みるみるの会の金谷です。平成29年8月3、4日に島根県隠岐の島町(隠岐島文化会館)と海士町(中央公民館)で開催された「夏季研修会 IN 隠岐」に参加してきました。
<はじめに>
来年(平成30年)は、隠岐の島町で島根造形教育研究大会隠岐大会が開催されます。この研究大会に向けて、隠岐郡の先生方や小中学生、保護者、地域の方々の造形教育に対する啓発研修とすることを目的に、昨年度に引き続き隠岐にて夏季研修を開催しました。
「夏季研修会 IN 隠岐」
主催:隠岐郡教育研究会造形部会、後援:島根県造形教育研究会
協力:ART COMMUNICATION IN SHIMANEみるみるの会
8月3日(木) 島前・島後の2会場で開催
<海士町中央公民館>14:00~16:30
(1) ワークショップ(子ども対象)「『三葉虫の化石』にさわって みよう・考えよう・話そう・きこう」
講師:三重県総合博物館 館長 大野照文
<隠岐島文化会館>13:20~17:00
(1) 講義 「みる」ことから始まる「発見」そして「コミュニケーション」
講師:京都造形芸術大学 教授 福のり子
(2) ワークショップ(教員対象)「アートカードで鑑賞授業!」
担当:みるみるの会 金谷直美
8月4日(金)10:00~12:00、13:30~16:00
<海士町中央公民館>
(1)講義 「-生き延びるために-」
講師:京都造形芸術大学 教授 福のり子
(2)ワークショップ(子ども対象)「アートカードであそぼう!」
担当:みるみるの会 金谷直美 (※(1)講義と平行して開催)
(3) ワークショップ(子ども対象)「夏休み宿題お助け大作戦!」
担当:みるみるの会 春日美由紀
今回は、8月3日隠岐島文化会館での教員対象ワークショップ「アートカードで鑑賞授業!」の様子を参加者のみなさんの感想とともにレポートします。
※以下の本文中で「」で括られた下線付の箇所は、参加された方のご感想からの引用です。
教員対象ワークショップ 「アートカードで鑑賞授業!」
参加者:15名(小学校教員11名、中学校教員1名、大学職員1名、教育行政職員2名)
今年度、島根県造形教育研究会から県内の全小中学校に、「『じろじろみてね。』しまね美術鑑賞学習セット(ワークシート&アートカード:2012年発行)」の「しまねアートカード」が追加配布されました。
この「しまねアートカード」は、島根県立美術館と島根県立石見美術館の収蔵作品の中から選ばれた、代表的な64作品で作成されています。アートカードを使った様々なゲームを通して、参加者同士がよくみて、考え、対話することで、鑑賞の能力をはじめとする「学力」を伸ばすことができます。そんな島根県のお宝である「しまねアートカード」をより多くの先生方に知っていただき、2学期からの授業に活かしていただくことをねらいとして、このワークショップを開催しました。
60分の時間の中で、三つのゲーム(ワーク)を体験していただきました。
① 3ヒントゲーム
ゲームの「親」が言う3つのヒントを手掛かりに、グループ内で対話しカードを探し当てる活動。形や色などの視点を手がかりにしながら、作品鑑賞を楽しむ。今回は「色」「形」そして「オノマトペ」(作品を擬音で表現する)の3ヒント。
学級、学年の実態に応じて、ヒントの数や内容を変更させるとよい(「じろじろみてね。」のワークシートでは「5つの言葉」として紹介されている)。
② からだでみてね!
「親」が体全体を使って表現するポーズや動きをヒントに、グループ内で対話しカードを探し当てる活動。
③ あなたは絵本作家!(「じろじろみてね。」のワークシートを使用)
64枚のカードの中から、主人公1枚、脇役を2枚選ぶ。役の性格や選んだ理由をグループで対話しながら考え、簡単な物語にまとめる。全体で、発表して共有する。
参加された先生方は、和気あいあいとした雰囲気の中でアートカードの作品を隅から隅までよくみて、考えて、話して、お互いに意見をききあっておられました。①②のヒントをもとにカードを探し当てるゲームでは、「親」のデモンストレーションをした私をはるかに超えるヒントを次々と出され、先生方の語彙の豊かさや形に対しての視点の面白さに私は完敗でした。きっと子どもたちとも、楽しく豊かな授業をされるのだろうな、と隠岐の子どもたちがうらやましくなりました。
①②のゲームで、64枚のカードに親しんでいただいた後に物語作りをしました。
「アートカードの物語作りは、とても盛り上がりそうでぜひやってみたいです」
「教科書会社のものでは一度やったことがあるのですが、県のものでもやると楽しいですね。『絵本作家』はおもしろかったです」
グループによっては、配役でかなり悩んだグループもあれば、もう一つ物語ができそうなグループもありました。子どもたちとこのワークをする時にも、時間設定や声かけの工夫が必要だと思います。
「あなたは絵本作家!」のワークシートの中には、配役に対して「どこを見て、そう考えたの?」という問いがあり、作品のどこからそう思ったのか、作品の中に根拠を求める仕掛けがあります。楽しく盛り上がりながらも、根拠をもとに対話し、合意形成を図っていくことのできるワークです。
また、今回の講演&ワークショップを通じて、「鑑賞」の捉え方も少しかわったようです。
「今まで図工で“鑑賞”を軽んじていました。とても反省しています。とても面白くて奥が深い活動だとわかりました」
「鑑賞というと自分たちの作品を見て、感想を言い合うという活動しかしてこなかったので、有名な作品を見ながら思ったことを言い合う活動もとても面白いと思いました。アートカードの存在も初めて知りました」
「鑑賞の時間を充実したものにしていくやり方を知りました」
「鑑賞会をすることが楽しみになってくる」
「鑑賞の授業はどうしても説明をしてしまったり、知識が要るのかなあと苦手意識をもっていたのですが、生徒主体で考えさせたり楽しんでできることがわかりました」
「アートカードは、どの学年においても活用することができ、ぜひ2学期以降活用していきたいと思いました。またもう少し、鑑賞に力を入れていきたいなと思います」
対話型鑑賞の手法やアートカードの活用は、図工の時間だけではないようです。
「図工の指導(授業)に限らず、どの教科においてもこの対話型鑑賞法は活用できるということがわかった」
「カードを使って、様々なゲームもできるとわかったため、図工の時間だけでなく、朝の活動など、色々な場面でもとりいれていきたいと思った」
また、対話を通して異なる意見をききあうことでの、気づきもあったようです。
「鑑賞の授業はたいくつなのではないか?どうすればおもしろくなるんだろう?と思っていましたが、いろんな人たちのいろんな異なる意見をきくことで、新しい発見やちがった見方がみつかり、自然とおもしろいものになることがわかりました」
今回、「しまねアートカード」をより多くの先生方に知っていただき、2学期からの授業に活かしていただくことをねらい、このワークショップを開催しました。参加された先生方の感想からも伝わってくるように、当初のねらい以上に鑑賞の面白さ奥深さに触れられていたように思います。今回のワークショップをきっかけとして、今後、子どもたちとともに「主体的・対話的で深い学び」の世界を楽しんでいただければとてもうれしいです。
みるみるの会ではこの夏、出雲文化伝承館で対話型鑑賞会を行っています。
次回、9月2日(土)11:00~(30~40分程度)が、本展覧会での最終回となります。
郷土(出雲)の作家さんの作品を対話しながら深く味わってみませんか?
出雲文化伝承館でお待ちしております。
<はじめに>
来年(平成30年)は、隠岐の島町で島根造形教育研究大会隠岐大会が開催されます。この研究大会に向けて、隠岐郡の先生方や小中学生、保護者、地域の方々の造形教育に対する啓発研修とすることを目的に、昨年度に引き続き隠岐にて夏季研修を開催しました。
「夏季研修会 IN 隠岐」
主催:隠岐郡教育研究会造形部会、後援:島根県造形教育研究会
協力:ART COMMUNICATION IN SHIMANEみるみるの会
8月3日(木) 島前・島後の2会場で開催
<海士町中央公民館>14:00~16:30
(1) ワークショップ(子ども対象)「『三葉虫の化石』にさわって みよう・考えよう・話そう・きこう」
講師:三重県総合博物館 館長 大野照文
<隠岐島文化会館>13:20~17:00
(1) 講義 「みる」ことから始まる「発見」そして「コミュニケーション」
講師:京都造形芸術大学 教授 福のり子
(2) ワークショップ(教員対象)「アートカードで鑑賞授業!」
担当:みるみるの会 金谷直美
8月4日(金)10:00~12:00、13:30~16:00
<海士町中央公民館>
(1)講義 「-生き延びるために-」
講師:京都造形芸術大学 教授 福のり子
(2)ワークショップ(子ども対象)「アートカードであそぼう!」
担当:みるみるの会 金谷直美 (※(1)講義と平行して開催)
(3) ワークショップ(子ども対象)「夏休み宿題お助け大作戦!」
担当:みるみるの会 春日美由紀
今回は、8月3日隠岐島文化会館での教員対象ワークショップ「アートカードで鑑賞授業!」の様子を参加者のみなさんの感想とともにレポートします。
※以下の本文中で「」で括られた下線付の箇所は、参加された方のご感想からの引用です。
教員対象ワークショップ 「アートカードで鑑賞授業!」
参加者:15名(小学校教員11名、中学校教員1名、大学職員1名、教育行政職員2名)
今年度、島根県造形教育研究会から県内の全小中学校に、「『じろじろみてね。』しまね美術鑑賞学習セット(ワークシート&アートカード:2012年発行)」の「しまねアートカード」が追加配布されました。
この「しまねアートカード」は、島根県立美術館と島根県立石見美術館の収蔵作品の中から選ばれた、代表的な64作品で作成されています。アートカードを使った様々なゲームを通して、参加者同士がよくみて、考え、対話することで、鑑賞の能力をはじめとする「学力」を伸ばすことができます。そんな島根県のお宝である「しまねアートカード」をより多くの先生方に知っていただき、2学期からの授業に活かしていただくことをねらいとして、このワークショップを開催しました。
60分の時間の中で、三つのゲーム(ワーク)を体験していただきました。
① 3ヒントゲーム
ゲームの「親」が言う3つのヒントを手掛かりに、グループ内で対話しカードを探し当てる活動。形や色などの視点を手がかりにしながら、作品鑑賞を楽しむ。今回は「色」「形」そして「オノマトペ」(作品を擬音で表現する)の3ヒント。
学級、学年の実態に応じて、ヒントの数や内容を変更させるとよい(「じろじろみてね。」のワークシートでは「5つの言葉」として紹介されている)。
② からだでみてね!
「親」が体全体を使って表現するポーズや動きをヒントに、グループ内で対話しカードを探し当てる活動。
③ あなたは絵本作家!(「じろじろみてね。」のワークシートを使用)
64枚のカードの中から、主人公1枚、脇役を2枚選ぶ。役の性格や選んだ理由をグループで対話しながら考え、簡単な物語にまとめる。全体で、発表して共有する。
参加された先生方は、和気あいあいとした雰囲気の中でアートカードの作品を隅から隅までよくみて、考えて、話して、お互いに意見をききあっておられました。①②のヒントをもとにカードを探し当てるゲームでは、「親」のデモンストレーションをした私をはるかに超えるヒントを次々と出され、先生方の語彙の豊かさや形に対しての視点の面白さに私は完敗でした。きっと子どもたちとも、楽しく豊かな授業をされるのだろうな、と隠岐の子どもたちがうらやましくなりました。
①②のゲームで、64枚のカードに親しんでいただいた後に物語作りをしました。
「アートカードの物語作りは、とても盛り上がりそうでぜひやってみたいです」
「教科書会社のものでは一度やったことがあるのですが、県のものでもやると楽しいですね。『絵本作家』はおもしろかったです」
グループによっては、配役でかなり悩んだグループもあれば、もう一つ物語ができそうなグループもありました。子どもたちとこのワークをする時にも、時間設定や声かけの工夫が必要だと思います。
「あなたは絵本作家!」のワークシートの中には、配役に対して「どこを見て、そう考えたの?」という問いがあり、作品のどこからそう思ったのか、作品の中に根拠を求める仕掛けがあります。楽しく盛り上がりながらも、根拠をもとに対話し、合意形成を図っていくことのできるワークです。
また、今回の講演&ワークショップを通じて、「鑑賞」の捉え方も少しかわったようです。
「今まで図工で“鑑賞”を軽んじていました。とても反省しています。とても面白くて奥が深い活動だとわかりました」
「鑑賞というと自分たちの作品を見て、感想を言い合うという活動しかしてこなかったので、有名な作品を見ながら思ったことを言い合う活動もとても面白いと思いました。アートカードの存在も初めて知りました」
「鑑賞の時間を充実したものにしていくやり方を知りました」
「鑑賞会をすることが楽しみになってくる」
「鑑賞の授業はどうしても説明をしてしまったり、知識が要るのかなあと苦手意識をもっていたのですが、生徒主体で考えさせたり楽しんでできることがわかりました」
「アートカードは、どの学年においても活用することができ、ぜひ2学期以降活用していきたいと思いました。またもう少し、鑑賞に力を入れていきたいなと思います」
対話型鑑賞の手法やアートカードの活用は、図工の時間だけではないようです。
「図工の指導(授業)に限らず、どの教科においてもこの対話型鑑賞法は活用できるということがわかった」
「カードを使って、様々なゲームもできるとわかったため、図工の時間だけでなく、朝の活動など、色々な場面でもとりいれていきたいと思った」
また、対話を通して異なる意見をききあうことでの、気づきもあったようです。
「鑑賞の授業はたいくつなのではないか?どうすればおもしろくなるんだろう?と思っていましたが、いろんな人たちのいろんな異なる意見をきくことで、新しい発見やちがった見方がみつかり、自然とおもしろいものになることがわかりました」
今回、「しまねアートカード」をより多くの先生方に知っていただき、2学期からの授業に活かしていただくことをねらい、このワークショップを開催しました。参加された先生方の感想からも伝わってくるように、当初のねらい以上に鑑賞の面白さ奥深さに触れられていたように思います。今回のワークショップをきっかけとして、今後、子どもたちとともに「主体的・対話的で深い学び」の世界を楽しんでいただければとてもうれしいです。
みるみるの会ではこの夏、出雲文化伝承館で対話型鑑賞会を行っています。
次回、9月2日(土)11:00~(30~40分程度)が、本展覧会での最終回となります。
郷土(出雲)の作家さんの作品を対話しながら深く味わってみませんか?
出雲文化伝承館でお待ちしております。