ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

大社幼稚園での実践を報告します

2015-10-30 20:32:02 | 対話型鑑賞


大社幼稚園 年長組 担任の先生の振り返りから(数字は評価を表す。4⇒3⇒2⇒1の順。4が上位評価)

A)園児はしっかり絵を見ることができていた 3
B)園児は絵を見てしっかり考えることができていた 3
C)園児は自分の意見を言うことができていた 3
D)園児は友だちの意見をしっかり聞くことができていた 3
E)園児は友だちの意見を聞いて自分の考えをより深めることができていた 3
F)このような鑑賞をまたやらせたい 4

〇絵画を静かに見て、自分の思ったこと感じたことを言う経験が初めてだったので、最初は少し緊張していた。
〇徐々に、自分の意見を素直に言うことができるようになった。
〇意見を言う時に、静かに手を挙げるという経験はなかったが、時間がたつにしたがって、手を挙げ順番に言うこと、待つこと、人の話を聞くことができるようになった。
〇いつもあまり発言しない子が、積極的に発言していたり、いつもなら活発に発言している子が考え込んでいる姿を見たりするなど、いつもとは違う子どもの姿が見られた。
〇一つの絵から、各々違う見方、考え方があることがわかり、共感したり、「なるほど」と他の友達の考えを受け入れたりすることができたと思う。
〇意見を言うには勇気が必要だが幼少から素直な気持ちをありのままに言えることは、絵画鑑賞に限らず、人間力、社会性を育むのに大切で、集団思考の高まりにもつながると思う。

 いつも園児に接しておられる担任の先生からの園児の様子についてのレポートはこれからの取組の参考になる貴重なものとなりました。3回は継続して実践したいと思っているので、次回は年明けに2作目、3作目とみていきたいと思います。

 また、校区内の他園との実践も実現することになりましたので、そちらの様子もまたお知らせしたいと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

愛媛県美術館で島根の実践報告を行いました!!

2015-10-25 15:43:29 | 対話型鑑賞


こんにちは、みるみるの金谷です。10月18日に、愛媛県美術館で行われた「第5回教員対象ファシリテータートレーニングプログラム開発会議」で、春日さんと二人で実践報告をしてきました。

愛媛県美術館会議室は眼前に松山城をみることの出来る絶好のロケーションとなっています!!美しい光景を眺めながら美術鑑賞について語り合うなんてなんて素敵なのでしょう!!

では、報告です!!

 「島根の実践から学ぶ」ということで、春日さんは図工・美術での鑑賞の実践と、みるみるの会について。私は、小学校3・4年生の社会科(地図を使った学習)での実践について発表してきました。

 関係者のみなさん、お世話になりました。ありがとうございます。

 さて、はじめに実践報告の内容から。

実践報告1(対話型鑑賞の実践から 春日)
・幼稚園から大学生まで、どの年代でも、対話型鑑賞をすることができる(実践済み!)。
・みる作品を、(ステップを踏みながら)レベルアップしていくことで、子どもたちのみるレベルもあがっていく(教育的効果のある作品を、経年的に選び実践することが大切)。
・根拠を作品に求めながらみることで、作品の持つ主題に迫ることができる。
・まずは、とにかくやってみる!実践することが大事!

実践報告2(小学校社会科「わたしのまち みんなのまち」の実践から 金谷)
・T2として入っていた授業を、対話型鑑賞の切り口から報告(参加者に小学校3年生になっていただき、授業型式ですすめた)。
・学校のまわりにあるものを絵地図で表すよさを確認後、絵地図と地図記号を使った地図を比較し、記号のよさや便利さに気づく(ビジュアルからの読み取りをとおして、体験と知識をつなげていく)。
・地図をみて気づいたことを、話し合う(みる・考える・話す・きく)なかで、土地利用や交通、その場所の歴史(作られ方)についても自分たちの力でみつけることができる。
・子ども達はこの様な学習を通して、教えられる存在から、主体的な学び手へとなりつつある。
・教師が意識を少し変え、学びのしかけ作りをすることで、子どもはどんどん変わっていく。

実践報告3(みるみるについて 春日)
・みるみるの会の結成理由や、今後の課題(会員のスキルアップ、島根県東部の会員を増やすこと!等)。
・関係機関(美術館、大学等)との連携。
・みるみるのてっぱん作品の紹介
中1:ゴッホ「椅子」「古靴」、草光信成「四人の子等」
中2:ベン・シャーン「解放」、雪舟「慧可断ぴ図」
中3:「カラカラ帝」、松本峻介「立てる像」、岸田劉生「道路と土手と塀(切通之写生)」、東山魁夷「道」

 実践報告に続く、質疑応答の時間では、小学校での実践についてのご意見やご質問がどんどん出されました。

・(金谷が発表の中で、「みんなで地図をみて、話し合ってみつけたことが、実は教科書の○ページに載っているんだよ。みんなって、すごくない?」と言っていたことから)せっかく話しあっても、答えが教科書に載っていたら、子どもはガッカリするのではないか?という貴重なご意見を頂きました。このご意見について、発表者と質問者だけが応答するのではなく、フロアからもどんどん意見が出て議論が白熱し、とても濃い時間となりました!ご意見の一部を紹介します。
 ・話し合うという、プロセスが大切。
 ・話し合うことで、ねらいとしていた内容よりも深い意見にたどり着くこともある。
・話し合うよりも、ポイントになることを教えてもらった方が効率的と思う子どももいるのでは。
 ・「教科書に載っている」という価値があることを、自分たちの力でつかむことができたら、やはりうれしいと思う。自信になると思う。
・ガッカリしてしまう子どもがいれば、これをテーマに、ガッカリしてしまうことの背景を、話し合ってはどうか?日本の教育のしくみ、受験制度にもかかわってくるものが背景としてあるかも。学ぶことの価値につながる背景があるのでは?

・教えたい内容まで、行き着かなかったら?
注目してほしいところを焦点化したり、ヒントを出したりする。
一時間の授業で押さえたい所、ねらいをもって授業するが、臨機応変なところもある。

などなど載せきれませんが、充実した質疑応答時間となりました。

続いて、グループワークに参加しました。「地域に拡げるには」というお題について5人のグループで話し合いながら、付箋や表を使って効果の大きさや容易さ・難しさを意識しながらまとめていきました。その後、グループ毎に容易にできそうなことを中心に発表をしました。
・高齢者施設で対話型鑑賞を行ってみる(実際に実践している方もあり、好評だったとのこと)。
・公民館や児童館で対話型鑑賞の実践をしてみる。
・博物館のワークショップ等でお客さんと話す時、どこからそう思ったかを意識して会話する。
などなど、学校現場以外のところで、また様々な年齢の方々と一緒に、対話型鑑賞の実践や、対話型鑑賞の手法で学びを深めることができることに気づかされました。地域に拡げる第1歩として、私も自分ができること(校内掲示にちょっと工夫をする、参観日に、保護者さんを巻き込んで授業する等)から始めてみようと思います。

今回、この会に参加させてもらったことで、様々な職種の方々(学校関係者、博物館、美術館、企業)の思いや、取組みについて知ることができました。また、実践発表を通して、同僚の授業の素晴らしさ(ねらいの焦点化はもちろん、仕掛けの豊富さや子どもを惹きつける工夫)を改めて実感しました。対話型鑑賞の手法「みる・考える・話す・きく」という視点で授業を見つめ直すことで、図工・美術以外の教科でも、自分たちで学びとれてうれしい!という、学び手を育てることができると思います。

子どもたちが、「教わる人」から「学ぶ人」へシフトできるよう、私は只今試行錯誤中です。ぜひ、一緒に成長していきましょう。

金谷さん、早速のレポートありがとうございます。

私たちの発表画像がなくてすみません。

この夜に一部の参加の方たちと反省会(懇親会)を設けましたが、京都造形芸術大学の伊准淳教授の評価もまずまずでしたし、ミュージアムエデュケーターの染川さんもおもしろかったと評してくださったので、「もっとできることはなかったか?」という自問自答は継続しつつも、今回は、まず大役を無事に果たすことができたようでほっと一息つけました。愛媛県教委の係長さんも「みるみるの会はみんなフラットな上下関係のない集まりなのですね。それが分かった。」と私と金谷さんとのやりとりから感じられたようで、感心してくださいました。いろんな場面で私たちの会の普段も出ているようです。また、発表の入りでちょっと漫才を入れたのも場の雰囲気を和らげることができたのではないかと思いました。
春日と金谷の愛媛珍道中でした!!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

10月のみるみるの会のレポート第1弾です

2015-10-21 19:36:27 | 対話型鑑賞



10月17日(土)浜田市世界こども美術館 ナビゲーター 春日美由紀
鑑賞作品 孔雀鳩(石本 正) PEACE & BIRD(天津 恵)

 今期のコレクション室の作品は小品の展示が多いので、1作品で30分の鑑賞を行うのはやや場が持たないと判断し、2作品を鑑賞することにした。
 2作品鑑賞するとしたら、作品間に何かつながりがある方が深まるので、関連性のある作品を探した。この日もう一人のナビである房野さんが風景作品を選択したので、その作品以外から関連性のある作品を2作品ずつ選んだ。ひとつめは「静物」つながり、ふたつ目は「鳥」つながりで、どちらか迷ったので、参加される方に鑑賞したい方を選んでいただくことにした。
 鑑賞参加者はみるみる会員4名と常連の男性、小学低学年の女の子を伴ったお母さんの7名。最初に「静物」がよいか「鳥」がよいかを尋ねたところ「鳥」に挙手した方が多数だったので「鳥」を鑑賞することにした。作品は画像で確認してほしい。

 最初は石本正氏の「孔雀鳩」から鑑賞した。こちらの作品の方が具象的で描かれているものが分かりやすいので、2作品みる時には、話しやすいと判断したためである。  
2羽の白い鳥が描かれているが「ハト」だとフォルムで分かる。上の1羽はうずくまり下の1羽は立ち、同じ方向を向いている。この動作から上のハトが卵を温めているのではないか。下の一羽がそれを守っているのではないか。という意見が出た。特に下の1羽の方が首の傾げ方やくちばしの方向でやや戦闘的(威嚇的)にみえるという意見が出た。また、尾羽の描線が鋭角的な部分もみられ、今にも羽を広げそうなところからも威嚇するような緊張感が感じられるという意見も出て、目線の先には何か危険なものがいるのではないか、という意見に参加者全員が同意した。まだまだ背景の様子など話し合える要素はたくさんあったが、ここまでで12分を経過していたので、2作品目の天津恵氏の「PEACE & BIRD」に移ることにした。

作品はやや抽象度が高く、鮮やかな色面で構成されている。中央部に向き合うように鳥ではないかと思われる形状のものが描かれている。この作品も始めにじっくりとみていただいた。みた後に「どなたからでも。何からでも。」と声をかけて始めたが、しばらく沈黙が続いた。その時、小学生の女の子が恥ずかしそうに話し始めた。

「真ん中に2羽の鳥がいて、左側のは色が薄くてなんか生きていないみたいだけど、右側の鳥の方がくちばしが下に向いているから動きがあって、生きていると思う。」というちょっと衝撃的な発言に触発されて対話が始まった。幾何学的に分割された面が様々な色で塗られているが、そのことについても「朝と夜」や「山と海」「暖かそうと寒そう」など、対比的な要素を含んでいるのではないかという意見が多く出された。   
また、途中で作品の左端に描かれている2つの半円状のものについての意見を求めたところ、女の子から「太陽と月」という発言も出され、2つの要素が複雑に組み合わされ、「生と死」をも表そうとしているのではないかという意見まで出た。
描かれている要素について多くの意見が出されたが「そこからどう思う」までは辿り着かずに時間切れとなったが、小品でも十分に対話できることを実感することの出来るよい機会になった。

ナビ後の振り返りでは、左端に描かれた半円状のものについて語られていなかったので、そのことについて意見を求めたのはよかったという評価があったが、語られていないものについて、ナビが発言を求めるのは「アリ」だと思った。また、今回この作品を選んだことによって、抽象度の高い作品でどんなトークが行われるのか興味があったが、参加者がみんなしっかりと考えて色や形から様々な読み取りをしていくことができることも分かったので、挑戦した甲斐があったと感じた。今後はナビのスキルを上げるためにも、もっと抽象度の高い作品にチャレンジしていきたいと思う。

RICHな会話で楽しいひと時を過ごさせてくださった鑑賞者の皆様に感謝です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

山下裕二氏の講演会に行ってきました!!

2015-10-04 15:09:34 | 対話型鑑賞


 日本美術に造詣の深い山下裕二氏の講演会が益田のグラントワで開催されました。みるみる会員の房野さん、澄川さん、金谷さんが出かけてお話を聴いたようです。房野さんにレポートをお願いしたところ、早速に届きましたので、お届けします。

10月3日(土) 島根県益田市で、山下裕二氏の講演があり、聞きに行ってきました。実は、この講演、「雪舟サミット」のイベントの一つだったんですね。そうとは知らず、会場のグラントワに足を運ぶと、劇場と美術館の複合施設でもあるこの建物の中庭では、お祭りをやっていて、にぎやかでした。

 「雪舟サミット」とは、あの、水墨画で有名な画聖「雪舟」ゆかりの6自治体(島根県益田市、岡山県総社市、井原市、広島県三原市、山口県山口市、防府市)が共同で「雪舟を活かしたまちづくりをしよう」というもので、もう、15回にもなるそうです。へ~そうだったんだ!

 雪舟の研究者でもあり、幅広く美術界でご活躍の山下氏の話がこんな田舎で聞ける、ということに驚きました。地元ではそのありがたさを知ってか、知らずか、(私の周りでは全く話題になっていませんでしたが)会場の席はかなり埋まっていました。平均年齢はすごく高めでしたけれど・・・。地元はもっと、宣伝したらよかったのにな~!残念!

さて、山下氏のお話は山水長巻を中心に、画像を見ながらのフランクで楽しい内容でした。500年以上前の巻物なのに、かなり保存状態がいいということですが、「16mもあるので、広げるのも大変だったんでしょう」と山下氏は笑いをとっていました。年に一度、山口県の防府に行けばみられるそうです。私はまだ見たことがないので、一生に一度は必見!ということで、いつか肉眼で見てみたいです。

そういえば、以前、みるみる代表の春日さんが山下氏へ「対話型鑑賞に適した日本美術はないだろうか?」という質問をメールしたところ、「恵可断臂図(えかだんびず)」を紹介くださり、その後、みるみる会員で、中学校美術の鑑賞授業に取り入れた、というご縁もあります。 いや、ほんと、この絵は何の情報も与えなくてもすごく盛り上がるんですよ!詳しくは、以前のみるみるブログをご覧くださいね。
また、私が住んでいる益田市は、故、竹下登総理大臣の「ふるさと創生一億円」で、雪舟の「益田兼堯(ますだかねたか)像」
(画像参照http://www.iwami.or.jp/sessyu3/3_sakuhin/sakuhin/sakuhin.htm)を購入し、市のお宝にしています。山下氏は「これも国宝になってもいいのではないか。まあ、でも、雪舟だけでもう6つも国宝があるからなぁ。」なんて、おっしゃっていましたが(*´з`)
この「益田兼堯」のゆかりの地元のお寺「萬福寺」「医光寺」のお庭も実は雪舟の作庭と伝えられています。私たち益田市民は、幼いころから雪舟のことを親しみを込めて「雪舟さん(・・)」と“さん付け”で呼んでおり、山下氏の著書にも確かそのことが触れられていたような・・・・。

ともあれ、山下氏の「雪舟愛」にあふれたお話が聞けて、ハッピーな休日でした。
みなさま、益田においでの際は、雪舟さんゆかりの場所をぜひ訪ねてみてください。

 房野さん、ありがとうございました。最後の方で、「慧可断臂図」の紹介のくだりに触れられていますが、この作品は本当にみるみる会員の中学生対象の対話型鑑賞に欠かせない宝物になりました。今回来県されると言うことで、出かけてお会いしたいところだったのですが、所用で叶わず、残念でした。でも、出身も呉の方なので、中国地方は地元・・・。また、お目にかかれる日まで、会員みんなで「慧可断臂図」の実践を積み重ねたいと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする