みるみるの会主催で安来市教育研究会と出雲市教育研究会併催の夏季研修会を行いました。
初日の17日午前中は「対話型鑑賞」のナビゲーター体験です。対話型鑑賞を学校の授業でおこなおうと思ったら、教師がナビゲーターを務めなければなりません。しかし、ナビゲーターの養成の場は限られています。そこで、今回、わずかに小中学校4名の先生方にしかその機会を与えることができませんでしたが、少しずつでも自信をつけて実践してくださる先生方が増えていくことを願って、最初にこの研修を組みました。
やり方は、2作品を取り上げ、本物をまずコレクション室でじっくりと鑑賞してもらいました。その後、小学校チームと中学校チームに分かれて、ゴッホのひまわりを使って「あなたはどのひまわり?」というWSで、自己紹介をしました。
自己紹介後、みるみる会員の金谷が小学校、房野が中学校のチームでモデルナビゲートを10分程度行い、その後、「我こそは!」という方にナビゲーターをやってもらいました。
その様子が、以下に示してあります。みるみる会員の中嶋が記録を取りました。
H27夏季研修会(出雲市教育委員会・安来市教育委員会 併催)
2015,8,17(月)島根県立美術館
●1日目
1,対話型鑑賞
①コレクション室で本物をみよう!
②自己紹介タイム
「あなたはどのひまわり?」(小学校の先生方の様子)ナビ:金谷(以下 金)
金:今日やってみたいと思われる方は、いらっしゃいますか?では、このあと自己紹介をして、ほぐれたところでもう一回ききます。今日はこういう感じでやりますが、質問はありますか?
Sキャプションは見てもいいんですか。
金:はい。みてもかまいません。見せないでやるというやり方もありますが、そういう情報の中から考えていきましょう。
金:私は浜田市の弥栄小の金谷です。どきどきしています。私はみなさんのことがよく分からないので、自己紹介をしていきたいと思います。この作品を通して自己紹介をしたいと思います。これ、みたことありますか?このひまわりの中で、あなたはどのひまわりかという感じでやってもらいたいと思います。
S難しいな・・・(つぶやき)
金:まずは、じっくりみてください。(間)では私がちょっとやってみます。私は⑤番です。なぜかというと、真ん中にいるのではなく、外れたところできょろきょろしている。センターではなくサブでやっていきたいという私です。
では,はしの方ジャンケン・・・
S本当は②と言いたいところですが、⑬です、気持ちは真ん中をむいていたいけど・・・そろそろ終盤にさしかかってきて、もう終わりかな~という花なので(笑)
S8です。前を向きたくない
S3です。ちょっと一輪だけ横をむいていて、みんなと同じことをしたくないという気持ちが出ている
S10です。早く帰りたいなといつもおもっているので、抜け出しそうな10
S5、一番ひまわりらしいから、真ん中を向けない心の闇がでている
Sこの中にはないな、まだつぼみ
S6、一番態度がでかいし、
Sひまわりがとても好き。好きなのは2だけど、自分は真ん中のタイプではないので5にします
S13周りの人の動きも気になる、よそを向く勇気もない。上の方から全体をみている
S7、マイペースで突進していく感じ。ちなみに・・・(ひまわりの薀蓄を傾ける)
S私も7です。仕事でへこんでたんだけど、今は復活しつつある、むっくり起き上がる感じで。
S5を選びました。自分自身はがんばっているんだけど、押しつけたくない、わかってほしいので、横を向いている
S1,真ん中が目に見えて、周りをきょろきょろ。みんなそんなに上手に言ってるの?と言っているよう。
Sみんなが選んだ 5で。あの位置に見えるからには、見えないところで、まっすぐ伸びているのではないかと思うので、そういう自分でありたいなと思って。
③講義室で対話型鑑賞に挑戦!
小学校と中学校に分かれて2作品ずつ実践。
(小学校は金谷さん、中学校は房野さんがデモンストレーションを行う)
金:こういう感じで、これも対話型鑑賞なんですよね。普段の生活の中でやっていることでもあるんです。では、今日ナビをやってみたい人・・・・
金:今から、小学生になったつもりで、どんどん言ってもらいたいと思います。話したり、聴いたり、考えたり、これをぐるぐるしながら作品を見ていきましょう。
Sこれを見たときに松の木が目に入って、この人は松がかきたかったのかな
金:かいた人の気持ちも考えたんですね
Sいや、そういうわけじゃないけど
金:どこに松がありますか
Sあれ松じゃないかいね
金:いえいえ、どこにありますか。教えてください。
Sここ。
金:うなずいている方が多いですね、みなさんも松に気付きましたか
S松の幹がごつごつしていて・・・松のとげとげがやわらかそう(細かく松の描写を説明)
金:ほかにも気付いたことはありますか、発見もいいよ。
S発見じゃないけどいいですか。どうしておじいさんがここにも、あそこにも、ひそひそ話をしているんだろう?なんか楽しそうだし。
S私は48人数えました。
S私は50人見つけた。キャプションには41人とかいてあった。重要な人とそうでない人がいるのかな。
金:私は65人数えたんです。(おー!!)さっきも言われたけど。重要な人とそうでない人もいるのかも。それから、たのしそうだという方もおられましたね。この人達はなにをしているんだろう?
S私は視力が悪いので、いわれないとわからないところもあるけど、風景の中にすーっと溶け込んでいるような人もいる。
金:はあ、すーっと溶け込んでいるような・・・あ、ここで時間がどんどんなくなっていくので、交替しましょう。
○交替
Tええーっと・・・
Sはい。おじいさんがお地蔵さんにも見える。お盆のあとだからかなと。
S目がすーっとなっていて、怒っているんでもなく、楽しそう。
T目がずーっとなっていて
Sさっき赤を見ろという指摘があったけど・・・赤のところで、琴を弾いていて、それを楽しんでいる。
T赤が目立ちますね。
S赤が意味しているものがあるのかな。最初は水墨画にしかみえなかったけど、いろんな色がみえてきてすごい。
Tそうですね、水墨画のようですが、たくさん色がありますね。
Sキャプションには憧れをもってかいたとかいてあって、・・・
Tあこがれ、そうですね・・・
S人に注目した時に、このおじさんがよっぱらっているようで、こんなところでお酒飲んだら楽しそうだなと思いました。
S絵が先なのか、字が先なのか。字もとてもきれいにはんこのように書いてあって、私はそこにも憧れを感じました。
金谷:ではそろそろ時間なので、最後に何か言いたいことがないか訊いてもらって。
Tあ、はい、じゃあ。
Sあの字はなんてかいてあるのかな。
Tあ、なんて書いてあるのかな。
Sあ、言っていいのかな、王羲之とか書いてあって、書家の間で有名な人で。そういう意味で、憧れなのかなと。
○振り返り
金:はい、それではありがとうございました。今から振り返りをしたいと思いますが、最初に、ナビをやってもらった方、お願いします。
永瀬さん:初めてで、なんとか真似してやってみた。やったら意外と楽しくて、みなさんの意見を聞くのはたのしかった。困ったのは、つなぐのが難しかった。
金:初めてとのことでしたが、聞いて,つなげて、自分の意見も付け加えてやっておられてすばらしかったです。ほかにはどうですか?
S:私もつなぐのが難しい。どうやっておられますか?
金:自分も課題だが、つなぐことを意識していると、聴けなくなる。自分もまず、聴きなさいと言われる。
春:まず聴いてください。子どもは色々言いますが、よく聴いて、「あなたが一番言いたいことはこれなのね」とその言葉をつないでください。そうすると、子ども良く聴くようになる、子どもの話し方も変わってくる。
S:作者の意図がある。自由にみてもいいと思うけど、作者の意図にせまるような見方もする必要があるのでは?
春:一回でそこまで狙うのは難しい。一年で5回くらいやっていくと、だんだんと子どもが作品を見ていく中で気付けるようになる。読み取れるようになる。
金:今日は、前に出て、指し示すようなことをしていましたが、最初はそれでいいですが、右や左などの言葉で伝えられるようになるとよい。最初は作品と仲良くなるように。でも美術館ではね。とマナーを伝えることも、鑑賞の大事なことだと思ってやっている。
2回目
金:後半戦はこの作品でやってみようと思いますが、ナビやりたい人おられますか?
金:二つ目の作品はこちらです。まずじっくりみてみましょうか。じゃあ、この作品をみて気付かれたこと、見つけられたこと、自分で考えられたことなど、どうぞ。
S:いいとこの子やなと思いました。
金:それどこからそう思ったの?
S:着ている服やはいている靴、レースの感じリボンが高価なもののような感じがするので
金:ほかに 何か。
S:最初見たとき笑いました。人形が投げ捨ててあったから。最初人形で遊んで、飽きちゃったからやめて、今からこれで遊ぶんだなと感じて。人形がなかったら、違う絵に見える。
金:人形が投げ捨ててあったから笑ったんですね。
S人形があるから生活の一部のような絵になってる。
S:子どもの手のふっくらした感じが好きで、いいあなと思って顔を見たら、「みらんでよ」という顔で、そのギャップがおもしろかった。
金:
S:レースや髪の毛の描き方が繊細で、その表情が・・・
金:描かれ方と表情のギャップに魅力があると言うことですかね。
S:女の子の表情から、不満とか悲しみとか混乱とかそういう感情がすごくでていて、「私はどうすればいいのよ!」という叫びが聞こえてきそう。
金:持っているものや表情からネガティブなものがつたわってくるんですね。他に、感情なので、自分はこうだよ、自分はこう思うというのがあったら
S:付け足しなんですけど、背景の色の感じが女の子の感情を伝えているようだ。
ここで交替
T;どうでしょうか?
S:
T:
S:フラフープは外で遊ぶもの。これは室内なので、外に出たいという不満。
T:この不満そうな表情の理由を言われたんですけど、他に理由を感じられますか?
S:いつも独りで遊んでいるのかな
T:
S:写真のように見えました。
T:今まで、なんとなく似たような意見が多かった中で、写真だと思ったという意見が出ました。
S:あの持っているフラフープはまっすぐにしか進まないのでは?表面が平らで・・・・
T:つまりは写真のようだということですね。
S:私も写真のように見えて・・・
T:私も、ここのところがすごくリアルに見えて、でもよく見たら白い絵の具の塊で、驚いたのですが。今、女の子の不満そうな表情と、リアルさと意見がでていますが、他に何か。
S:
T:いろんなことがでるんですけども、やっぱり一番印象に残るのは、この表情なんですよね。
S:今、フリルとかいろんなものを見た中で、もう一度この絵を見ると、このフリルのきれいさとかが、表情をより強調させている。この少女のやるせなさとか。
T:服やフリルや手の感じがこの少女の表情を強調しているんですね。
S:顔をかくしてみると、からだつきの幼さに比べて、顔は大人びている。
T:はあ、隠してみるという見方がでましたね。
S:この作者は上から見下ろしている。
T:
S:その話しを聞いて思ったのは、大人からみた子どもというか、子どもとしては、まだ遊びたいのに、これからお出かけだからちゃんとしなさいよといわれているような。想像ですけどね。
T:いろんな想像ができますね。
S:さっき、光の話しがでましたが、そういえば、この光はどこからあたっているんだろうと・・・
T:よくみましたねぇ。
はい、じゃあ、たくさん意見がでましたね。これで終わりたいと思います。
○振り返り
ナビの感想
うまくまとめることはできませんでしたが、困っているとだれかが助けてくれるという感じで、どうしようというのはなかった。ただ、同じ話がまた出てきたり、全然関係のないところにぽんと飛んだりすることは、まああるかなと、思いました。
S:正反対の意見が出た時、どうすれば?
金:ナビは中立な立場であること。正反対の意見が出た時は、その理由を聞くことが大事。それを聞くことでより深い話し合いができると思う。そしてナビも鑑賞者の一人である。情報をもって、状況に応じて出すことをするが、ナビがトップではない。
最初に落としたが、この対話型鑑賞のルールをきちんと説明することが大事。
S:意見をいっぱい言いたい子もいれば、言いたいけど、手が挙げられない子や、この場に入って来られない子を巻きこむにはどうしたら?
金:自分は、手を挙げてない子に「いってみない?」と振る。また、先生はこう思うけど、どう?賛成の人。反対の人。とういうように挙手させる機会を設けてもいい。意見が言えなかった子は振り返り用紙に書くこともできる。様子を見ながら、声をかけながら。
午前中の研修は以上です。
午後は、この体験を理論的に理解する「ACOPについて」のレクチャーを京都造形芸術大学アートコミュニケーションセンター研究員で講師の北野 諒さんに行っていただきました。
この記録は、明日またUPします。お楽しみに!!