みるみるの会の金谷です。3月24日に松江市の村松邸にて、高嶋敏展 福井一尊 二人展(ゲスト石上城行)「まちとアートと古い家と」の鑑賞ワークショップでナビゲーター(ナビ)をさせていただきました。ナビのふり返りを中心にお伝えします。
日時:平成31年3月24日 14:30~15:15
場所:登録有形文化財 村松邸(島根県松江市新雑賀町)
ナビゲーター:金谷直美 参加者:4名
みるみるの会について少し紹介をさせていただいた後、鑑賞会をはじめました。
この「まちとアートと古い家と」では、3つの部屋それぞれに高嶋さん、福井さん、石上さんの作品が展示してあります。はじめに、入り口に近い部屋の石上さんの作品からスタートしました。
〇 1つ目の部屋 石上さんの作品「記憶の景色―山―」2018年 他
<ナビとして、作者にどうつなぐ?つながない?それとも?>
早い時点で、この作品(3点)はこの展示に合わせて作ったのか、それとも既に作られたものを組み合わせて展示しているのか?という問いが参加者からありました。それを一緒に考えたいという思いと、作者に聞いてみたいという思いが自分の中に両方あり、思わず作者である石上さんに「どうなのですか?」と聞いてしまいました(この部屋での鑑賞の最後、一区切りついた後にお話しいただきました)。今思うと「なんでやねん!違うやろ!」と自分に強く突っ込みたいのですが、とっさにそう判断していました。改めて考えると、作品のどこからそう思ったのか(問いが生まれたのか)、もう一度作品をよく見て、色や形など目にみえる事実を丁寧に出していき、それらをもとに話す中で、参加者一人一人の中に「~かもしれない」というところまで行けたのではないか。その上で、「お時間があれば、鑑賞会後に作者にそっと聞いてみるのもいいですね」と一区切りつけることもできたのではないかと思いました。
〇 2つ目の部屋 福井さんの作品「freedom」2018年 他
<鑑賞者の思いを汲むことの大切さを感じた一間>
形も色も大きさも様々な作品が部屋中に展示してあり、とても不思議な空間なのですが、じわじわと病みつきになるような一間(お庭も見えます)です。
「和室の落ち着いた色合いと蛍光色の奇抜な色合いなのに、見慣れたのかもしれないが、なぜが馴染んでくる」「もしかすると、着物の金襴緞子や長襦袢にもかなり派手な色が使われていた、それらが和室に掛けてあるような感じもする。日本人のDNAの中に何かしらつながるものがある感じ」という意見や、「子どものころ使っていた蛍光ペンの様に色が立ち上がってくる感じ」といった、色からイメージが広がるようなお話がありました。その中から、ふとガラス瓶に糸が入った作品に目が留まり、話題が移っていきました。ナビとしては、ガラス瓶や中に入っている糸の色合いを近くでじっくり見ていただきたい、また糸が瓶の外に垂らしてあるものにも気づいてほしいとの思いから「この部屋の中に瓶はいくつあるのでしょうね」と、声をかけてみましたが空振りでした。もっと直接的に「瓶に近づいて見てみませんか」など言えばよかったです。空振りと言えば、この部屋に入った際に「たくさんの作品があるので、気になるものを何か選んでそこから話してみましょうか」と提案したのですが、鑑賞者のみなさんの関心とずれていたようでこちらも空振りでした。
鑑賞者の興味や関心よりも、ナビ自身の思いで引っ張っていこうとしてもうまくいかないし、そうかと言って発言を待ちすぎていてもテンポが悪くなり停滞する(それ以前に、話したくなるようにナビが繋げていないなぁと反省)、ナビとして鑑賞者のみなさんの思いを汲むことの大切さや、その難しさを感じながら「次こそは!」と最後の部屋に移動しました。
〇 3つ目の部屋 高嶋さんの作品「小泉八雲へのオマージュ」2016年 他
<追体験・体感する鑑賞>
「(お茶室の)炉として切ってあるところに、(壺があり)水が張ってある。本来、火があるところに水がある」「よく見ようと覗き込むけど、よく見えなくてもどかしい」などと話しながら、暗い部屋の真ん中の炉の中にある壺の水に浮かぶ写真を、5~6人で頭をつきあわせるように眺めました。作者の高嶋さんから、今回の作品は小泉八雲をテーマにしているとのお話しがありました。見えなくてもどかしい感じや、見ようとして覗き込む、至近距離で見ようとすることは、じつは作品を通して小泉八雲がやっていたこと、感じていたであろうことを追体験しているというお話もありました。八雲がはじめて怪談を聞いたのも松江のお寺であったというお話もありました。まさに暗い部屋で車座になっている私たちは、八雲も体験したかもしれない百物語の場と重なるかもしれない、今回は3つの部屋で作品を鑑賞し話す中で、古代から明治などの「昔」と「今」をそれぞれの部屋で行き来するような体験もできたのではないでしょうか、と言って鑑賞会をしめくくりました。
参加された方から「楽しかった」「どんどん見方が変わっていった」というお声をいただきました。鑑賞会を楽しんでいただけたようで、ほっとしました。私自身としましては、参加のみなさんがもっと発言しやすいように、ナビとしてもう少し場をあたためることができたらよかったなぁ。また、なるほど!というご意見がたくさんありましたので、もっと話をつなげて深めることができたら、より豊かな時間にすることができたのになぁ。と反省しながら、もっとナビとしての力を高めようと思いました。至らぬところの多い私ではありますが、これからも精進いたしますので、また作品の前でお会いしましょう。ご参加いただき、ありがとうございました!
主催の「どこでもミュージアム研究所」のみなさま、鑑賞ワークショップという貴重なお時間を頂きまして、たいへんありがとうございました。ぜひ、また「みるみるの会」にお声がけくださいね!一緒に楽しく豊かな時間をつくっていきましょう。
【みるみるの会からのお知らせ】
安来市加納美術館「特別企画展 平和運動開始70年 画家加納莞蕾大回顧展」で対話型鑑賞会を予定しています。
1回目 4月28日(日)13:30~
2回目 6月2日(日)13:30~
ご来館、お待ちしております
日時:平成31年3月24日 14:30~15:15
場所:登録有形文化財 村松邸(島根県松江市新雑賀町)
ナビゲーター:金谷直美 参加者:4名
みるみるの会について少し紹介をさせていただいた後、鑑賞会をはじめました。
この「まちとアートと古い家と」では、3つの部屋それぞれに高嶋さん、福井さん、石上さんの作品が展示してあります。はじめに、入り口に近い部屋の石上さんの作品からスタートしました。
〇 1つ目の部屋 石上さんの作品「記憶の景色―山―」2018年 他
<ナビとして、作者にどうつなぐ?つながない?それとも?>
早い時点で、この作品(3点)はこの展示に合わせて作ったのか、それとも既に作られたものを組み合わせて展示しているのか?という問いが参加者からありました。それを一緒に考えたいという思いと、作者に聞いてみたいという思いが自分の中に両方あり、思わず作者である石上さんに「どうなのですか?」と聞いてしまいました(この部屋での鑑賞の最後、一区切りついた後にお話しいただきました)。今思うと「なんでやねん!違うやろ!」と自分に強く突っ込みたいのですが、とっさにそう判断していました。改めて考えると、作品のどこからそう思ったのか(問いが生まれたのか)、もう一度作品をよく見て、色や形など目にみえる事実を丁寧に出していき、それらをもとに話す中で、参加者一人一人の中に「~かもしれない」というところまで行けたのではないか。その上で、「お時間があれば、鑑賞会後に作者にそっと聞いてみるのもいいですね」と一区切りつけることもできたのではないかと思いました。
〇 2つ目の部屋 福井さんの作品「freedom」2018年 他
<鑑賞者の思いを汲むことの大切さを感じた一間>
形も色も大きさも様々な作品が部屋中に展示してあり、とても不思議な空間なのですが、じわじわと病みつきになるような一間(お庭も見えます)です。
「和室の落ち着いた色合いと蛍光色の奇抜な色合いなのに、見慣れたのかもしれないが、なぜが馴染んでくる」「もしかすると、着物の金襴緞子や長襦袢にもかなり派手な色が使われていた、それらが和室に掛けてあるような感じもする。日本人のDNAの中に何かしらつながるものがある感じ」という意見や、「子どものころ使っていた蛍光ペンの様に色が立ち上がってくる感じ」といった、色からイメージが広がるようなお話がありました。その中から、ふとガラス瓶に糸が入った作品に目が留まり、話題が移っていきました。ナビとしては、ガラス瓶や中に入っている糸の色合いを近くでじっくり見ていただきたい、また糸が瓶の外に垂らしてあるものにも気づいてほしいとの思いから「この部屋の中に瓶はいくつあるのでしょうね」と、声をかけてみましたが空振りでした。もっと直接的に「瓶に近づいて見てみませんか」など言えばよかったです。空振りと言えば、この部屋に入った際に「たくさんの作品があるので、気になるものを何か選んでそこから話してみましょうか」と提案したのですが、鑑賞者のみなさんの関心とずれていたようでこちらも空振りでした。
鑑賞者の興味や関心よりも、ナビ自身の思いで引っ張っていこうとしてもうまくいかないし、そうかと言って発言を待ちすぎていてもテンポが悪くなり停滞する(それ以前に、話したくなるようにナビが繋げていないなぁと反省)、ナビとして鑑賞者のみなさんの思いを汲むことの大切さや、その難しさを感じながら「次こそは!」と最後の部屋に移動しました。
〇 3つ目の部屋 高嶋さんの作品「小泉八雲へのオマージュ」2016年 他
<追体験・体感する鑑賞>
「(お茶室の)炉として切ってあるところに、(壺があり)水が張ってある。本来、火があるところに水がある」「よく見ようと覗き込むけど、よく見えなくてもどかしい」などと話しながら、暗い部屋の真ん中の炉の中にある壺の水に浮かぶ写真を、5~6人で頭をつきあわせるように眺めました。作者の高嶋さんから、今回の作品は小泉八雲をテーマにしているとのお話しがありました。見えなくてもどかしい感じや、見ようとして覗き込む、至近距離で見ようとすることは、じつは作品を通して小泉八雲がやっていたこと、感じていたであろうことを追体験しているというお話もありました。八雲がはじめて怪談を聞いたのも松江のお寺であったというお話もありました。まさに暗い部屋で車座になっている私たちは、八雲も体験したかもしれない百物語の場と重なるかもしれない、今回は3つの部屋で作品を鑑賞し話す中で、古代から明治などの「昔」と「今」をそれぞれの部屋で行き来するような体験もできたのではないでしょうか、と言って鑑賞会をしめくくりました。
参加された方から「楽しかった」「どんどん見方が変わっていった」というお声をいただきました。鑑賞会を楽しんでいただけたようで、ほっとしました。私自身としましては、参加のみなさんがもっと発言しやすいように、ナビとしてもう少し場をあたためることができたらよかったなぁ。また、なるほど!というご意見がたくさんありましたので、もっと話をつなげて深めることができたら、より豊かな時間にすることができたのになぁ。と反省しながら、もっとナビとしての力を高めようと思いました。至らぬところの多い私ではありますが、これからも精進いたしますので、また作品の前でお会いしましょう。ご参加いただき、ありがとうございました!
主催の「どこでもミュージアム研究所」のみなさま、鑑賞ワークショップという貴重なお時間を頂きまして、たいへんありがとうございました。ぜひ、また「みるみるの会」にお声がけくださいね!一緒に楽しく豊かな時間をつくっていきましょう。
【みるみるの会からのお知らせ】
安来市加納美術館「特別企画展 平和運動開始70年 画家加納莞蕾大回顧展」で対話型鑑賞会を予定しています。
1回目 4月28日(日)13:30~
2回目 6月2日(日)13:30~
ご来館、お待ちしております