ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

第62回 造形表現・図画工作・美術教育研究 山口大会に参加してきました

2013-11-23 12:48:20 | 対話型鑑賞
鑑賞の授業をみました


第64回 造形表現・図画工作・美術教育研究 全国大会 山口大会 に参加してきました

11月15日(金)周南市立岐陽中学校会場
公開授業Ⅰ(表現)
公開授業Ⅱ(鑑賞)
を見させていただきました。今回はⅡ(鑑賞)について報告したいと思います。

 画像にもあるように、教室いっぱいに展示された雪舟の「四季山水図」(国宝)のレプリカが何と言っても圧巻です。しかも精度が高く、美しい作品となっています。その作品をタイトルにもあるように春夏秋冬の4場面に分け、2グループずつが分担し、作品のよさや見どころを他のグループに紹介するという鑑賞活動でした。
 担当するグループはどの季節も2グループずつが挙手し、一回で決まりました。先生のお手製のフレームを手にグループがおのおのの季節の場面に出向き、どの箇所を紹介するか、フレームを当てて検討します。このフレームが、掛け軸の表装のような裂地でできており、なかなか風情があり、この作品にマッチしています。生徒は4人グループで男女2名ずつという、バランスのよい構成です。体の大きな男子がフレームを動かしながら、仲間に同意を求めている姿も微笑ましいです。そして、紹介する箇所を決めるとワークシートに基づいて、その箇所のよさや見どころを考えていきます。人物が登場している場面もあるので、人物の衣装や動きなどにも注目しています。また、四季を表現しているので、樹木の様子や何の木なのかにも話が及んでいました。
 グループでの活動が終わると、春→夏→秋→冬の順にグループで紹介を行いました。紹介者もグループ内で決まっていたようで、順々に出てきて、話し合ったことを基に紹介をしました。どの生徒もきちんと紹介できていましたが、どこの場所の話題なのかがややわかりにくく、指さし(ポインティング)してくれるとよりわかりやすかったと感じました。大きな電子黒板があったので、選んだ箇所を電子黒板に投影して、そこをみながら紹介すると、細かい部分ももっとよくみんなにみえたのではないかと思いました。実際の箇所はフレーミングしてあるので、確認もできると思います。また、紹介者がグループで話し合った内容の書かれてある紙を見ながら話していたので、もっと作品をみて、指さししながらよいところや見どころを紹介してくれると聞いている人に伝わりやすかったかのではないかと思いました。こんな風に欲を言えば、もっと、もっとと思うこともありましたが、生徒はよく活動し、作品のよさに触れていたと思います。
この雪舟の作品が毛利博物館にこの時期だけ特別に展示されていると聞いたので、午後の開会行事をパスして観に行ってきました。レプリカもすごかったですが、本物はもっと圧巻でした。雪舟の息遣いや筆の勢いが感じられる作品でした。こんなことでもないと、わざわざ防府市まで出かけることはないので、大会さまさまでした。話が横道にそれました・・・。
生徒は活動後に自己の振り返りを行いました。ワークシートに「みるみるの会」で作成したワークシートの文言を見たときに、山口県立美術館主催のティーチャーズデイに招かれて研修会を持ったことを思い出し、この先生も参加されていたのだとわかり、うれしくなりました。分科会での協議後にその話をしたところ、「このワークシートのアンケートの文言に代わるものを見つけることができなく、使わせてもらいました。本当に的確な質問詞です。」といっていただき、自分たちの活動が少しずつではあるけれど、先生方の役に立てていることを感じることもでき、とてもうれしい出来事でした。近々、鑑賞の実践冊子も発行されるので、ますます鑑賞を実践してくださる先生が増えるとうれしいです。
またまた、話しが横道にそれましたが、生徒たちは、真剣にじっくりと振り返りを行っていたように思います。しかも、記述には「根拠」に基づいた記述がなされていました。「~~~だから、===だと思う。」という記述です。指導される先生が普段からそのような考え方を生徒に促しているからこそ、今日のこの記述にもその指導の成果が表れるのだと感じました。
授業を参観し、素晴らしい授業だったと思いました。全国大会でもあるので、山口の先生方の取り組みは、数年前から計画的になされてきたのだろうと思いました。美術館や博物館との連携も地道に行われていたからこその、雪舟の国宝作品のレプリカだったと思います。それはとても意義深いものだと思いました。このような取り組みをすることで、子どもたちに多くの財産がもたらされると感じました。私のような県外からの来訪者でも雪舟と周南市の山口のつながりを強く感じたのですから、地域の子どもたちは、雪舟をわが故郷の偉人と捉え、誇りに感じることでしょう。そのような心情を培うことの一助にもなる鑑賞活動は素晴らしいと思います。この研究大会の成果が今後も山口の美術教育を支えていくのだと思うと、うらやましくなりました。
来年は、本県の出雲市で中国造形教育大会が開催されますが、授業公開については確定しておらず、いまだ船出もできていない状態です。どうなることか心配ですが、会員の一人として、尽力したいと思います。
最後に、2日目の東良調査官の講演や村上前文科省調査官の講義、シンポジウムを聞く中で「子どもはそもそも豊かな存在である。」という子どもの捉えに強く共感しました。その豊かな存在の豊かさをいかに引き出させるかが、われわれ美術教師の使命と肝に銘じ、明日からの授業に励みたいと決意を新たにしました。
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島根県教育研究会浜田大会に参加しました

2013-11-06 13:18:48 | 対話型鑑賞
島根県教育研究会浜田大会に参加しました


報告がかなり遅くなってしまいましたが、10月25日(金)に島根県教育研究大会浜田大会が開催され、みるみる会員の正田さんが鑑賞の授業公開を行いました。様子は画像もアップしているのでそちらも見ていただけるとレポートもよくわかってもらえると思います。

中学3年生が自画像を描く制作に併せての鑑賞でした。題材に入る前に1度鑑賞が行われていました。そして、制作に入ってからの2回目の鑑賞が今回の授業公開でした。
作品は松本竣介の「立てる像」です。この作品はみるみるの会の鑑賞推奨作品で、中学校3年生と鑑賞すると、とても深い鑑賞による対話が行えます。空襲で焼かれた街に立ち遠くを見やる若い男性の姿に進路決断を迫られている現在の自分を重ねる中学生は多いです。しかも、鑑賞のみならず、自分も自画像を制作するわけですから、自己と自己の作品の制作をも重ね合わせてみるわけですから、自ずと作品がリアルに迫ってくるものと考えます。

授業の開始は黙想からでした。やんちゃそうに見える男子生徒もきちんと黙想していて感心しました。黙想後に身なりを正して挨拶から始まりました。制服を着ていなかった男性生徒も号令の時には制服に袖を通していて、今日はきちんとした態度で授業を受けるという決意のようなものも感じました。
生徒は4人1組の机につき、中央に竣介の作品がカラーでプリントアウトされラミネート加工されたものと付箋の入った封筒が置かれていました。この鑑賞スタイルに慣れているのか、グループ鑑賞が始まると、生徒は付箋を手にし、おのおの考えたことや感じたことを付箋の色ごとに記入し、作品の周りに貼っていきまいました。書かれた仲間のものを読んだり、あれこれつぶやいている声に耳を傾けている様子があり、仲間の意見に「ああ!!」とか「おお!!」などの感嘆の声や「そういうことか!!」「それ、そうかも?」などの同意の声が上がり、つぶやきも評価されるグループ鑑賞のよさがあちこちで生まれていました。
グループでの鑑賞のあとは席を移動して、みんなで鑑賞TIMEでした。スクリーンに映された作品を先生を進行役にしながら始まりました。なかなか声が上がりづらい空気が流れていました。それはきっと大人がたくさん周りで見ていたせいもあるでしょう・・・。でも、ぽつぽつと上がる意見はなかなかに鋭いものでした。その声をT2の先生がうまく拾ってホワイトボードに記録していくのがとても効果的だったと思います。こんなT2が欲しいと心底思いました。こんな授業ができたら、美術の時間も内容濃いものになるなあ・・・。と本当にうらやましく思いました。また、自画像制作現在進行形なので、生徒の発言を自分の制作中の作品に照らして意見を求める場面があり、それも効果的だったと思いました。指導者が生徒の作品をしっかり把握しているからこその問いかけで、そこには生徒と教師の信頼関係もあると感じました。
みんなでの鑑賞が終わったら自席に帰って振り返りを書きました。自分の制作と照らし合わせる記述が求められていて、次の授業からの制作に活かす流れのわかる取り組みでした。最後に数人の生徒に記述したことを発表させられましたが、ねらいが達成されるものとなっていた発言でした。この生徒たちの自画像の完成作品がみたいと思いました。

簡単ですが、以上が、公開授業報告です。
この後、授業に関する協議が行われましたが、そちらについては、またお伝えし頭と思います。

11月に入りました。11月は研究会シーズンです。15・16日は中国造形教育研究大会山口大会、30日には広島大学付属東雲小・中学校研究会に参加し、鑑賞の授業を参観させていただく予定です。中国各地で鑑賞の授業を見させていただいて、今後の私の美術教育に生かしたいと思います。
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