ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

ジヴェルニーの食卓

2013-04-26 17:56:39 | 対話型鑑賞
今日は、本の紹介をしたいと思います。その前に、私の読書活動について、少し触れたいと思います。

我が校の校長は読書家です。そして、自分が読み終わった本を私や読書好きの教員の机上に置くという習慣を持っています。お陰で、多くの良書に巡り会うことができます。

そもそもは、今の校長がまだ教諭だった時代に同じ学校に勤務したことがあり、そのときに本について語り合うことがあり、お薦めの本を読ませてもらったことがきっかけです。それは今江智さんの「牧歌」という小説ですが、その本が自分の教職の原点だとおっしゃって、読ませてもらいました。本当によい本で、読みながら涙したことを覚えています。

そして、現任校に赴任されてこられたときに、「牧歌」をもう一度読ませて欲しいとお願いしたことから、読書交流が始まりました。交流と言っても、私が読ませてもらうばっかりなのですけど・・・。

「牧歌」は本当に心温まる小説です。知人が教員に採用されたときに読むように薦めました。教師としての立ち位置が不安になったときには読むといいと思います。

では、本題です。今日紹介したい本は「ジヴェルニーの食卓」です。原田マハさんが書いています。原田マハさんは華麗な経歴の持ち主で、MOMAにもおられたことがあり、芸術への造形の深い方だと、この本を読んで強く感じました。
そして、美術に関心のある方なら、ジヴェルニーと聞くだけで「モネ」を思い受かべると思いますが、その通りです。内容はオムニバスになっていて、マティス、ドガ、セザンヌ、モネが彼らにまつわる方たちの回想と言った形式で描かれています。まさに、文字をして描いたと呼ぶにふさわしい表現です。読み終わった後にその味わい深さが心に染み入るというか、余韻を残すというか、じわじわと温かいものが身体中に広がっていく感じがします。詳しい紹介は避けたいと思います。ぜひ、皆さんに読んで欲しいと思います。美術に、とりわけ「印象派」に興味のおありの方には・・・。

余談ですが、この原田ハマさんのお兄さんも実は小説家で、原田宗典氏です。この宗典氏は、実は私の高校の先輩です。宗典氏は自身の小説(エッセイ?)「17歳だった」で、高校時代のことを面白可笑しく語っておられますが、そこに登場する人物を思い浮かべることができる私は、すっかり彼のファンになってしまいました。その彼の妹だということが分かり、ハマさんも親近感のわく方になりました。私より2歳年下ですので、私の高校時代に同じ岡山の空の下で暮らしていたのかと思うと、本当に近しい方に思え、また、校長がマハさんの本をどんどん机上に置いて行かれるので、ますますハマっています。

そもそもマハというペンネーム(?)自体がゴヤの「マハ」を想起させることから、美術に関わる方だとはお見受けし、作者紹介を読んだところ、ビンゴでしたし、著作にも「まぐだら屋のマリア」という「マグダラのマリア」をもじったタイトルのものもあります。だけど、今回のジヴェルニーは、まさにマハさんの経歴をもってして実現した小説ではないかと思います。美術への深い造詣がなければ書き得ないものと感じました。

どうか、皆さん、読んでみてください。私も、みるみるの会員に薦めようと思います。また、読後感を知らせて頂けるとうれしいです。

では、GWに突入します。よい休日をお過ごしください。
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カラカラ帝で対話型鑑賞実践

2013-04-23 21:40:54 | 対話型鑑賞
カラカラ帝の実践から

3年生の対話型鑑賞の実践レポートをUPすると予告しながら、UPできずにいました。文字おこしをして、様子をつかめてから報告しようと思っていたけれど、録音を聴くこともできずに日々が過ぎて行っています。このままGWに突入してはまずいと思い、生徒のワークシートを読みながら、記憶にあることを綴ってみようと思います。

今回の実践も、情報を機に応じて与えるというやり方で進めました。作品は「カラカラ帝」です。この作品はもちろん実物は彫刻です。その作品を正面からモノクロで捉えた画像を使用しました。今年の3年生はこの対話型鑑賞を1年生の時から回数を重ねてきているので、みせられている作品画像が彫刻であることに結構早くに気づく生徒がいます。
石膏でできた彫刻作品という発言があったので、石膏ではなくて大理石で作られている彫刻作品であるという情報を与えました。
また、作られた時代も、像の様子から、ギリシャ・ローマの時代ではないかという意見が出たので、ローマ時代であることも伝えました。石像がローマ時代に作られたものであるという事実がわかると、3年生ですから、一般常識を駆使してその像についての見解を導き出そうとします。像が造られて残っているくらいだから、有名な人物である。とか、権力を持っていた人であるとか、王様である。といった意見が多く出ます。そうすると目線が上向きであることについて、にらんでいるという意見が、国の将来を思案しているのではないかといった意見に変化していきます。また、どのくらいの年齢かという問いかけには、王になるくらいだから、歳なのではないか?しかし、法令線やしわの深さから、あまり歳には見えないなどという矛盾が生じ、若干の戸惑いの空気が流れます。そこで、その頃のカラカラ帝の年齢を告げると、一同に驚きの声が上がります。そして、さらに、作品に現われていることを読み取ろうとする姿勢が生まれました。

京都造形芸術大学の対話型鑑賞の指導者である福のり子教授は、VTSでは情報は与えないというスタンスで実践を行っているが、時として情報を与えた方が作品に対する読み取りが深まるとおっしゃっていますが、まさにその通りだと、実践を通じて実感します。今回のカラカラ帝の生徒のワークシートもかなり深いところまで読み取れていると記述を読んで思いました。

授業で鑑賞活動を行うのだからねらいに迫る必要があると言われますが、適宜情報を提供しながら進めれば、作品の内包する価値に迫っていけるのではないかと感じました。今後は、同じ作品を情報を提示する方法で進めていったときとそうでないときの比較を通して、情報提示の意味について考えながら実践を進めていきたいと思います。
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みないで作るピーマン

2013-04-17 23:23:12 | 対話型鑑賞
みないで作るピーマン


今日は「みないで作るピーマン」という題材で2年生が彫刻に取り組んだ。私は、彫塑が彫刻というくくりになったのがあまり好きではないのです。彫刻は「彫る」「刻む」行為で「くっつける」という行為を示す言葉が入っていないからです。でも、まあ、塑像で作られた作品も「彫刻作品」と括られるので、致し方はないのではありますが・・・。

そして、今日は、粘土をこねながら、アイマスクで目隠しをした状態で「触覚」を頼りにピーマンを作ったわけです。

モデルになる本物のピーマンをまず、授業前クロッキーで描きました。そして、作る前に5分間ほど、みながら手で触りました。手触りを、視覚と共に記憶させることができれば、手探りで作る際の多少の助けにはなるかな?と考えたためです。

さて、いよいよアイマスクを装着して開始しました。しばらくすると、教室はシンと静まりかえり、机の上に敷いた新聞紙が手を動かすことでこすれるカサカサというわずかな物音しかしなくなります。みんな真剣にモデルのピーマンを触っては、粘土の形を確かめ、物音ひとつたてずに黙々と作ります。

最後に時間が来て、アイマスクを取った瞬間に歓声が上がります。
「マジで?」「何、この形!?」でも、結構うれしそうだったりします。乾燥させてから、作品鑑賞会を行うことにしています。

できあがったピーマンは画像で確認してください。

 さて、明日は2クラス目です。今日の取り組みが口コミで広がっているかもしれません。明日はどんな反応が見られるのか、また、楽しみです。
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新年度に備えた美術室とそこから見える出雲の北山連山

2013-04-14 08:57:22 | 対話型鑑賞
新年度に備えた美術室とそこから見える出雲の北山連山


 新年度が始まりました。美術室を年度末に大掃除したので、掲示物も一新しました。
正面に2段の移動式黒板がありますが、あまりに遠くて一番後ろの生徒が字が読めないと訴えたことがかつてあったので、現在は使用していません。授業用の黒板は大型の移動式のホワイトボードにしました。そこで、今年はその黒板に大きく美術科の教科目標を掲示することにしました。
目標を決めるに当たっては、教科の観点別評価の4観点を踏まえたものにしようと考えました。

☆関心・意欲・態度・・・「よくみる眼」
 これは、授業前に描画力の向上をめざしてクロッキーに取り組ませていますが、そのクロッキーを描くときにもよく言っていることです。しっかり観察する気持ちでみて、構造を考えながら描くことが、もののかたちを正確に描写する基本になると思います。
よくみようとする姿勢があれば、それは美術への関心を強める態度を醸成すると思います。また、そのことが作品の制作にも意欲的に取り組むことに繋がっていくのではないかと考えました。

 ☆発想・構想の能力・・・「考える頭」
  これは、発想・構想を豊かにするためには、しっかりと考えなければならないと思うからです。考えるのは頭です。考えようとする姿勢と、頭を働かせてさまざまなアイディアを浮かべ、練ろうとする意欲があれば、よいよい構想が考えられると思います。
しっかり考えるということを意識してもらうために「頭」という身体の部位を挙げました。

 ☆創造的な技能・・・「創りだす手」
  思い浮かんだことを形にするのに使う身体の部位は「手」が基本だと思います。そこで、「手」を意識し、巧みに使うにはどうしたらよいのかも絶えず考えながら動かして欲しいと考えました。年間35時間しかない美術の時間の中でどれだけ技術的なことを身につけさせることができるのかが不安になる教科の現状ですが、意識させる中で向上を図りたいと考えています。

 ☆鑑賞の能力・・・「感じる心」
  鑑賞に限らず「感じる心」は大切です。しかし、鑑賞するときにこそしっかりと発揮して欲しいと思ったのでこれにしました。すべて身体の部位を盛り込もうと考えたので、締めくくりは「心」かな?とも思いました。

 そして、美術科の目標とはせず「求める姿勢」としました。美術室に掲示するので、美術科の目標であることは生徒にも言わなくてもわかると思ったので、このような姿勢で美術科の学習に臨んで欲しいという願望を示すことにしました。

 新入生には発達障害を抱えた生徒もいます。聴覚情報より視覚情報が有効であると研修で聞いたので、掲示物や板書に留意し、整った掲示や板書を心がけるためにも、教室正面の整頓に配慮しました。1年生の授業は来週からですが、年間45時間の授業が実り多いものになるように1時間1時間を大切に行っていきたいと考えます。

 さて、入学式を終えた今週の授業は3年生のみとなりました。3年生の最初の授業は「対話型鑑賞」を行いました。その実践については次のブログでUPしたいと思います。なかなか深い読み取りができるようになったと感じています。お楽しみに。
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学会に参加している間に桜も満開です

2013-04-07 10:46:18 | 対話型鑑賞
学会に参加している間に桜も満開です


3月28日29日と島根大学教育学部で美術科教育学会が開催されましたので、参加してきました。

今から15年くらい前に島根大学大学院に内留していた時以来の学会参加でした。みるみるの仲間にも声をかけ、年度末の慌ただしい時期でしたが私を含めて5名の会員が参加しました。学会初参加の会員が多く、学会そのものにも興味津々でした。また、島根で開催されるので最寄りの知人にも声をかけました。昨年度まで大学院に在籍していた小学校教員や、美術の免許を持ちながら支援教育に現在は携わっている先生の顔も見られ、地元開催の利はあったのではないかと思います。

事務局の川路先生は準備から当日の運営、懇親会の段取りなど目に見えないところでのご苦労は大変なものではなかったかと推察します。お疲れが出てないといいのですが、と、思っています。

さてさて、学会ですが、久々に「研究とは何か?」について、改めて考えさせられる機会となりました。
初日のシンポジウムでも「研究者と実践者」という立場についての話題が出ていましたが、現場で生徒に向かっている立場の者はより「実践者」であると感じます。でも、それを「研究者」の視点で検証する必要があるのではないかと強く感じています。学会に参加すると、その研究者の視点をもらうことができるので、そういう意味では有意義です。私たちが普段の授業の中で思いつきで修正を加えていることにも意味があるのではないかと光を当て、検証するのが研究者の視点だと思いました。日々の授業の中で変化を加えながら実践している教育現場の人間(教師)も、すべての授業では無理でも、どこかのクラスで実践の検証を行い、より有効な方策を導き出すことは大切なのではないかと感じました。

私たちは「対話型鑑賞」の教育現場での普及を目ざして集まりましたから、「対話型鑑賞」の有用性を実証しなければならないと感じました。

特に、私は、幼稚園で鑑賞の実践をなさっている方の発表を聞き、私の昨年度の実践も検証に値すると感じたので、今年度の実践ではデータを残して検証したいと思いました。

また、私たち現場の教員は即効性のある実践を知りたがる傾向にあります。大学の先生方はどちらかと言うと研究に重きを置かれる立場なので発表が即、明日からの授業に役立つといったものは少ないのですが、横浜国立大学の大泉先生の実践にはとても興味が持てました。大学生の実践場面を見学したいと思いました。

2日間、スケジュールびっしりで30分刻みでの口頭発表を聞くうちに2日間は矢のように過ぎましたが、しばし現場を離れて新鮮な風に当たることができ、参加した会員には有意義な体験になったと思います。この経験を2013年度の活動に反映させることができるよう、また気持ちを新たに取り組んでいきたいと思います。

また、京都造形芸術大学から学会発表を行った、北野・平野・三宅の三氏の皆様にはご苦労様でした。最終日の夜に玉造温泉でMTGできたこともとても有意義な時間でした。

秋に向けて実践集の発行、あと一息、頑張りたいと思います。

追伸

ブログにコメントをくださった、めぐみさん。ありがとうございます。
ブログの内容にコメントをくださると、なお、うれしいです。
引き続きのご愛読、よろしくお願いします。




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