが無くても仕方ないでしょう。
②「男の子が鳥を持っている」→髪が短いので「男の子」と思ったのでしょう。でも、「スカートをはいている」や「ドレスみたいな服」という意見が次々出てきて、「男の子」じゃなくて「女の子」という意見にまとまっていきました。
③「森の中」→背景の青に塗られた中に赤茶色に塗られた部分があって、そこが木の幹にみえたようです。木のあるところなので「森」と思ったようです。
④「白い服を着ている」
⑤「スカートみたいなものをはいている」
⑥「ボールがある」→少女の手前の丸い物体をボールと考えました。
⑦「家の中」→ボールに見えるのはクッションで、いい服を着ているので家の中にいると思ったようです。
⑧「服とおそろいの靴を履いている」
以上のような意見が出ました。8人が8つの意見を言ったのではなく、もっとたくさんの似て異なる意見が口々に出たのを集約したのが8つです。ここまでで約15分が経過していました。久々に会った子どもたちで、4か月の間にずいぶんと成長し、しっかりしてきたように感じたので、ちょっと質問のグレードを上げてみました。
「女の子がいるよね。この女の子、今、どんな気持ちだと思う?うれしい?悲しい?楽しい?苦しい?」と聞いてみました。「それから、どうしてそう思うのかがいっしょに言えたらもっといいね。」と理由づけ(根拠を語ること)ができるように促してみました。
そうしたら・・・
「泣いてる。」
どうしてそう思うの?
「ここに(女の子の目の下を指しながら)涙のあとがある。」
どうして、じゃあ、泣いているの?
「一人だから。お母さんもお父さんもいなくて、迷子になって、だから・・・」
本当ね。周りに誰もいないね。一人なのは迷子になったからだと思ったのね。
「悲しい。」
どうしてそう思うの?
「泣いてるから。」
泣いてると思ったのは?
「涙のあとがある」
さっき話してくれた子と同じことを思ったのね。でも、どうして泣いているの?
「お父さんと、お母さんと一緒だったけど、地図みたいなのを見て、お父さんやお母さんはお店みたいなところに行ってしまって、迷子になったから・・・。」
ああ、お父さんやお母さんとはぐれて、一人になっちゃったと思ったのね。
「泣いてる」
どうして?
「怒られたから。」
誰に怒られたの?
「たばこを吸うおじさんに、その鳥を逃がせって言われて、怒られたから・・・。」
たばこを吸うおじさんはどこにいるの?
「ここの字みたいな(ピカソのサインを指さしながら)ところがたばこの煙で、この向こうに(絵の外側を指さし)おじさんがいて、鳥を逃がせって言ってる。」
などなどの意見が出ました。
ここで15分経過。開始から30分余りが経ちましたので、この辺りが終わり時です。集中力が切れかかっている子どもも出てきますので、終了することにします。ただし、今回は初めて、絵に描かれている人物の気持ちについて感がえたので、そのことについてコメントしました。
「今日の絵をみて話す会はこれで終わりです。でも、みんなすごかったよ。今日初めて、この女の子の気持ちはどんな気持ちか考えてもらったけど、みんなしっかり考えたね。絵の中の女の子の気持ちをみんな考えることができたのだから、これからは、一緒に遊んだり勉強しているお友だちの気持ちもどんなか考えてあげられるといいね。そうすると、この女の子の気持ちを考えてみたことがいいことだったって言えるからね。じゃあ、今日はこれで終わりましょう。」と言って、あいさつをして会を終わりました。
実践を終えて
久しぶりだったけど、子どもたちは前回までの経験を忘れず、しっかり今回も話そうとしていたのがうれしかったです。3か月の間にしっかり成長している姿も見られたのも、子どもってほんとうにすごいな。と何度も感心させられました。そして、人の気持ちを考えることもしっかりできることが今回の何よりの収穫でした。
担任の先生も1学期の頃は「こんな状態でいいのか。」と不安を感じられていたようですが、今回の様子を見て、少し安心もされ、また、今日の子どもたちの姿に感動されていました。次の実践がまた楽しみになりました。今年度は7回実践なので、5作品は昨年度のものがありますが、あと2作品選ばないといけないのが課題です。どんな作品がいいのか?
選び甲斐がありますね。
では、担任の先生からのレポートも届きましたら、またUPしたいと思いますので、お楽しみにお待ちください。
実践前
久しぶりに幼稚園で、対話型鑑賞を行いました。1学期に2回実施していましたが、夏休みがあり、9月は学校行事で慌ただしく、10月にやっと2学期初の実践ができました。2回目からのインターバルが長かったので最初に1回目と2回目の作品を映して、おさらいをしようと考えました。
また、床に直接座って見ると、姿勢が悪くなる子が多く、集中力も続かないので2回目から椅子に座ってみてもらうことにしました。この選択はよかったと思っています。画像を見てもらうとわかると思いますが、姿勢もよいし、当てられて発表するときには立って話すので、誰が話しているのか他の子にもよくわかって、聞く態度もよくなります。
みて、考えて、話して、聞く という活動が、園児たちの中に見える形となって入っていくので、椅子に座らせることは効果的だと思いました。
また、久々の実践だったので、この鑑賞活動についてのルールも最初に確認しましたが、多くの園児が覚えていて、挙手して発言してくれました。「静かにみること」「友だちが話しているときは静かに聞くこと」「手を挙げて、当てられたら話すこと」「はいはい、と大きな声を出して手を挙げず、黙って手を挙げること」など、細かいルールまできちんと覚えていて、子どもってすごいなあ。と、改めて感心しました。特に最後の「はいはい、と大きな声を出して手を挙げず、黙って手を挙げること」については、言った私が忘れていました。本当に子どもは侮れません。わずか5歳~6歳の子どもたちなのに、立派です!!
いよいよ実践
ウオーミングアップに1回目、2回目にみた作品をさっと見せました。1回目はメアリー・カサット「孫たちに本を読んで聞かせるカサット夫人」2回目は小倉遊亀「径」でした。1回目の作品を映し「この作品を覚えている人?」と訊ねたら、ほとんどの子が覚えていると挙手しました。「どんなお話をしたかな?」と聞くと「おばあさんに本を読んでもらっている」と的確な答えが返ってきました。記憶力なのか、絵をみて記憶が呼びさまされたのか、本当に感心します。2作品目を映して同様の質問をしたら「お買い物に行って、帰るところ」と、これまた、その時にみんなで話した内容をちゃんと答えてくれました。大人の皆さん、特にお父さん、お母さん、子どもだから、昔のことは忘れてるだろうと、タカをくくってはいけませんよ。約束したことだって、ちゃんと覚えていると思いますよ。だから、都合が悪くなって、大人が忘れたふりをしてはいけませんよ。本当にそう思わせる子どもの記憶力の確かさを強く感じたひと時でした。
さて、いよいよ今日の作品です。今日の作品は、ピカソの「白いドレスを着た少女」です。「child_with_a_dove」が原題のようですのでどんな作品かは検索してください。この作品を映した瞬間、子どもたちの中に嘆息とも感嘆ともいえないような声が漏れました。思わず作品にひきつけられるような空気が流れました。一瞬みただけで手を挙げる子どもがいて、つられて手を挙げる子も2~3人いましたが、「もっとしっかりみて・・・。」とみることを促しました。かなり長い時間、静かにみていました。そろそろいいかな。と思いつつも「もう少しみたい人?」と聞くと、パラパラと手が挙がったので、もうしばらくみました。そして、「もういいかな?」と訊ねて、みんながうなずいたので、「では、誰からでもいいよ。何か言える人?」と聞くと、一斉に手が挙がりました。8割くらいの子どもが手を挙げています。みんなに1回は話してほしいと思っているので、順番に当てていきました。
①「字みたいなものがかいてある」→これはピカソのサインのところです
「鳥がいる」→「ひよこ」「小鳥」の意見も。
「ハト」と言う子が出たので、鳥の名前は「ひよこ」や「小鳥」と言うかな?と、園児に考えさせました。「「ひよこ」は何の鳥の子ども?」と聞くと「ニワトリ」とみんな声をそろえて答えたので、「そうだよね。カラスの子どもは「ひよこ」って言わないよね。」と言って、鳥の名前について気付かせるように働きかけました。「「ニワトリ」や「カラス」が鳥の名前だよね。だとしたら、この鳥の名前は?「ひよこ」なの?「ことり」なの?「ハト」なの?」と聞くと、みんな「ハト?」って、ちょっと自信なさそうに答えました。もしかしたら、この子たちは「ハト」を見たことが無いのかも知れません。見たことのある子が「ハト」と答えてくれたのかも知れません。幼稚園の年長さんなら「ハト」を見たことが無くても仕方ないでしょう。
②「男の子が鳥を持っている」→髪が短いので「男の子」と思ったのでしょう。でも、「スカートをはいている」や「ドレスみたいな服」という意見が次々出てきて、「男の子」じゃなくて「女の子」という意見にまとまっていきました。
③「森の中」→背景の青に塗られた中に赤茶色に塗られた部分があって、そこが木の幹にみえたようです。木のあるところなので「森」と思ったようです。
④「白い服を着ている」
⑤「スカートみたいなものをはいている」
⑥「ボールがある」→少女の手前の丸い物体をボールと考えました。
⑦「家の中」→ボールに見えるのはクッションで、いい服を着ているので家の中にいると思ったようです。
⑧「服とおそろいの靴を履いている」
以上のような意見が出ました。8人が8つの意見を言ったのではなく、もっとたくさんの似て異なる意見が口々に出たのを集約したのが8つです。ここまでで約15分が経過していました。久々に会った子どもたちで、4か月の間にずいぶんと成長し、しっかりしてきたように感じたので、ちょっと質問のグレードを上げてみました。
「女の子がいるよね。この女の子、今、どんな気持ちだと思う?うれしい?悲しい?楽しい?苦しい?」と聞いてみました。「それから、どうしてそう思うのかがいっしょに言えたらもっといいね。」と理由づけ(根拠を語ること)ができるように促してみました。
そうしたら・・・
「泣いてる。」
どうしてそう思うの?
「ここに(女の子の目の下を指しながら)涙のあとがある。」
どうして、じゃあ、泣いているの?
「一人だから。お母さんもお父さんもいなくて、迷子になって、だから・・・」
本当ね。周りに誰もいないね。一人なのは迷子になったからだと思ったのね。
「悲しい。」
どうしてそう思うの?
「泣いてるから。」
泣いてると思ったのは?
「涙のあとがある」
さっき話してくれた子と同じことを思ったのね。でも、どうして泣いているの?
「お父さんと、お母さんと一緒だったけど、地図みたいなのを見て、お父さんやお母さんはお店みたいなところに行ってしまって、迷子になったから・・・。」
ああ、お父さんやお母さんとはぐれて、一人になっちゃったと思ったのね。
「泣いてる」
どうして?
「怒られたから。」
誰に怒られたの?
「たばこを吸うおじさんに、その鳥を逃がせって言われて、怒られたから・・・。」
たばこを吸うおじさんはどこにいるの?
「ここの字みたいな(ピカソのサインを指さしながら)ところがたばこの煙で、この向こうに(絵の外側を指さし)おじさんがいて、鳥を逃がせって言ってる。」
などなどの意見が出ました。
ここで15分経過。開始から30分余りが経ちましたので、この辺りが終わり時です。集中力が切れかかっている子どもも出てきますので、終了することにします。ただし、今回は初めて、絵に描かれている人物の気持ちについて感がえたので、そのことについてコメントしました。
「今日の絵をみて話す会はこれで終わりです。でも、みんなすごかったよ。今日初めて、この女の子の気持ちはどんな気持ちか考えてもらったけど、みんなしっかり考えたね。絵の中の女の子の気持ちをみんな考えることができたのだから、これからは、一緒に遊んだり勉強しているお友だちの気持ちもどんなか考えてあげられるといいね。そうすると、この女の子の気持ちを考えてみたことがいいことだったって言えるからね。じゃあ、今日はこれで終わりましょう。」と言って、あいさつをして会を終わりました。
実践を終えて
久しぶりだったけど、子どもたちは前回までの経験を忘れず、しっかり今回も話そうとしていたのがうれしかったです。3か月の間にしっかり成長している姿も見られたのも、子どもってほんとうにすごいな。と何度も感心させられました。そして、人の気持ちを考えることもしっかりできることが今回の何よりの収穫でした。
担任の先生も1学期の頃は「こんな状態でいいのか。」と不安を感じられていたようですが、今回の様子を見て、少し安心もされ、また、今日の子どもたちの姿に感動されていました。次の実践がまた楽しみになりました。今年度は7回実践なので、5作品は昨年度のものがありますが、あと2作品選ばないといけないのが課題です。どんな作品がいいのか?
選び甲斐がありますね。
では、担任の先生からのレポートも届きましたら、またUPしたいと思いますので、お楽しみにお待ちください。