浜田市世界こども美術館 『橋本弘安展』 【2019年6月1日(土)~7月7日(日)】
対話型鑑賞会 2019年6月15日(土)
作品:「暮れる頃」 228×138cm 1992年 日本画
鑑賞者:一般 2名~3名 会員1名
ナビゲーター:房野伸枝 レポート文責:春日美由紀
今回はいつもとは違い、ナビゲーターとは別の立場でレポートをしようということになり、房野さんのナビの様子を春日がレポートします。
この作品は、画像をみてもらってもお分かりいただけるように、画面の中心に女性が大きく描かれています。しかし、逆光で暗く沈んだ色調で描かれているので、その表情は判然としません。また、腰かけているベンチと後ろのテーブルには不可思議な物体が存在しています。背景の池?湖?と公園のような景色とこの女性と、不可思議な物体?いったい何をみる者に伝えようとしているのか?謎の多い作品です。
最初は、親しい関係と思われる女性二人が鑑賞者でした。ナビゲーターと3人で始めるといった感じでしたので、特にルールの確認をされませんでしたが、後ろから参加していた、春日にとっては、どちらが発言されているのかが分かりにくかったので、少数でも、挙手を促すか、どちらが話しているのかが分かるようなアクションがナビゲーターには必要だったように思います。
最初に背景の景色についてから発言があり、次いで、女性の座っているベンチとテーブルに話題が移っていきました。ただ、その流れは自然でしたので、よいと言えばよいのですが、後になって、背景の景色について、再度詳細な発見が必要だったことを考えると、もっと、背景についてみて、発見して、語っていただいた方がよかったのかな?と思うところです。
ベンチやテーブルに存在する物体については、誰もが不可思議に感じ、何を表そうとしているのか「見取り」に腐心している様子でした。春日が「人間を表象しているのではないか。」と提言しました。そこから「何が」「何に」「みえる」という見取りの発言が続き、その様子から「人々の生活の営み」を表現したもの、この作品全体が夕暮れ時なので、「夕暮れ時の人々の様子」を表しているのではないかと言う解釈が生まれました。背景には小さな時計塔が描かれ、時刻は5時を指していると言うことからも、これらの解釈は間違いではないという確信が鑑賞者の中に生まれました。これらのことを考慮に入れ、中心の女性についてみていこうということになりました。料理で言うならメインディッシュです。この女性について解釈を促したことは、とても大きな意味があったと思います。ナビ自身が、鑑賞後の振り返りでも、最後に取り上げてよかったと語っていましたが、まさに、それなしにこの作品は語れないだろうと思いました。
女性については、最初、「誰かを待っている。」とか「誰かと別れて寂しそう」という意見が出ましたが、表情を詳細にみていくと「寂しそうではない」「微笑んでもいない」「無表情なわけでもない」と、多様な解釈が出ましたが、これならだれもが納得できる。という解釈には至りませんでした。しかし、鑑賞者各々に考えることはあって、それぞれの解釈をしているようでした。私(春日)としては、「女性の姿を借りた、この夕暮れ時の、人々の暮らしを象徴した姿ではないか。」と伝えました。女性が、年齢的な事も考慮に入れると、この時刻にあって「焦っていない」ことから、生活を背負っていない存在と感じ、夕暮れ時をある意味のんびりと見過ごせている状況から、上記のように考えると伝えました。また、全体的な色調と、女性が身にまとった衣服から「秋」の夕暮れではないかと最後に伝えて、鑑賞会は終わりました。
鑑賞会にふりかえりでは、話しやすい雰囲気でよかった。ゆっくり自分のペースでみることができた。言いたいときに言えるという、焦らなくてよいという安心感があった。という、ナビゲーターのナビの心地よさについての評価がありました。みるみるの会員以外は最大時3名と言う極小参加者による鑑賞会でしたが、人数の多寡に関係のない、この鑑賞の奥深さに気付いていただけ、また、自身の作品に対する見方の変化も好印象で、ナビゲーターをやってみたいという意欲につながったのが、大きな収穫でした。
みるみるの会員として、ナビゲーターのスキルアップにつながることとして気付いたことは文中以外には以下の通りです。
房野さんのナビについて
○途中で、一名が参加し、右端の椅子に座ったのですが、その際の、ナビの立ち位置が、その方と絵を遮る位置にあったので、それは、最初の鑑賞者2名が、やや左寄りに居たので、ナビが、右に立って、その時は、問題なかったのですが、追加の参加者が右端に座っても、そのポジショニングが変わらなかったので、この鑑賞者にとって、右端が見づらかったのではないかと、感じました。
○不可思議な物が存在する、一見、暗い感じのする作品でしたが、共にみることで、深く考え、味わうことが出来ました。最初の見方が大きく変化していくよい作品を選ばれたと思います。
【みるみるの会からのお知らせ】
〇対話型鑑賞会のお知らせ
「山光会創立70周年事業 第85回記念東光展巡回島根展」(7/31~8/5)
島根県立美術館(ギャラリー全室)、料金800円
東光展の巡回島根展にて、対話型鑑賞会をさせていただきます。
・8/3(土)14:00~15:00頃まで
・島根県立美術館ギャラリーにて
・参加は無料ですが、東光展巡回島根展の入室料が必要です。
共にみることで、深く考えたり、味わったりと楽しい時間をすごしてみませんか?
対話型鑑賞会 2019年6月15日(土)
作品:「暮れる頃」 228×138cm 1992年 日本画
鑑賞者:一般 2名~3名 会員1名
ナビゲーター:房野伸枝 レポート文責:春日美由紀
今回はいつもとは違い、ナビゲーターとは別の立場でレポートをしようということになり、房野さんのナビの様子を春日がレポートします。
この作品は、画像をみてもらってもお分かりいただけるように、画面の中心に女性が大きく描かれています。しかし、逆光で暗く沈んだ色調で描かれているので、その表情は判然としません。また、腰かけているベンチと後ろのテーブルには不可思議な物体が存在しています。背景の池?湖?と公園のような景色とこの女性と、不可思議な物体?いったい何をみる者に伝えようとしているのか?謎の多い作品です。
最初は、親しい関係と思われる女性二人が鑑賞者でした。ナビゲーターと3人で始めるといった感じでしたので、特にルールの確認をされませんでしたが、後ろから参加していた、春日にとっては、どちらが発言されているのかが分かりにくかったので、少数でも、挙手を促すか、どちらが話しているのかが分かるようなアクションがナビゲーターには必要だったように思います。
最初に背景の景色についてから発言があり、次いで、女性の座っているベンチとテーブルに話題が移っていきました。ただ、その流れは自然でしたので、よいと言えばよいのですが、後になって、背景の景色について、再度詳細な発見が必要だったことを考えると、もっと、背景についてみて、発見して、語っていただいた方がよかったのかな?と思うところです。
ベンチやテーブルに存在する物体については、誰もが不可思議に感じ、何を表そうとしているのか「見取り」に腐心している様子でした。春日が「人間を表象しているのではないか。」と提言しました。そこから「何が」「何に」「みえる」という見取りの発言が続き、その様子から「人々の生活の営み」を表現したもの、この作品全体が夕暮れ時なので、「夕暮れ時の人々の様子」を表しているのではないかと言う解釈が生まれました。背景には小さな時計塔が描かれ、時刻は5時を指していると言うことからも、これらの解釈は間違いではないという確信が鑑賞者の中に生まれました。これらのことを考慮に入れ、中心の女性についてみていこうということになりました。料理で言うならメインディッシュです。この女性について解釈を促したことは、とても大きな意味があったと思います。ナビ自身が、鑑賞後の振り返りでも、最後に取り上げてよかったと語っていましたが、まさに、それなしにこの作品は語れないだろうと思いました。
女性については、最初、「誰かを待っている。」とか「誰かと別れて寂しそう」という意見が出ましたが、表情を詳細にみていくと「寂しそうではない」「微笑んでもいない」「無表情なわけでもない」と、多様な解釈が出ましたが、これならだれもが納得できる。という解釈には至りませんでした。しかし、鑑賞者各々に考えることはあって、それぞれの解釈をしているようでした。私(春日)としては、「女性の姿を借りた、この夕暮れ時の、人々の暮らしを象徴した姿ではないか。」と伝えました。女性が、年齢的な事も考慮に入れると、この時刻にあって「焦っていない」ことから、生活を背負っていない存在と感じ、夕暮れ時をある意味のんびりと見過ごせている状況から、上記のように考えると伝えました。また、全体的な色調と、女性が身にまとった衣服から「秋」の夕暮れではないかと最後に伝えて、鑑賞会は終わりました。
鑑賞会にふりかえりでは、話しやすい雰囲気でよかった。ゆっくり自分のペースでみることができた。言いたいときに言えるという、焦らなくてよいという安心感があった。という、ナビゲーターのナビの心地よさについての評価がありました。みるみるの会員以外は最大時3名と言う極小参加者による鑑賞会でしたが、人数の多寡に関係のない、この鑑賞の奥深さに気付いていただけ、また、自身の作品に対する見方の変化も好印象で、ナビゲーターをやってみたいという意欲につながったのが、大きな収穫でした。
みるみるの会員として、ナビゲーターのスキルアップにつながることとして気付いたことは文中以外には以下の通りです。
房野さんのナビについて
○途中で、一名が参加し、右端の椅子に座ったのですが、その際の、ナビの立ち位置が、その方と絵を遮る位置にあったので、それは、最初の鑑賞者2名が、やや左寄りに居たので、ナビが、右に立って、その時は、問題なかったのですが、追加の参加者が右端に座っても、そのポジショニングが変わらなかったので、この鑑賞者にとって、右端が見づらかったのではないかと、感じました。
○不可思議な物が存在する、一見、暗い感じのする作品でしたが、共にみることで、深く考え、味わうことが出来ました。最初の見方が大きく変化していくよい作品を選ばれたと思います。
【みるみるの会からのお知らせ】
〇対話型鑑賞会のお知らせ
「山光会創立70周年事業 第85回記念東光展巡回島根展」(7/31~8/5)
島根県立美術館(ギャラリー全室)、料金800円
東光展の巡回島根展にて、対話型鑑賞会をさせていただきます。
・8/3(土)14:00~15:00頃まで
・島根県立美術館ギャラリーにて
・参加は無料ですが、東光展巡回島根展の入室料が必要です。
共にみることで、深く考えたり、味わったりと楽しい時間をすごしてみませんか?