ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

オンラインACOP記念すべき10回目のナビを務めました!!

2020-10-22 21:20:27 | 対話型鑑賞


ACOPを通じてつながる、実践を通して学ぶ(第10回)
2020.10.17(土)14:00~17:00
1回目 ナビゲーター:鈴木有紀
鑑賞作品:「霊峰石鎚」長谷川竹友
2回目 ナビゲーター:春日美由紀
鑑賞作品:「りんごの天体観測」鈴木康広

 作品は画像にあるようにモノクロ。一体これは何なのか?何にみえるのか?問いを投げた。以下は発言されたものを順に記す。ナビゲーターのパラフレーズやサマライズは省略。

 ・宇宙にみえた。けど、よくみていたら雪原に雪が舞うところにみえてきた。
 ・光の届かない深海の闇に舞うマリンスノーと海底から巻き上がったチリ。
 ・きれいだな。最初「なんだろう?」と思っていたけど・・・。皆さんの話を聞いて、美しいものにみえてきた。
 ・モノクロ写真、マグマとか、太陽のコロナ、噴出しているもののモノクロ写真。赤とか炎を感じる色がある。
  色を無くしてみる、別のものにみえてくるかもしれないという、実験をしたのじゃないか。
 ・天体望遠鏡から見た天体。円の縁が左下にある。ひとつひとつに芯がある。星のまたたきのようにみえる。でも、マクロじゃなくて顕微鏡からみたシャーレの中のカビ。振れ幅が大きい。どっちにもみえるな。
 ・絵なのか?写真なのか?たぶん写真。油ハネ。点々が油で、もやっとしているのが水蒸気。そういうのにみえてきて、でも、そんなんじゃ無いよな?水蒸気爆発?撮られ方が意図されているような。実験的な・・・。
 「写真です。」「色があるものをあえてモノクロにしている。」「黒だから黒とは限らない。」情報提供
 ・白黒写真を考えていた。白黒にすることによって永遠を閉じ込める。ここに永遠がある。
 ・写真ということは、ネガのほうだったりすると、白黒逆になる。全く正反対にみえる。もともとの色とは違う。白黒逆になってくる。黒い点々の汚れが、宇宙の天体にみえたりする。
「ネガポジ逆じゃないです。」情報提供
 ・似たような写真を前にみたことがあって、果物のようなものを接写してモノクロにしてるのかな?と思ってみていた。果物だとしたら、自然なので、自然が描いたもの。宇宙だったり、星々、にみえるんじゃないか?
「ちょなんさん、作品を知っていらっしゃるようなので、この作品のタイトルはりんごの天体観測です。」情報提供
 ・白と黒の黒がかかってる感じの模様、フチがリンゴの形にもみえて、でも、こんなにリンゴに点々があるのか?と思ったときに、いやいや違うだろう・・・。と、私の経験を超えた。リンゴにみえないというか不思議。
 ・リンゴって結構ブツブツがある。マジマジみてないので、マジマジみてみたい気になりました。身近なものをよくみてみたい気になりました。
 ・シークエンス、裏テーマを考えながらみていた。どんなものにも宇宙的な存在感、神が宿る的な、みえかたによって感じるものがあるのだなって・・・。
 ・リンゴ、信じがたい。リンゴに付いた虫食いや農薬の跡のようにみえるが、それ以前に、窓ガラスについた泥のポツポツ、汚れ、のようにみえて、カラーでみたら汚らしいものが、モノクロにするときれいにみえる。
 ・モノクロにするってことで、色からの情報がなくなるとみえ方が変わってくる。
 ・みせかたによっては、こういう風にみえるんだなって。
 ・色っていうノイズが入らないことによってちょっとみえ方が変わってくるのだなっていう・・・。色からの情報に結構左右される・・・。
 ・リンゴと天体ってことで、リンゴは誰しも手にすることができるし食べたこともある。結構身近。でも天体ってすごく遠くて誰も触ったことがない、触れない、大きすぎて触ることもできない、大きさも小さいリンゴと限りなく大きい天体、遠くにあるから神秘性とか不可思議を感じるけど、身近なリンゴの中にそれがあることに、生まれてきて十数年、今さらながらに、感じるっていうか・・・。
 ・みている(作品)が天体だとして、その中の1個に地球があって、その地球をアップしていくと誰かの掌の中にリンゴがあって、そのリンゴの中の天体をアップしていくとまたリンゴがあって、って、ずっとループしていそうで面白いな、って。
 ・同時に、同じようなことを思っていて、リンゴがビッグバンだったら、ってことで、さっきの自分のみ方ともつながってくるのだけど、マクロとミクロの、リンゴと宇宙のビッグバンがひとつのリンゴ。神が宿るようなものがあってと考えると、さっきシークエンスってことで、さっきの作品とつながってきて、面白いなって思った。
 ・神が宿る?神の宿り方?人間の神聖・心性だと思うのだけど、神が宿っていると感じる人間の心性みたいなものがリンゴにあって、さっきの山にもあって、その天体にもある。普遍的なものを感じてとても面白い。
 ・1作目は分かりやすい人が登りにくい険しい山とか、仏さま、という分かりやすいアイテムだったけど、そういう神聖なものに比べて、リンゴ、身近なものに神聖、本当はあった、宿っていたかもしれないのに、忘れてしまった、全然こちらが意識していない、こちらの受け手次第で、神聖さを感じることができるのだなあって、この作品をみて、皆さんのお話をきいて、考えさせられた。

 作品解説
一見、銀河や星を写した天体写真のようであるが、いきなり種を明かしてしまうと、実はこのイメージはりんごの表面である。
 ある時、作者はりんごの表面の模様が宇宙に似ていることを発見し、作品化を思い立つ。無数のりんごから、宇宙に見える個体を慎重に選び、デジタルカメラで撮影。撮影データはモノクロに変換し、ほんの少しコントラストを調整する以外の加工は行わない。修正によってりんごを宇宙のイメージに近付けることは容易だが、元のりんごそのままの姿であることが作品の肝となる。 画面の端に少し現れている曲線が作品を読み解くヒントとなっているが、ほとんどの鑑賞者はりんごだとは気が付かないという。だからこそ、「宇宙」と「りんご」という、あまりにかけ離れたイメージが結びついた時、脳が喜び、そこに笑いや感動が生まれる。固定観念にしばられて、平板になってしまいがちな私たちの生活に、造形の楽しさと発見の喜びとを教えてくれるアート作品である。
りんごの天体観測 鈴木 康広 形forme(日本文教出版) 3 16 号 P 10 -11写真・サイズ可変

 日文から「形forme」が送られてきて、何気なくページをめくっていて眼に留まった作品です。これは対話型鑑賞に使えるなと即座に思いました。愛媛県美術館が対話型鑑賞の他教科応用の研究を進めていて、学芸員の鈴木さんから理科に応用できる作品はないかと相談されたときに、一も二もなくこの作品を推薦しました。使用にあたっては、日文経由でご本人にも許可を得ています。
 今回は作品解説、まあ、この解説も日文の誰かが鈴木氏への取材をもとに書いたものなので、その人の一つの解釈であると捉えますが、それを超えて、神なるものの存在とりんご、宇宙を結び付けて考えるに至ったのは、ひとえにシークエンスのなせる業でしょう。
 今回のナビの鈴木さんと私は事前に打ち合わせをして、2作品のテーマを設定しました。コロナ禍にある中、自粛を強いられていた私たちにとって、旅に出ることは希望になりました。「旅」といってもただの旅じゃない旅をコンセプトに四国は愛媛ゆかりの修行旅「石鎚山」を1作品目に、そして、今後、人類の夢が実現するかもしれない宇宙旅行を彷彿とさせる「りんごの天体観測」を2作品目に配して挑むことにしました。共通のテーマは「旅」だったはずなのですが、ナビゲーターの矮小な思惑をはるかに超えて、話は神の域にまで達しました。これも鑑賞者の作品を読み解く力と作品の持つ力に負うところが大きいです。
 また、今回は情報提供のタイミングを自分の中の課題としていました。「写真であること」「りんごであること」をどのタイミングで鑑賞者に提供するとよいのか?私は普段はあまり情報提供をしないのですが、今回は裏テーマもあるし、写真と気付かれた時に、何を写したものかは「あれでもない」「これでもない」という堂々巡りにならないためにも必要だと考えていたからです。しかし、その時がいつなのか?その時を図るのが今回の私の誰にも言わなかったけれど、大きなチャレンジでした。そのことについては、皆さんのコメントから概ね好意的な評価言をいただいたようなので、チャレンジは成功したのかな?と思います。情報を出すタイミングを図りながらナビをするという姿勢も大事なスキルかな?と今日の鑑賞会で感じました。
 最後に鑑賞者の皆様の発言の中にはもっと突っ込んで訊きたいこともあったのですが、30分という尺と裏テーマについて考えていただくことを想定した際、やや確認に欠け、性急になった感は否めませんが、当初の目的以上の成果を得ることができた鑑賞会になりました。シークエンスを組んで鑑賞をしようと持ち掛けてくださった鈴木さんに感謝します。
 とても濃密で深い鑑賞会になりました。ありがとうございました。
 なお、レポートをまとめる際に、動画が大変に有効でした。ホストのみっし~~さんや進行役のまっつんさん、メインホストのちょなんさんに深く感謝します。
最後に「みんなで開こうオンラインACOP!!」バンザイ!!再会!!!
コメント
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