ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

須田悦弘氏の作品をみるために益田に向かいました

2013-09-24 20:06:20 | 対話型鑑賞
須田悦弘氏の作品をみるために益田に向かいました


土曜日は久々のみるみるの会を浜田市世界子ども美術館で開きました。しかし、浜田市美術展の搬入日だったので、いつも使用しているコレクション室が使えないとのこと。そこで、対話型鑑賞は行わず、2011年から始まった我々の活動を振り返るMTGを行おうと集まりました。また、京都造形芸術大学・ACOPと共著している実践資料集も発行に向けて佳境を迎え、ゲラが上がっているということだったので、日文の担当者も交えて、一緒にそちらのMTGも行う予定にしていました。

私は、会員の房野さんのグラントワでの企画展レポートを読んで、須田悦弘氏の作品がとても気になったので、朝イチのJRに乗って、午前中に益田まで行き、企画展を鑑賞し、午後に向けて浜田に移動しようと考え、西出雲駅6:04発の鈍行列車に乗りました。出雲市駅ではなく西出雲駅から乗るのは、駅の真ん前に無料の駐車場があるからです。ここに車を停めておけるので便利です。ただ、特急列車は停まらないので各駅停車の列車に乗り、のんびり移動することになるので時間はかかります。でも、そのおかげで、朝焼けの美しい空をみることができました。画像でUPしているのでみてくださいね。朝焼けも美しかったのですが、白んでいく空に残っている月の白く輝く姿もまた一興でした。中秋の名月のあとの月なので、一層美しかったのかも知れません。

さて、久々の車窓からの日本海もまた美しかったです。朝焼けの空が物語るように、昨日は晴天で、日本海は波もなく穏やかな海原が見渡せました。小田駅から田儀駅に至る間に日本海から島根半島の日御碕方面が一望できるところがあります。そこからみる光景は絶景です。この日は空気も澄んでいて、珍しく、靄もかからず、島根半島までくっきりと見渡すことができました。大田のあたりからだと角度がよいと日御碕灯台がみえる場所もあります。そんな時はとっても得した気分になります。車を運転していてはみられない光景なので列車の旅もまたよいものです。

この夏の豪雨被害でJR山陰線は江津から浜田までが不通となっており、バスの代替輸送が行われています。江津駅からバスに乗り換えて浜田まで向かい、浜田からまたJRに乗って益田まで移動するという道中となりました。土曜日の朝でしたが、制服姿の高校生がたくさん乗っていたので、赤字路線かも知れませんが、生活路線でもあるので、早く復旧するといいと思います。しかし、同じ豪雨被害の益田から先の山口線は復旧の目途も立ってないそうで、ますます過疎化に拍車がかかるのではないかと暗い気持ちにもなりながら、益田駅に到着したのは9:12でした。益田駅からグラントワまでは道路沿いに歩道も整備されているので歩いて15分くらいでしょうか?お日様をもろに正面に受け、日焼けをちょっと気にしながらの散歩でしたが、9:30開館に合わせるように到着しました。

グラントワは朝からにぎわっていました。中庭には浅い水場がありますが、その周りを保育園児が元気に走り回っていました。美術館は10:00開館なので中庭で走り回る園児を眺めながらしばしの休息を取り、展示会場に向かいました。この美術館の学芸員の廣田さんはみるみるの会員です。この日は企画展イベントで益田市周辺にある巨木を見て回るツアーに出かけるということで、スポーツシューズを履き、軽快な出で立ちで私を迎えてくれました。ツアー参加者に企画展の作品を2点ほど紹介するのを私も一緒に聞きましたが、「へえ~~~。」と納得することしきり・・・。やっぱり学芸員さんの知識は半端ないですね。プチうんちくをGETしました(笑)。
企画展の作品は日本人の身近ある「草木」にまつわる作品が展示されています。古来より自然とともある日本人ならではのまなざしがそこにはあるように思います。夏に若冲展をみたときにも感じた想いがよみがえります。廣田さんが「昔の人は、木には神が宿ると思われ、木そのものを神としてあがめたと言われます。また、それに対して人は草として扱われました。」と話されましたが、まさに人は「民草」とも表現されるので、人は「草」で、強い「木」に守られるように、弱くはかない「草」のような存在であるということを、改めて思い知らなければならないのではないかと思いました。

「人」が自然に対する畏れを忘れ、思うがままに自然をコントロールできると傲慢になってきている現代に自然(神)からの大いなる警鐘として東北大震災はあったのではないかとも感じられます。被害にあった東北の方々には申し訳ないですが、この震災を通して、自然の情け容赦ない破壊力に我々日本人は今一度、畏怖の念を呼び起こさなければならないのではないでしょうか?その前には、人智は足元にも及ばず、科学の粋を集めたと思われていた施設さえ、完膚なきまでに破壊され、その力の前に「草」のようにか弱く佇むしかない「人」の群れ・・・。私たちは今、本当に大切なものは何か。本当に大切にしていかなければならないものは何のかを立ち止まって考えなければならないのではないかと思うのですが、日本の政治を司っている人たちにその思いはあるのでしょうか?

2020年に東京オリンピックの開催が決定し、久々に明るい話題が日本国中に流れました。とてもうれしいことです。その際に、首相が、原発問題を解決すると、世界に向けて発信したのは、オリンピック招致運動が生んだ大きな副産物だと思っています。どうか、この問題をあいまいに進めず、世界に向けて責任を持って対応してほしいと、切に願います。福島の方々を始め、東北の皆さんが、一日も早く、安寧な日々を迎えられるようにと思います。この夏、福島に出かけ、そこに暮らす方々の温かさに触れることでこの思いは一層強くなりました。

今回のグラントワに企画展は、自然豊かで四季の移り変わりの中に身を置き、暮らしてきた日本人として、今後の日本の有り様を今一度考えさせてくれました。

企画展示室の最後に、須田悦弘氏の彫刻作品が展示されていますが、この作品にも、日本人の感性が表出されていると思います。このか弱き存在にすらも「美」を見出すことのできる日本人の感性を失ってはならないし、これからを生きる子どもたちにも、我々大人は伝えていかなければならないと考えました。

このような豊かな朝を過ごした私は、益田在住の房野さんの車に同乗させていただき、午後の浜田でのMTGに向かいました。MTGの中心は日文さんからの実践集の発行に向けての最終確認でした。この詳細については、またお伝えしたいと思います。また、この時に、10月以降のみるみるの活動についても確認をしたのでお知らせします。興味を持ち、ご都合がつきましたら、浜田市世界子ども美術館や石見美術館にお越しください。お待ちしています!!

みるみるの今後の活動
10月26日(土)10:30~  浜田市世界子ども美術館 企画展示室 ロビー集合
11月16日(土)14:00~  浜田市世界子ども美術館 場所未定  ロビー集合
12月21日(土)14:00~  浜田市世界子ども美術館 場所未定  ロビー集合
 1月18日(土)14:00~  浜田市世界子ども美術館 場所未定  ロビー集合

2月以降は、石見美術館で「みるみるとみてみる?展」(仮称)がコレクション室で開催予定のため以下の予定
 2月 9日(日)14:00~  石見美術館 コレクション室
 2月15日(土)14:00~  石見美術館 コレクション室
 2月22日(土)14:00~  石見美術館 コレクション室
 3月 1日(土)14:00~  石見美術館 コレクション室
 3月 8日(土)14:00~  石見美術館 コレクション室
 3月15日(土)14:00~  石見美術館 コレクション室
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須田悦弘氏の制作風景を垣間見ました

2013-09-20 22:04:40 | 対話型鑑賞
「一木一草に神をみる 自然と美術」展がグラントワ・島根県立石見美術館で11月4日まで開催されています。その関連プログラムとして、9月14日に<須田悦弘 「草」をつくる>という、公開制作がありました。

 須田悦弘さんといえば、木彫で本物そっくりの草花を制作する作風で知られています。小さな小さな雑草を、展示室の隅っこや壁にひっそりと展示したり、まるで空中に浮いているかのごとく花を出現させたり、インスタレーションとしてもとても興味深い作品を発表しています。
 本校でも授業で使っている、中学校「美術資料」の表紙を飾っていたので、ぜひ本物をみたい!しかも、作家の制作を目の当たりにできるなんて、絶好の機会!と、朝10:30にグラントワへと駆けつけたのでした。

 グラントワのロビーには、みるみる会員の美術館学芸員・廣田さんもいて、今、美術館の外で撮ってきたばかりという雑草の画像プリントを準備し、さあ、これから木彫スタート、というところでした。見学者は入れ替わりながらも、常時7・8名というところだったでしょうか。

 須田さんはとっても気さくな方で、「どうぞ近くで見てください」「質問があれば、作りながらお答えしますよ」と、ニコニコしながらしょり、しょり…と数種の彫刻刀でホウの木片を削っていきます。なんと!「写真もOK]とのことで、ダメもとでビデオカメラを持参していた私は、大喜びで制作の様子を撮影させていただきました。(^○^)/「美術の時間に、生徒に見せてもいいですか?」と聞くと、「あ、いいですよ~」と寛大なお言葉が。本当にありがとうございます!

須田さんの何とも和やかなムードに気をよくした見学者たち。「こんなに細いのに、折れたりしないんですか?」「手を切ったりしませんか?」「肩、凝りませんか?」「話題の3Dプリンターでも、精巧にできますが、なぜ、あえて木彫を?」「そこにどんな意味が?」などなど、好き勝手に質問しながら手元でどんどん出来上がっていく作品を見つめていました。それらに飾らない言葉で誠実に答えてくださる須田さん。あんなに薄く細い精密な作品作りは、さぞ息をつめてするのだろうと思いきや、会話しながら笑いも交えてサクサク作ってしまうのでした。作品だけでなく、作者の魅力にもはまってしまう見学者たち…。

そうこうしているうちに40分程度で、雑草の芯と葉っぱが一枚できてしまいました!まさに神業。そして、なんと、なんと、恐ろしいことに「さわっていいですよ~」と、手に取らせてくださったのでした!ひゃ~!(*_*;ラッキー!薄さは葉っぱのそれと同じ。葉っぱを一枚ずつ作っておいて、最後に「アロンアルファ」でくっつけたのですが、その継ぎ目は全くわかりませんでした。
最後に、岩絵の具で彩色し、乾くのを待って、展示室にすでにある雑草の作品に付け加えました。そこまで見届け、17:30に終了。最後は思わずみんなで拍手~終始あたたかいムードで、一つの作品の初めから完成まで見学できるなんて、本当に幸せな一日でした。
今も、(思わず見逃しそうなくらい自然に)須田さんの雑草は石見美術館の展示室に生えて(・・・)います。ぜひ、見てみてください!
また、この展覧会、彫刻、絵画、写真、版画、多岐にわたるジャンルと自然を様々な切り口で見せてくれ、とても見ごたえがあります。ぜひ島根県益田市グラントワ・石見美術館へ足を運んでください。
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ICTを活用した授業を行いました

2013-09-17 22:43:47 | 対話型鑑賞
ICTを活用した授業を行いました


夏休みにICT活用講座の研修を2日間にわたって受講しました。その時に、授業での活用を10月末日までに報告する課題が出されていたのを思い出し、今日早速実践してみましたので、ブログでも紹介したいと思います。

教育現場でのICT活用が進んでいますが、島根県ではまだまだのようです。小学校で利用される先生が増えているようです。私の勤務する中学校では社会科の先生と数学の先生がよく利用しています。今年度は3年生の数学のT2として授業に行っているので、T1の先生がICTを利用しての授業を直接見させてもらう場面があり、その効果を実感しました。

私たちの実践している対話型鑑賞の授業もICTを活用する授業ですが、もっと美術にも取り入れるとよいと思われる場面があるので、昨年度から準備を始め、美術科用の実物投影機(書画カメラ)を教材備品費で購入していましたが、機材の設置に不安を感じ、研修を受けるまで美術室で利用できる状態になっていませんでした。
研修では、2日目に実際の授業場面で活用することを想定した模擬授業を行うことが課題として出されました。何がよいかと思案しましたが、実技の実演を見せるのが効果的だと考えました。1年生のデザインの授業での平塗の技法は小学校時代水彩でしか彩色したことのない生徒たちにはなかなか難しいようで、毎年教えるのに苦労しています。そこで彩色しているところを動画で撮影したものを見せるのはどうかと考えました。見せながら、水彩での彩色との違いを考えさせようと思いました。この模擬授業を中学校の先生方を生徒に見立てて行いましたが、どの先生にもわかりやすいと好評でしたし、こちらが意図する気づきがどの先生も起きていたので、生徒にも通用すると手応えを感じました。そして、美術でICTを利用するのは授業をより効果的に進めるのに有効だと確信しました。そこで夏休み明けから美術室でいつでも利用できる環境を整えました。まだ、完璧ではないですが、今日の授業から利用してみました。
今日の授業は、1学期に初めて使用するアクリル絵の具で平塗の技法を利用して彩色する色相環の作品を夏休みの課題としていましたが、その作品の鑑賞を通して、自分にまだ不十分なところに気付いて、修正を加えようというものです。アクリル絵の具は重ね塗りが可能なので、水分が多く塗りムラのあるものは修正ができます。どうすれば、もっと平塗がうまくできるのかを、同じクラスの友だちの作品を見、友だちにどう塗ったのかをインタビューさせて、自分の取り組みを反省し、巧く塗るためのコツをつかんでもらおうと考えました。
ホワイトボードには、平塗をする時の注意点を思い出させて発言させた内容を記述し、スクリーンにはワークシートを映して、学習の方法をワークシートの説明を通して理解できるように進めました。私は美術の授業にワークシートをよく使用しますが、この利用方法を説明するのに今まで苦労していましたが、実物をスクリーンに投影することで説明の理解が容易になるのではないかと考えました。
ブログに掲載している画像はこの授業風景です。生徒は友だちの作品を鑑賞しながら、その作品を制作した友人に取り組みについてのインタビューをしながらワークシートに書き込みをしています。活動後は自席に帰り、活動を通して学んだことをまとめ、自分の作品をバージョン・アップ(修正を加えることをこう呼んでいます)する作戦を立てさせます。
でも、バージョン・アップ作戦は授業では行いません。(時数がもったいないので)家庭での課題とし、9月末までに提出するようにしています。
授業はこの後、色のグラデーションを利用しての「図書カードのデザイン」の作成に入ります。「図書カードのデザイン」作品のうち1位に選ばれたものは翌年入学する1年生の図書カードとして活用されます。自分の作品が採用される可能性があるので、どの生徒もかなり真剣に取り組みます。グラデーションの彩色に併せ、レタリングやイラストも描き加えて、本を読みたくなるようなデザインを考案し「図書カード」にふさわしいデザインにしていきます。この時に「デザイン」とは何かについても学びます。
また、作品が完成しましたら、紹介したいと思います。

みるみるの会は対話型鑑賞の実践を中心に行う会ではありますが、美術科教員が会員の大半を占めるので、美術の授業の紹介もしていきたいと考えています。また、ご覧になられた感想などもお寄せいただけると幸いです。
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今朝の出雲北山の山々です

2013-09-10 22:58:39 | 対話型鑑賞
今朝の出雲北山の山々です


出雲大社が平成の大遷宮の年であることから、出雲の地はかつてないほどの観光客が訪れています。開園30周年を迎えた東京ディズニーランドの来館者を上回る人たちが訪れているとかいないとか・・・。
JR出雲市駅で勤務する教え子の話によると、岡山からの特急「やくも」は若い女性客で指定席は満席。東京:出雲間の寝台特急「サンライズ」を利用しての弾丸参拝ツアーも企画され、結構な盛況ぶりと聞きます。駅周辺のビジネスホテルも週末は3ヶ月先くらいまで予約が取りにくい状況となっています。
また、今年は伊勢神宮も遷宮で、出雲大社:伊勢神宮と両宮を参拝する年配の方も多いと聞きます。実は私の両親も両宮参拝を達成したクチです。

そんな出雲は、出雲の名の通り、「雲出ずる地」です。画像でもおわかりのように、出雲大社が鎮座する島根半島、園の長浜に打ち寄せる日本海から雲は湧き、たなびき、出雲平野を渡り、宍道湖へ向かって上昇します。宍道湖東岸、松江の地から出雲平野を見渡すと、彼の地から雲が湧いて押し寄せる光景を幾度も目にすることができます。大自然のパノラマを毎日のようにみることのできるこの出雲の地が私は大好きです。

そして、出雲の中学校は、今、何処も秋の体育祭真っ盛りです。私の勤務する学校も明後日の体育祭に向けて生徒が連日練習に明け暮れています。応援の象徴となるデコレーションの制作も佳境です。今年はどんな作品が体育祭に華を添えてくれるのか、とても楽しみです。このデコレーションの制作は名称は違えど、どの学校でも行われていると思いますが、我が校は、安全性と簡便さから「タイベックスシート」を利用しています。価格は若干高めですが、破れないこと、雨に強いこと、軽いこと、などの多くの利点があります。パネルが無くても、高いフェンスがあれば、ロープを張って吊すことが可能なので、安全の面からも安心です。風の強い出雲地方では風にあおられないようにパネルを固定するのに苦労しますが、このシートならパネルがなくてもいいので、重労働からも逃れられます。耐水性なので、途中から雨が降ってきても慌てることはありません。アクリル性の絵の具を利用すれば絵の具が雨で流されることもないので、カバーを掛ける必要もないのです。「タイベックス社」の回し者ではないですが、便利なことはこの上ないので、一度使ってみてください。労働が半減以下になります。

話しがあちこちしましたが、秋は実りのシーズンです。出雲でも稲刈りが始まっています。私たちみるみるの会でも、実りの時を迎えようとしています。1年越しで取り組んできた「対話型鑑賞」の実践資料の完成が見えてきました。また、完成の暁にはブログでも紹介したいと思いますが、ほぼ形となりつつあることをお伝えしておきます。

また、10月には島根県教育研究大会が浜田市を主会場に開催され、みるみる会員の正田さんが美術の授業を公開します。鑑賞の授業ですので、興味のある方はご参加ください。

虫の音がすっかりはまっている秋の夜長にいつの間にかなってしまいました。蝉はいつの間にどこへ行ったのでしょう?皆さん、お風邪など召しませんように・・・。
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若冲展に行って来ました!!

2013-09-01 10:12:33 | 対話型鑑賞
若冲展に行って来ました!!


東北大震災で辛い思いをしている東北の人たちを元気づけようというジョー・プライス氏の思いから日本が世界に誇る絵師「伊藤若冲」展が、春から東北3県で順次開催されています。その最後の開催県である福島の県立美術館に「若冲が来てくれました」展をみに行ってきました。

東北に足を踏み入れるのは大学生以来です。その時はバスケットボール部の合宿で山形まで行きました。まだ東北新幹線はなく、お盆の帰省の方たちですし詰めの東北本線に乗り、学生なのでお金は無く自由席の空いた席を仲間と変わり番に座って山形にたどり着いたのを覚えています。

あれから30年たち、みちのくにも新幹線が走り、朝6時半に出雲を発った私はやくもと新幹線を乗り継ぎ、指定席に悠々と座り、3時過ぎには福島の人になっていました。

福島県立美術館の閉館時刻は5時です。少しでも長く若冲作品をみるためにタクシーで美術館に向かいました。運転手さんが連日来館者が多く、列になって並んで入場していることを教えてくださいました。時間が限られているので並ばなければならないと時間のロスだと思いながら、でも、平日の閉館時間も近い時刻なので、そんなには混んでいないだろうとも思いながら、はやる気持ちで、早く美術館に着かないかと気もそぞろにタクシーの運転手さんと会話していました。
会場に着くと、タクシーがたくさん出てくるお客さんを待っていましたが、入場の行列はなく、待つことなく美術館に入ることができました。

なんて、ラッキー!!!

と、同行のみるみる会員の房野さんと喜びながら、いよいよ企画展示室に入りました。

対話型鑑賞を知り、実践するようになっての悩みは「作品鑑賞時間が長くなる」ということです。特に今回は房野さんと一緒なので、二人で作品の前で「あーだ。こーだ。」と話しながらみているとどんどん時間がたちます。その上展示作品の多いこと!!じっくりみていると閉館時刻が来そうです。それなのに「若冲」の部屋までたどり着きません。「パスしよう」と声をかけ、速足で「鳥獣花木図」の展示室まで行きました。あのままみ続けていたら閉館時間までに若冲室にたどり着けなかったと思います。これからの鑑賞の教訓は「時間のない時は展示順を無視して、メインを最初にみる」ことです。学芸員さんごめんなさい。

若冲の「鳥獣花木図」は圧巻でした。何度も図録や作品集でみていますが、やはり本物の持つ力を間近で感じました。大きさ、絵の具の盛り上がり、マス目の丁寧さ、どれひとつとっても圧巻です。その上、妙に魅力的な???な動物たち・・・。見たこともない動物たちを話しを聞きながら想像して描いた若冲が描くことをきっと愉しんでいたのだろうという思いが伝わってきました。どの動物の表情もそれはそれはかわいらしく、どこか自慢げで、どの自慢げな表情は、きっと若冲の思いを反映しているのだろうと思いました。

そのほかにも名作と言われる作品がキラ星のごとく並び、情けないですが、「あれもこれも、美術の教科書に載っていたな。」などと思い、その本物がみられて、なんて素敵なんだろうと、遠路はるばる、東京での研修会にかこつけて足を延ばして正解だったと、本当に思いました。

また、福島県立美術館の展示室の途中には休憩室が何か所かありますが、その休憩室からみえる風景もすてきでした。一幅の日本画作品をみるような風景になっていて、遠くのビルが樹木で隠され、近くの竹林は構図を考え整理されながら植栽されているように思いました。もっと時間があれば、ここでしばし時間を過ごし、また新たな気持ちで作品に向き合えると、この休憩室の配置の配慮にも感心しました。

しかし、残念なことに5時少し前には閉館時間を知らせるBGMが流れます。このBGMのせいでちょっとゆっくりと作品に向き合う気持ちがそがれてしまうのは、この館に限らず残念なことです。また、どの公立美術館でも言えることですが、閉館時間が5時に決まっているのも残念です。私の住む島根県の松江にある島根県立美術館は、夏場は日没後30分後が閉館時間となっており、夏は7時過ぎまで開館しています。もちろん警備のことや勤務のこともあるのでしょうが、5時に閉館だと基本、平日に働いている方は平日に美術館に出かけるのは困難だから、土日に行列にならざるを得ないという事態も起きているのではないでしょうか。もう少し夏場は遅くまで開館してくれていてもいいのになあ。というのが、この館に限らず、公立美術館に対する、一般観覧者としてのささやかな願望です。この後、六本木の森美術館にも出かけましたが、土曜の夜10時まで開いていて、話題の美術展でもありましたが、多くの来館でにぎわっていたのをみて、美術館の開館時間にもう少し流動性を持たせれば、美術に興味を持ってくれる人たちが増えていくことになるのかもしれないなどと感じていました。

話しが本論からそれてしまいました。

限られた時間ではありましたが、「若冲ワールド」は本当に魅力的ですてきでした。生きている間に、もう二度とみることはないかも知れません。そう思うと「一期一会」のこの機会を得たことに感謝します。そして、コレクターのジョー・プライス氏の日本を思ってくださるハートと作品をこの東北3県に貸し出し、東北の人たちを元気づけようという懐の深さに頭の下がる思いがしました。

美術館往復のタクシーの運転手さん、この後、会津若松に移動する列車で出会ったご夫婦、若松城の写真屋さん、この旅の途中で出会った東北の人たちは本当に温かく、人情にあふれた人たちでした。困っている人は放っておけないのか、気さくに声をかけてきてくださいました。本当に困っているのは自分たちの方かも知れないのに、人の心配のできる人は大きい人だと思いました。

美術館からの帰りのタクシーの運転手さんが、「政治家なんて、震災のことなんか、もう他人事でしょ。住み慣れた自分の家に一生帰れないかも知れない人たちの気持ちなんか、わかってないですよ。」と話された言葉がとても重たく、でも、「あなたたちみたいに、遠くから、福島に来てくれる人がいるだけで、東北は元気になりますよ。お金も落としていってください。」と冗談めかして語られました。

東北大震災に対して、私たちは何ができるのでしょう。私は、私たち日本人一人一人が、東北のことを忘れず、思い、何かできるアクションを起こすことが大事なのだろうと感じました。

福島の町にも会津若松の町にも避難のための仮設住宅がありました。この住宅のなくなる日が早く来るようにしなければならないのだと思いました。

若冲に惹かれて出かけた東北の地。多くのことを学ばせてもらいました。ありがとうございました。
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