ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

2014年、みるみるの活動を支えてくださり、ありがとうございました。

2014-12-29 16:26:11 | 対話型鑑賞



みるみるの会は2011年春に結成しました。あれから3年の歳月が流れ、県内外に名が知れ渡ってきたように思います。
 京都造形芸術大学で2011年3月に開催されたVTSJに集った島根の教員3名が偶然に出会ったことから「みるみるの会」は生まれました。対話型鑑賞が教育現場において美術鑑賞教育のみならず有用な手段であることをVTSJ STEPⅠを受講後に、その思いをさらに強くしました。講師であったフィリップ・ヤノウィン氏が、Ⅰのセミナーの最後に「これから、このセミナーを受けた後、あなたたちにできることは何ですか?」と問いかけたことにも応えたいと思いました。セミナーを受けても、受けただけでは何も始まりません。何か行動を起こさなければセミナーを受けたことは無意味なのです。セミナーを受けた一人の人間が、自分のテリトリーでVTSの取組を始めることだけでは、この鑑賞教育活動は広まらないと思いました。仲間を集め、このセミナーで学んだことを伝え、広めていくことが、セミナーを受けた者の務めだと感じました。
 3月にセミナーを受講後、4月には活動の拠点となる美術館に目星をつけました。そして館長に趣旨を理解していただき、5月から1回目の活動が始まりました。それから丸3年の間に、島根県立石見美術館でのアメリア・アレナス監修による「MITE!ね展」にも対話型鑑賞のナビゲーターとして参加し、京都造形芸術大学ASP学科の福のり子教授とその研究員の方々と協働して「みる・考える・話す・聴く」(日本文教出版)副資料も出版できました。山口県立美術館ティーチャーズデイにも招かれて山口の先生方とも共に学ぶ機会も得ました。今秋は、中国五県造形教育研究大会の授業公開を島根県立美術館で行うこともできました。
 私たちの活動をブログで紹介することで活動を知る方々が増え、今夏「中学校美術Q&A 島根大会」では「みるみるの会」の活動報告ができましたし、「学び研 島根大会」でもレポートを発表させていただきました。県外に多くの知己を得られたのも「みるみるの会」が対話型鑑賞の普及と会員相互のスキルアップに精進していることが認められたからではないかと思っています。会員も3年の間に10名となりました。男性も1名会員となり、女子会(?)を脱却できたこともうれしいことでした。「みるみるの会」のつながりは年齢差や性別、職種を超えて広がっています。島根県は東西に200キロを超える長い県ですが、仲間のつながりを礎に美術教育がもっと盛んになっていくつながりにしていけたらよいと願っています。
 私の今年の最後の活動は、地元の大社幼稚園で「みるみるの会」を始めたことです。
初回は12月10日に、幼稚園生の私にとっての定番、「径」(小倉遊亀)をみて、話してもらいました。園児たちは、初めての鑑賞とは思えないくらいしっかりとお話をしてくれました。2回目は1月に、3日目は2月に計画しています。園児たちと楽しいひと時を過ごしたいと次の会が今から楽しみです。
 また、石見美術館学芸員の廣田会員は看護学校の学生を対象に対話型鑑賞を始めるそうです。看護を学ぶ学生に対話型鑑賞を行うことは大変に有益だと思います。この活動も医療現場で認めてもらえるものになっていってほしいと思っています。
 最初は鏡のようだった水面に、小さな小石をひとつ投げ入れた(みるみるの会を始めた)ことで、波紋が起こり、その波紋がさらに次々に波紋を起こすようなそんな動きにしていきたいと願うところです。波紋って、ちょっとネガティヴな意味合いが強いですが、波紋を巻き起こすような、パワーのある活動にしていきたいと思うのです。そうすることで、中学校の美術の選択教科化に歯止めをかけなければならないと思います。
 少子化が進み、島根県の教員は減少の一途です。正規の美術教員が配置されない中学校は増加の一途です。「みるみるの会」は対話型鑑賞の普及のみならず、島根の中学校美術を元気にするサークルとして今後も活動していきたいと考えています。
 2014年、今年1年も、このブログをご愛読いただきありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。
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学び研 IN 島根 2日目のレポートです!!

2014-12-21 09:02:17 | 対話型鑑賞
大変遅くなりましたが、学び研2日目のレポートを上坂さんが送ってくれていました。1日目のレポートからかなり時間が経ってしまいましたが、ご容赦ください。
2日目の報告に夢中になって、画像を撮り忘れました。それほど熱いレポートの数々でした・・・。


県外から島根へ その2
>
> Q&A事務局の加藤さんから、中学校美術Q&A発足の経緯と、二年間の活動で見えてきた「新しい動向」「現在の課題」「未来への課題」について、真摯でありながらコミカルに、説得力あるお話をいただきました。
>
> まず、
> 加藤さんのQ&Aに至る前の物語は、大学卒業後すぐに中学校の美術教育を担当し、担任として生徒たちと向き合う日々から。
> 教材研究の時間が思ったよりとれない現実に、ふと、このままでは学生時代に培ってきたものもいつか「空っぽ」になってしまうのでは、という一人の若者の率直な気持ちに、とても共感しました。
> しかし、なかなかできないなーと思ったのは、その、行動力。
> 何かを思った加藤さんは潔く決断し、「何か」を求めて退職。Webデザインの技を磨かんと武者修行に出ます。
>
> そんななか、北海道の山崎先生のサイトに出会い、問い合わせ、提案に出かけています。Webデザインをよりよくできますという加藤さんからの申し出に快諾した懐の大きい山崎先生。
>
> 最初は「題材共有サイトの立ち上げ」を構想していたという加藤さん。
> しかし、山崎先生との出会いから、題材共有サイトは、美術教育の方法ばかりが模倣される危険性も伺い、「美術教育の意義」を伝えるネットワークをつくろう!と提案されます。
>
> また、梶岡先生の提案でネーミングされた「Q&A」誕生のやりとりなど、楽しい冒険のような展開。最初は三人で動き始めた様子でしたが、山崎先生の北海道の先生方とのネットワークも懐深く、盛会に第1回目が開催されたのでした。
>
> 大学院の学生として加藤さんの研究課題は「Q&A」の活動報告。
> この二年間で見出す美術教育の「新しい動向」「現在の課題」「未来への課題」を伺いました。
>
> 新しい動向 その一
> ☆作品展示への意識に、「作品に生徒のコメント添える」「全員の作品を展示」という動向が。つまり、作品展を見た人も、その生徒たちの「今」を感じられる展示の仕方です。
> その他、『生徒作品集』に「先生の眼差しコメント欄」も掲載されていたり。
> 地域によっては、展覧会作品には「生徒のコメントが必須事項」になっているとのこと。
>
> 発表から、
> 「上手い作品の展示」というより、美術を通して「互いを尊重できる土壌づくり」が成されているかな、というところに、展覧会の見どころがシフトチェンジしようとしているのだと受け取りました。
>
> 「Q&Ain島根」で発表していただいた秋田の田中さん企画の展覧会「美術の授業」展のことも報告していただきました。
>
> 日頃の授業を様子も伝わるように、
> 「生徒の授業風景」や「活動の様子やワークシート」の展示もされています。
>
> 新しい動向 その二
> 研究会の持ち方がカジュアルな方向へ。少子化や授業時数の削減により、美術教師の人数が少ないという現実問題に直面しながら、改めて、「つながることへの関心」が高まっている様子です。
>
> 上手い下手で作品を語るのではなく、クラス全員分の作品を持ち寄り、子どもを語ることから交流をはじめる。
> 実際に、そのような交流会も行われているのですね。
>
> 公的な研究会でも、そのような活動が行われていくといいなと思いました。
> 子どもたちがどんなことを考え、感じているのかを協議し合う場は、キャリア教育の意識ももって、意義あるものとして「小中連携協議会」とか「中高連携協議会」のように設定してもいいのではないか、など思ったり。
>
> 現在の課題 として、
>
> 授業時間の削減は、美術教育の意義が浸透していないという現実を反映していると考え、2016年改訂にむけて、改めて、美術教育の意義は
>
> 必須として
> 21世紀型学力
> 発達段階
> 伝統文化
>
> 中山の必須教科発言の影響
>
> 課題その二
> 20年間で、三分の二削減
> 美術は、最も若い先生がいない
>
> 校内で学びあう機会の減少
> 一人配置
> 地域で学びあう機会も
> 若手は運動部へ配置。
>
> 美術科教員
>
> 三重県
> 講師割 45パーセント
>
> 正規教員不在 岩手沖縄
> 2009
>
> 2014三重県 37パーセント
>
> 教科別に研修
>
> 中学校教員が小学校へという動向も。
>
> 未来への課題
> 学級数減少により、
> 財務省による40人学級
>
> 2040年 子どもの数はさらに減少
>
> ネットワークの必要性
> 公的な研究会を盛り上がる
>
> 評価に対する事例研究
> ▷会員同士で意見交換で研修
>
> 全ての子どもは、学ぶ存在
>
> 声を聴くことから、仲間へ。
>
> 大きな母体と、横とのつながり

 私の教職生活は残りわずかになってきましたが、加藤さんや岩佐さん、山口で来春からまた新たな一歩を踏み出すことになった上坂さんなど、若い人たちが今の教育現場で美術教育をしっかりとやり続けていくことが、未来を決めていくのだと思います。危機感を感じ、声を上げ、仲間を求め、大きなうねりにしていきたいと思いますし、その若い人たちの後押しのできる存在でありたいと、心を新たにしました!!
 
なにかやらなくちゃね!!何にも始まらない!!
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ACOPのオーディションに行ってきました!!

2014-12-16 20:07:27 | 対話型鑑賞


12月6日、7日、春日さんと房野の2人で京都造形芸術大学のACOPの<オーデション>を見てきました!ACOPは同大学のアートプロデュース学科(通称ASP学科)の1回生の必修科目で、「対話を基本とした鑑賞教育」(アート コミュニケーション プロジェクト)のことです。この単位が取れないと卒業できないという厳しい科目で、過去に涙した学生は数知れず・・・。

「みるみる」は「対話型鑑賞」を島根に普及することを目的に発足した美術教育サークルですが、その源流はASP学科教授である福のり子教授の教えであるといってもよいでしょう。6年前に私が対話型鑑賞を学びたい!と春日さんに相談したときに紹介されたのもこのACOPでした。

ACOPは、ASP学科の学生がナビゲーターとして複数の成人鑑賞者を前にアート作品の鑑賞会を進めていきます。(今年、会員の金谷さんが鑑賞ボランティアとして参加されています。詳しくは金谷さんのレポートをご覧ください!)
でも、このナビゲーター、実はACOP本番の鑑賞会までにずいぶんと厳しいオーデションをパスした学生だけがすることができるのです。以前、私は本番には参加したことがありますが、春日さんいわく、「オーデションの方も、ビシバシ学生がダメ出しされ、鍛え上げられていく様子が見られて、勉強になる」とのこと。ぜひ、そちらを見てみたい!ということで、週末の弾丸京都への旅となったのでした。
福先生はいつものように私たちをあたたかく迎えてくださり、6日午後、7日午前のオーデションに参加することができました。いつも、ありがとうございます!

さて、学生さんのナビゲーションですが、ここへ至るまでにグループの仲間と何度も練習を重ね、すでに経験済みの上回生がメンターとして指導に当たっています。福先生の「合格!」の声に本人はもちろん、切磋琢磨してきた仲間が涙を流して抱きあって喜ぶ姿に、ここまでの艱難辛苦が伝わってきました。
けれど、思うようにナビができず、「声が小さい!」「人の話を全然聴いてない!」「なぜ、ここで情報を伝えないのか!」「そんな情報はここではいらない!」などなど、福先生の叱咤に思わず固まってしまう学生も…。私自身も「自分がこのナビなら、どうパラフレーズするのだろう?」「この作品の情報を伝えるタイミングは??」と頭をフル回転させて考えさせられました。

VTSと呼ばれる対話型鑑賞では、情報を一切出さず、すべての意見を受け入れ、どの意見も平等に扱う…となっていますが、ACOPでは作品の情報を伝えます。そこは「みるみる」も同じで、授業という限られた時間と回数でいかに深く鑑賞を促すかという目的のもと、最近は作品情報の提供による効果を、実践を通じて大いに感じています。情報を提示するタイミングひとつとってもACOPのオーデションは大変勉強になるのです。

そういう意味も含めて私が今回、個人的に特に気になった作品は、ソフィ・カルの「盲目の人々」という、写真作品です。
生まれつき全盲の男性の写真の横には「あなたにとって美とは何か?」「視野の果てまでも続く海」というテキストがあり、その下には作者(ソフィ・カル)による海の写真が置かれている。3つのフレームで一つの作品となっているシリーズです。

「みるとはどういうことなのか」をこの作品をみる私たちに問いかける、ちょっと見では???だけれど、対話を重ねることで、どんどんいろんな考えが浮かんでくる作品です。この作品は「この写真の人は生まれつき全盲です」という情報なしでは語れません。この情報があってこそ、テキストの意味、人と人とが共有することができる感覚、視覚と「みる」ということの関係など、対話が深まっていくのがわかります。
鑑賞は「みる」ことから始まるのですが、その根本を問うような、普段私に染みついている「みる」という概念そのものを揺さぶられる作品だと感じました。とても興味深いのですが、果たして、自分がナビをするなら…?う~ん。勇気がいるなあ(^_^;)
でも、こんな風に福先生に鍛えてもらえるなら、やってみたい!とも。学生のみなさんはもうわかっているとは思いますが、福先生の叱咤は愛なのだよ。その愛に応えるのだ!みんな!

この学生さんたち、思えば私の子どもと同世代。うちの息子や娘はこの授業に耐えられるか!?なんて、つい、最後は母の視線で学生さんたちを見てしまいました。帰りの新幹線の時間が来て、残念ながら私たちはオーデションの途中で退出となり、ナビに行き詰っている学生さんにガッツポーズでエールを送りつつ、その場を後にしたのでした。

また、行きたいなあ。ACOPのオーデション。「12月にACOPに行かないと、1年が終わらない気がする」と言ってた春日さんの気持ちがわかった京都での週末でした。
 
 房野さん、レポートをありがとうございました。

いかに実りのある、いわゆるRICHな会話が弾む鑑賞にするためには、ナビゲーターは研鑽に励まなければならないと、思いを新たに師走でにぎわう京都を、慌ただしく後にしたのでした。
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ちょっと遅くなりましたが、学び研 IN 島根のレポートです!!

2014-12-11 21:04:04 | 対話型鑑賞
みるみる会員の金谷さんから「学び研」のレポートが届きました。
画像も一緒にお届けしたいのですが、なんだか調子が悪くてUPできません。

とりあえず、レポートのみをUPしますので、ご覧ください。

「学び研」画像は、Miyuki Kasuga のFBでご覧ください。



みるみるの金谷です。先月末、11月29日に松江市で開かれた「美術による学び研究会2014inしまね(第9回鑑賞教育フォーラム)」に参加しました。

大会テーマは、「ナイものはナイ!~無から有を生み出したい!」。このテーマに事務局からのメッセージとして・・・「ここには二つの意味があります。『無いっていったら何も無い』と『無いものなんて無い』。よくよく考えてみればいろいろ見えてくる、もっとじっくり見つめて、自分なりの意味を見つけ出すことができれば・・・ そんな大会を目指しています。」と。私は、「何もナイ!」と言われがち、言いがちな島根暮らしが、今の自分にはちょうどいいのですが、県外からいらした皆さん「島根」はいかがでしたか?

さて、学び研inしまねの第1日目は、「島根から県外へ」と、「科研中間報告 美術鑑賞教育フォーラム」の2本立てでした。

「島根から県外へ」のトップバッターは、島根石見美術館 主任学芸員 廣田理沙さんの「石見美術館mite展から」です。「mite展(mite!ね。しまね 島根県立美術館のコレクションを中心に)」とは、アメリア・アレナスをゲスト・キュレーターに招いての、島根県内初の「鑑賞」をテーマにした企画展です(会期:平成24年2月11日~3月26日)。この会期中、みるみるの会でも一般のお客様を対象に、ナビをさせていただきました。廣田さんの発表の中で、「作品をみるために体を動かすきっかけが、展示室内にちりばめられていた」というのが心に残りました。確かに、そうだったなぁと思うのと同時に、「みる」ということは体全体を使って行うことでもあるなぁと思いました。「みる」ために近づいたり、離れたりということはもちろんですが、「みて、考える」ときに、知らずしらず体が動いていたり、「みて、考えたこと」を伝えるために体や言葉を使って表したり、それらを受けとめようと身を乗り出して「みたり、聴いたり」するなど、「みる」ことはなんて動的なんだろうと。そして、「mite展」には、体を動かすきっかけと、それらを受け入れるスペースがあったなぁと、思いました(とはいえ、人は背面が見えないもの。目の前のことに夢中になっている方が、後ろにある作品にぶつからないように、そーっとフォローしたこともありましたね)。質疑応答のなかで、廣田さんからアナウンスがありました「島根県立石見美術館研究紀要 第7号」をみると、作品の構成や展示、石見美術館独自の取り組み等についてよりよく知ることができます。石見美術館のHPからチェックしてみてくださいね。
そういえば廣田さんが、今、みるみるメンバーになっているのも、この「mite展」がご縁でしたね。「mite展」後も、みるみるの会は毎年、石見美術館で対話型鑑賞会をさせていただいています。今年度は、来年1月から2月にかけて予定をしております。詳細は後日、お知らせしますね。

続いて、安来市立第一中学校 教諭 仲西貴志さんによる「はまだ子ども美術館の取り組み」として、「浜田市における美術品悉皆調査」の報告がありました。はまだ子ども美術館の学芸課長 神(じん)英雄さんが地域美術の掘り起こしとして取り組まれ、まとめられたものを仲西さんが発表されました。この調査をもとに、はまだ子ども美術館で展覧会も開かれました(「浜田の美術」2013年、「日本の中のはまだの美術」2014年)。なじみのある絵が美術館に展示してあることに驚いたり、新たな出会いがあったりするなかで「浜田にも地域の宝ってあるんだ。無いものなんて無いんだなぁ」と思いました。また、母校の小学校で高いところに飾ってあった絵が、見やすい位置に飾りなおされたのを実際に目にしました。それらのことからも、この調査は、地域の宝を掘り起こすだけではなく、地域のみなさんや子どもたちの美術を愛好する心を耕し、種をまいていったように思います。この調査によって、地域の宝が再発見されたのはもちろんですが、こどもや学校、地域の人々に変化がみられたというのが、私自身一市民としてうれしいことでした。

さて、「島根から県外へ」のトリは、出雲市立大社中学校 主幹教諭 春日美由紀さんによる「学校と美術館の連携(中国造形教育研究大会を通して)」です。発表前のスクリーンには、バーンと「しまねっこ」と松江城、BGMは「しまねっこのうた」(歌:ことのは)が。その次の表題のスライドには、「しまねスーパー大使 吉田くん」が登場!・・・派手ですな。と思いつつ、島根にも面白いものがあるじゃん!と、ひとりにやにやしていました。 
春日さんの発表の中で、造形研当日の様子がビデオで紹介されました。その中で、学校と美術館の連携について、突撃インタビューしたにもかかわらず、快く応えてくださった島根県立美術館 学芸員の上野さん、岡山大学の清田哲男先生、ありがとうございました。
あれれ・・・発表の内容に触れていませんね。中国造形研の様子は、みるみるブログのバックナンバーに詳細がありますので、そちらをご覧いただけると喜びます。

休憩をはさんで「科研中間報告 美術鑑賞教育フォーラム」がスタート。
北翔大学 准教授 山崎正明先生のイタリア視察の報告では、フィレンツェのアカデミア美術館で、ダビデ像をじっくりみつめるカップルの写真が印象的でした。いいなぁ、あんな関係。正直、めちゃめちゃうらやましくって、憧れる!・・・って、失礼しました。作品を鑑賞する人を鑑賞(観察?)してしまうこと、私もあります。面白いです。作品を一人でみる面白さと、対話しながらみる面白さの両方を、子どもたちに味わわせていきたいなぁと、改めて思いました。日々の実践、がんばります!

続いて、東京国立近代美術館 主任研究員 一條彰子さんの「オーストラリアの美術館教育報告」です。原住民やアジアの一員としてのアイデンティティを大事にしていくことや、サスティナブル(持続可能)であることを、ナショナルカリキュラムにとりいれていることを聞き、驚きました。恥ずかしながら、私の中のオーストラリア像は、白欧主義で、夏のビーチでサンタがサーフィンしていて、分厚いオージービーフ・・・そんなものだったからです。アジアやアートとは、ほど遠い国と、勝手に思っていました。
オーストラリアの実践を紹介されるなかで、心に残ったことばは「子どもが、自分の考えを作るのが重要」と、「意味の分からない作品は、人間(友だち)と思って付き合えばいい」です。国を超えても、大切なことは共通しているし、作品を友だちのように思ってみるなんて面白いなぁと思いました。

 第1日目のラストは、大分県立別府青山高等学校 教諭 岩佐まゆみさんによる「山水図屏風の鑑賞授業の追試検証」です。まず、長机の上に立ててられた、実物大のレプリカ「日月山水図屏風」(六曲一双、作者不明)の迫力に圧倒されました。いいなぁ実物大屏風、自分も作ってみたいなぁ。と思っているところへ、岩佐さんが「何が描かれているか」参加者に投げかけられました。山、松、月、波、雪、桜、等々声が上がり、それらから四季が表されていることが分かったのですが、なんだか順番がおかしい。右隻の右端から、春、夏、冬、秋と並んでいるのですから。でも、よくよく位置関係も考えながら、意見を聴きながら、見てみると、ぐるりと「春夏秋冬」となっている!目から鱗が落ちました。まさか立体的(俯瞰的)に描かれているとは、思いませんでしたから(ぜひ、画像を検索してみてください)。
高校での授業の様子を写したビデオのなかにも、「あっ、そうか!」といった生徒の気づきが、いくつもありました。きっと脳味噌をフル回転させながら、鑑賞をしている証なのでしょうね。それと、授業中に撮った写真をすぐにプリントアウトできる教室環境は、いいですね。自分の授業でも必要に応じて、校内で機材を調達したり、工夫したりして、取り入れてみようと思いました。

発表終了後には諸連絡があり、その後「懇親会には、タオルか手拭いを持って集合!」という、謎の指令が・・・。懇親会開始時間に会場に行くと、参加者への謎のレクチャーが始まりました。タオルを頭に被り、あごの下で端を結び、腰を落として、両手を体の前で重ねれば、「どじょうすくい」スタイル!?の出来上がり!!そのまま、安来節の曲に合わせて懇親会会場に入場です。そんな、島根感たっぷりにスタートした懇親会では、会いたかった方々や、はじめましての方々から、たくさんのパワーや実践につながるアイデアをいただきました。ありがとうございます!

さて、学び研しまねの夜は、まだまだ続きますが、私はお先に失礼して一路京都へ。京都造形のACOPにいってきまーす!と、松江を後にしたのでした。
では、美術による学び研究会2014inしまねの第一日目のレポート、ここまで読んでくださりありがとうございました。
二日目のレポートも、お楽しみに!
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