ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

「フラグメンツ」対話型鑑賞会に参加したみるみるの会メンバーの感想です(2018,12,15開催)

2018-12-30 20:03:11 | 対話型鑑賞
12月15日に奥出雲葡萄園で開かれた対話型鑑賞会の感想が、みるみるの会メンバーの正田さんより届きました。

平成30年12月15日(土)高嶋敏展写真展「フラグメンツ」
会場:奥出雲葡萄園ギャラリー ナビゲーター:春日美由紀さん

感想:正田裕子
・鑑賞者の皆さんの熱心な発言が刺激的だった。抽象度の高い作品からも、作品をどう見るのか『みる行為』や『撮影者の意図や思い』について考えが、さらにさらに深まっていくところがダイナミックであった。
・目の前の作品と鑑賞者の対話から、そこで何が話題になり、どんなことが起きているのかつかむ、ナビ力に圧巻だった。
・鑑賞者全員が意見を一通り言ったタイミングで、「他者の意見を聞いてどう思ったのか?」と他者との意見を繋ぐなげかけがあったり、機会を捉えて被写体の情報を鑑賞者全員で共有したりと、鑑賞者誰もが語り合える場の条件を随時判断しながらの、ナビゲーションだった。
・「『大人』の鑑賞会は、一期一会だから難しい。鑑賞者が平等に話ができるために、何ができるか気をつけている。」と今回の鑑賞会の後で聞いた。春日さんの小まとめや言い換えの巧さに感心して何とか学ぼうとするのだが、鑑賞者に対する細やかな心配りが対話の基本にあることを改めて感じた。また、一朝一夕に築かれるものではなく、日々精進しているナビゲータの姿勢にも大いに学ぶ面があった。

○ 場を俯瞰することが得意でない私は、思考を見える化するために、「ピラミッドチャート」を用いて今回の対話の流れを捉えようと試みた。複数の鑑賞者の発言の積み重なりの流れがもっと分かりやすく工夫できそうだと感じた。また、ナビの働きかけを細かく明らかにすることで、自分のナビゲーションに生かしていけるように感じた。

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「フラグメンツ」対話型鑑賞会の参加者と作家の高嶋さんの感想をお届けします!(2018,12,15開催)

2018-12-24 22:58:37 | 対話型鑑賞
12月15日(土)14:00~
雲南市奥出雲葡萄園内ギャラリー
高嶋敏展写真展「フラグメンツ」
ナビゲーター 春日美由紀

 
 11月17日(土)旧村松邸での高嶋さんの作品展に続いて、写真展でも対話型鑑賞会を開催させていただきました。詳細なレポートは参加してくれた正田会員にお願いしてありますので、そちらに任せて、今回は参加者と作家の高嶋さんの感想を報告したいと思います。

 作家:高嶋敏展
 この会に参加すると作品の作者なのですが、自分で気がつかなかった事が数多くあり、驚きます。写真家がシャッターをどんな時に切るかといえば、良いと思った瞬間に反応してシャッターを無意識のうちに切るのです。何となく良いと思ったからというのが本音で、それ以上でもそれ以下でもありません。
 写真を選ぶ段階では、自分が写真で何を感じたかを考えます。対話型鑑賞の感想を聞いていると一緒に写真を選んでいるような錯覚を覚えます。自分と同じ感動を共感してくださる方もいれば、僕が全く心動かなかった陰影に意味を発見してくれる人もいます。人それぞれと言ってしまえばそれまでですが、場合によっては僕以上に僕の写真をちゃんと理解してくれる鑑賞者も現れるかもしれません。
 作者が一番作品について理解があると考えるのは思い上がりで、生み出された瞬間から作品は自立しているんだと改めてわかりました。

 参加者
 今回の鑑賞会に参加して思ったことは、まず「レベルが高い!!」ということです。題材の写真が接近して写されたものということで、正直、これを観て「どうコメントすればいい!?」と思いました。近すぎて観えてこないということでしょうか…。(なんだか人間関係みたいです。)観え方も人それぞれ、想像も人それぞれ。想像の世界の自由を感じる時間でした。



【みるみるの会からのお知らせ】




今年度も「みるみると見てみる?」が開催されます!(写真は昨年度の様子)
島根県立石見美術館(島根県益田市 グラントワ内)のコレクション展
「あなたはどう見る?-よく見て話そう美術について」(会期2019年1月23日~3月4日)の関連イベントです。

「みるみると見てみる?」コレクション展関連トークイベント
開催日時:2019年1月27日(日)
     2月3日(日)、17日(日)、24日(日)
     いずれも14:00から(40分程度を予定)
島根県立石見美術館 展示室Aにて

「あなたはどう見る?-よく見て話そう美術について」は、鑑賞者が自由に思いを巡らせたり、感想や意見を述べられるよう、
キャプションや解説を付けずに作品が展示されている展覧会です。
みるみるの会メンバーとともに、他の人の意見にも耳をかたむけながらじっくりと作品を味わってみませんか?
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「記憶の泉」高嶋敏展作品展での対話型鑑賞会レポートをお届けします(2018,11,17 旧村松邸にて)

2018-12-09 08:51:27 | 対話型鑑賞
「記憶の泉」高嶋敏展作品展(於:松江市雑賀町 旧村松邸)
対話型鑑賞会 11月17日(土)14:30~
参加者 8~10名程度(途中交代あり)
ナビゲーター 春日美由紀



 画像で分かるように、邸宅内部にインスタレーションの形態で作品が展示されている。
 最初に暗くした居室の展示作品から鑑賞し、茶室の作品を後にした。
 開始時間は14:30~としていたが、鑑賞者が多数来場しているタイミング(14:10くらい)で作家の高嶋さんから「今から始めたほうが鑑賞者がたくさんいるよ。」との声かけをいただいたので、予定時刻より早めて始めた。そのため、予定時刻に合わせて来場した方は、2作品目からの参加となった。
 鑑賞会に参加された方は、どなたも対話型鑑賞は初めてだったので、簡単にナビゲーターとみるみるの会の紹介と鑑賞方法を説明した。
 参加者の中には来られたばかりで作品を十分に鑑賞していない方もおられたので、まずは全員じっくりみていただくことから始めた。床の上にはキャプションが展示されていたが、特に「みる」ことを制限することはしなかった。

鑑賞の大まかな流れ(〇:鑑賞者、ナ:ナビゲーター、作:作家)
〇写真が端まできっちり写っていないので、古い写真だと思う。
〇写真に写っている人たちの衣服が着物だったり、軍服ぽかったりするで古い写真だと思う。
〇日本髪を結っているから古い時代。
〇色がセピア色で、古さやなつかしさ、昔家にあった満州時代の写真を思い出す。
ナ)写真についての発言が多いが、この展示についても何かないか?
〇暗いので、写真と私が1対1。写真に写っている人と親密な関係になった気分
〇ガラスで遮断されていないので、温かみがある。
〇浮かべてあるが、浮かぶために何かしてあるのか?
〇写真家の高嶋君が写していない。明かりが柔らかい。レトロな作品なので白熱球の明かりだとどうなのか?この明かり(LED)でやろうとした意図は?昔の写真を現代の明かりで、現代の私たちがみる。
〇この家でやっているのにこの家の人が写っている訳ではないし、写真家の高嶋さんが撮った作品でもない。高嶋さんに縁の作品みたいだが、そこに驚きがあった。
ナ)高嶋敏展写真展ではなく作品展になっている。だから、写真だけでなくここの部屋すべてを作品として捉えてどうか?
〇1点1点と向き合う感じ。膝をついて覗き込むようになるので「観に行く」感じがする。
〇床の上にある写真は高嶋さん?そうじゃないとしても、裕福な家庭の子ども。ブリキの自動車にまたがっている。
〇外で写している写真が多いので、写真機材をもっていて、外で撮った。高嶋さんの祖父なら高嶋さんも幼いころから写真に親しむ環境があったということ。
〇よくみると、みえてくる。話さないと出てこない。最初は予想もしなかったことがどんどん出てくる。こんなふうにみさせていただくなんて想像もしていなかった。
〇素朴な疑問だが、写真を沈ませてみたらどうなのだろう。幼い頃、「人魚」の見世物小屋があって、濁った水を張った容器を暗い部屋の中で覗き込んだこととオーバーラップした。
〇写真を入れた容器が火鉢で、丸みがあって、光がぼんやりと反射して温かさを感じる。
〇火鉢もこの写真に写っている人たちの時代のもので、今はもう居ない。灰になってしまった。だから火鉢なんだけど、水が入れてある。火と水。作品展のタイトルは記憶の泉。
ナ)たくさんお話しいただいて、楽しかったと思われた方は、次の部屋へ移動して頂けたら?茶室に写真が展示してあります。

 2作品目は茶室の床に写真が並べて置いてある状態で展示されていた。並べ方は画像からも分かるように炉の周囲を取り囲むように並べられていた。暗い部屋から明るい部屋に移って、初めて鑑賞者同士が顔を合わせることになり、鑑賞者の多さにビックリする発言もあった。

鑑賞の大まかな流れ(〇:鑑賞者、ナ:ナビゲーター、作:作家)
〇蜘蛛の糸に光の反射
ナ)蜘蛛の巣だとして、それプラス何か?
〇蜘蛛の巣に光が当たって、手を触れるとこうなるのかな?
〇並べて置いてあって、何か意味があるのかな?
〇蜘蛛の巣の写真と、床に枯れ枝が掛けてあるのは何か意味があるのか?
〇どうしてこの部屋?
〇窓もここだけ開けてあって庭がみえる
〇初め、どこに写真があるんだろうと思った。大理石の床の茶室かと思った。思わず踏んでしまった。
〇窓の外にも蜘蛛の巣がある。これを写したのか?
〇写真は木の枝もあるのでは?全部が蜘蛛の巣?
作)全部、蜘蛛の巣です。ここにあるのは全部この庭でとったもの
ナ)その情報も踏まえて、何か考えられること
〇私は一瞬。蜘蛛の巣って一瞬でなくなるから・・・。
〇私は一期一会かな。でも、この蜘蛛の巣の光は一瞬ではない。揺れている幅の分だけ時間の幅がある。
〇写真の並べ方が、少しずらしてある
〇炉が切ってあるから、炉の再現では?
〇四角い空間が、会話、会話、会話 茶室だし(※炉が四角、写真の配置で四角い箇所が2か所ある)
〇口(くち)にも見える(上記の※に同じ)
ナ)じゃあ、ここ(この場所という意味)でなぜ蜘蛛の巣?
〇茶室なので、お客さんが来たところを蜘蛛の巣で捕まえて・・・。
〇やっぱり一期一会、一瞬だけど、時間が流れる。幅がある。蜘蛛の糸が虹の様に光っているが、虹ははかなく、短い時間の流れを感じる
〇蜘蛛の糸のピンと張り詰めた感じが、茶室の空気、張り詰めた空気と同じ?感じ?
〇音まで聞こえてきそう。ピンと張り詰めた。茶室なので姿勢もピンとする。そのピンとが空気が張り詰めた感じ
〇写真に色彩が無い、枯山水、無駄を省いた、寂び?寒い冬を感じる
〇寒さを感じる、炉が切ってある、やはり冬
 
鑑賞を終えて
 成人で、ややマニアックな作品展に来場する方々らしく、鑑賞眼は高く、中には写真の心得もある方もおられたようなので、撮影に関する専門的な発言もあった。また、最初の作品群はキャプションを参考にされた発言もあったが、写真のみならず、展示のされ方、その意味についても考えた発言が出てくることに、ナビをしながら感動していた。思い思いに話されるので、ナビとして場のコントロールにはやや気を使ったが、最初の部屋は暗くて互いがみえないことがよかったのか、逆に他者の話をよく聞き、つなげた内容の話をされ、会話が自然にコネクトされていた。謎を解いていく知的好奇心も刺激されていたように思う。「授業みたい」と言われた方もおられたが、「よくみると、みえてくる。話さないと出てこない。最初は予想もしなかったことがどんどん出てくる。こんなふうにみさせていただくなんて想像もしていなかった。」との発言は、この鑑賞法への最大限の評価だ。何にも増してうれしい発言だった。そして、この体験を踏まえて2作品目に臨んだ。
 2作品目は部屋にしつらえられたものや設定にも発見があり、写真作品だけでなく、この部屋で展示されていることの意味を考えようとする姿勢がみられ、鑑賞として高次な印象を受けた。もちろん、そのように仕組んだ作家の高嶋さんの企てが見事だったということで、対話が進む中で、高嶋さんが随所でネタバレされても、誰もが「そうなのか」「なるほど」と感心しながら作品を読み解いていく楽しさを味わっていた。
 後半は、ナビの出番がほぼなくなり、共に鑑賞者となって発言していた。高嶋さんも作品のネタバレはされるけれども、参加者は自分が自由にみて感じたこととネタバレが違っていても、それを否定的にとらえることはなく、そのギャップを楽しんでいるところもあるような空気感があった。
 どなたも2作品の鑑賞会は楽しんでいただけたようで、終わりに「いや~、面白かった」と言っていただいて、皆さんから自然に「拍手」が起こったのがとてもうれしかった。そして、タイムラグで参加された2名の方と最初の作品に戻って鑑賞を行っていたところ、ここにも途中参加の方が現れ、共に鑑賞し、1時間余の鑑賞会を終えた。1時間余があっという間で、気分が高揚しているのを感じながら帰路についた。
 
振り返り
 鑑賞のやり方だけ伝えたら、後はどんどん会話が続いて、ナビの出番はほとんどなかったが、様々出てくる発言を確認しながら積み上げて返すことで新たな発見につながるような言葉がけをした。作家が作品展の場におられるので、鑑賞者は「答え」を求めようとする傾向にあった。鑑賞者が考えたことが、作家の意図と同じであることが多々あったが、さすがに大人なので「当てっこ」に流れることはなかった。高嶋さんは写真家なので「写真展」だと思っていた方が多かったが、「作品展」であることを伝えたことにより、「写真」だけでなく、この場所での「作品」として、全体をみることにつなげられた。
 どうナビするのがよいのか?を考えるヒマも無く、場を、どう進めて行くのかに精一杯だったが、終わった時には不思議と充実感があり、自分自身も楽しんでいたことがわかった。とても濃い時間を過ごさせていただき、満足している。参加者の皆様、ありがとうございました。


【対話型鑑賞会のお知らせ】
高嶋敏展写真展「フラグメンツ」こちらの写真展で対話型鑑賞会をします。

期日:12月15日(土)14:00~ 
場所:奥出雲葡萄園 地下ギャラリーにて

今回のナビレポートの作品展に続き、高嶋敏展さんの写真展での対話型鑑賞会です。
食の杜にある奥出雲葡萄園は、食事はもちろんですが地下スペースをはじめ建物やロケーションもすてきな所です。
雲南市木次町まで足をのばしてみませんか?
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月例鑑賞会(橋本明治・下絵)のレポートをお届けします!(浜田市世界こども美術館 2018,11,17開催)

2018-12-02 09:51:06 | 対話型鑑賞
ナビゲーターをした房野さんから、レポートが届きました。

日時:平成30年11月17日 14:00~14:40
場所:浜田市世界こども美術館 コレクション室
第50回浜田市美術展記念 「橋本明治デッサン展」
作品名:「初雲雀」1973年 下絵4点   
作 者:橋本明治 1904年~1991年 
ナビゲーター:房野     参加者:4名(内みるみる会員2名)

 今回のコレクション室に展示されていたのは、橋本明治のデッサンや下絵がほとんどであったが、橋本明治の息子であり、日本画家でもある橋本弘安の作品もあり、橋本親子の作品展でもあった。日本画の「本画(完成作品)」は橋本弘安の「遠い花火」一点であったが、この作品は以前みるみるの鑑賞会で扱った作品でもあり、今回参加された鑑賞者は常連の方で、以前、この作品での鑑賞会に参加したことがあるとのことだったので、今回はそれとは別の日本画の「下絵(デッサン・試作品)」を鑑賞することにした。下絵で鑑賞会を行うのは初めてだったが、初めてだからこそ、一体どんな鑑賞会になるのか?!ワクワクしながら対話をスタートした。

 選んだのは「初雲雀」という芸妓が画面中心に描かれた作品の下絵、4点。
4点のうち3点はほぼ構図もモチーフも同じで、芸妓の着物も全て黒。それ以外の敷物や手に持った扇子の配色が変えてある。今なら同じ下絵をコピーしてコンピュータで処理すれば、一瞬で配色を様々に試してみることもできるが、まだそういう機器がなかった時代の橋本明治は、同じ構図を手描きし、それに絵の具やパス等で着彩をしていた。しかもその塗り方はかなりラフで、細やかな質感などを追及するより、配色の組み合わせを確認したいがための下絵であるということが見て取れる。今回はこれらをじっくりと見比べることで作者の思考を読み取ることができるのではないか、と想像しながらナビゲートしていった。

<鑑賞者の意見>
・敷物の面積が大きく、その色次第で、作品の印象が変わる。緑、黄、赤茶、とかなり違う印象になる。自分は茶色の敷物の作品が好み。なぜなら、他のものより、着物の黒が美しく見えるから。
・左下の作品は後ろの金屏風がはっきりわかるように床との接地面のギザギザが克明に描かれ、敷物の手前の端がこの作品だけには入っている。モデルが「静」を表現し、金屏風の端の輪郭線が「動」を表現していて面白い。
・中心のモデルの着物は4点とも黒で固定してあり、背景の配色を色々試していることから、この黒をいかに美しく見せるかを作者は追及しているのではないだろうか。
・後ろの屏風の床面との接地面である輪郭線の位置が、左下のものとほかの3点は変えてある。人物の体の向きも微妙に変えてある。
・完成度としては下の2点が高いと思う。顔の造作や表情がはっきり描かれていて、特に右の下の作品は着物の透け具合まで細やかに描かれていることから、本画のイメージに近いものではないだろうか。
・自分がどれかもらえるとしたら、左下のものが良い。絵として完成度が高いし、マチスのようなざっくりとした色面が魅力的。
・左下のものに比べて、他の3点は金屏風の線が曖昧になっているのは、構成的に金屏風はさほど克明に描く必要はないと作者が判断した結果ではないだろうか。左下のものはいろいろなモチーフが細やかに描かれていて、見たままにスケッチしているように感じる。そのことからこれを早い段階で描いて、その後、他の3点のようにモチーフの構成をある程度決めてから色面の組み合わせを考えていったのではないかと思う。
・そうは言っても左下のものが最初のスケッチとは限らない。
・背中に見える帯の端が非常に重要なポイントになっていると思う。床の敷物と色が類似色になっていて色のつながりを作っている。扇子の色とも合わせているものもあるので、作者の試行錯誤が感じられる。

<ふりかえり・会員からの意見>
・同じ作品に向かう下絵が4点並んでいたが、描かれた順番が情報としてあればさらに考えやすかったかもしれない。
・少人数で自由に自分の意見を言える雰囲気で、ナビが自分の意見も述べていたが、根拠を確認したり、こまとめをしたりする場面が少なかった。
・他の意見をよく聞いて考えを構築していくというより、各々が言いたいことを言ったという印象。こまとめをするのは難しいが、散漫にならないようにすべき。

<ナビの自評>
・情報がないままに見たものを根拠に思考していくのも対話型鑑賞の醍醐味だと思うが、せめて本画の印刷物だけでも展示してあれば、下絵の順番を考えるヒントになって面白かったのではないか。
・会員からの指摘があったように根拠を明らかにし、こまとめをすることで意見を共有し、積み上げていくようなナビをしたい。
・普段から絵を描いておられる鑑賞者なので、技法や構成の工夫といった「描く側」からの視点で対話が進んだ。それはそれで話は尽きないのだが、他の視点で作品を味わっていくようなナビゲートのスキルも必要である。特に、普段絵を描かない、鑑賞もあまりしないといった方が同席していた場合でも、楽しく対話に参加できるような雰囲気を作らなくてはならない。

 対話を通して作者の本画へ向かう途中の試行錯誤を感じることができた。今回は4点を見比べてそれぞれの違いを発見していき、その構成的な工夫を4枚の下絵から読み取っていくような鑑賞であった。日本画の制作過程に触れながら鑑賞するというスタイルで、下絵からも様々な発見と考察がなされた。ナビ自身も楽しみながら新しい発見を体験していくことができ、初めてのジャンルにチャレンジした甲斐があったと思う。



【みるみるの会からのお知らせ】




今年度も「みるみると見てみる?」が開催されます!(写真は昨年度の様子)
島根県立石見美術館(島根県益田市 グラントワ内)のコレクション展
「あなたはどう見る?-よく見て話そう美術について」(会期2019年1月23日~3月4日)の関連イベントです。

「みるみると見てみる?」コレクション展関連トークイベント
開催日時:2019年1月27日(日)
     2月3日(日)、17日(日)、24日(日)
     いずれも14:00から(40分程度を予定)
島根県立石見美術館 展示室Aにて

「あなたはどう見る?-よく見て話そう美術について」は、鑑賞者が自由に思いを巡らせたり、感想や意見を述べられるよう、
キャプションや解説を付けずに作品が展示されている展覧会です。
みるみるの会メンバーとともに、他の人の意見にも耳をかたむけながらじっくりと作品を味わってみませんか?
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