初めての対話型鑑賞だったので、記述したワークシートには結構細かいところまでつっこんでコメントを入れました。
「みる・考える・話す・聴く」活動を通しての鑑賞で大切にすることは、作品の中に「根拠」があり、その「根拠」に基づいて自分なりの作品の「読み取り(解釈)」を行うことで、突飛もない意見や妄想にならないように、客観性をもたせ、友だちが意見を聞いた時に「なるほど」と思ってくれるような意見にしていくことが大事だと思っています。もちろん、友だちと意見が一致する必要はありません。でも、「その意見にも一理あるね!」と同意してくれることは必要ではないでしょうか?
では、それぞれのクラスごとにお便りを創りましたので、紹介します。
まずは1組から・・・。
初めての対話型鑑賞でしたが、1組は男子を中心に発言が飛び交い充実した鑑賞会になりました。アンケートの結果も「みる・考える・話す・聴く」に関して意識して取り組んだ様子が伺えました。ただ「話す」ことに関しては、発言できなかった人が多いので仕方がないと思います。対話ができる時間は30分程度に限られているので全員が発言することは不可能です。だからこそ重要なのが「聴く」ことなのです。皆さんのワークシートに書かれた記述を読むと、友だちの話をしっかりと聴いて考えて、書いていることがよくわかりました。発言はしてほしいのですが、無理でも、しっかりと聴いて考えたことを書けるようにしていきましょう。ワークシートに評価とともに、どんなことを考えていくといいのかについてアドバイスをしていますので参考にしてください。
では、35名の記述の中から、ひとりの人の記述を紹介し、よいところや、もう少し考えるとよいところを示しますので今後の参考にしてください。
僕はこの絵をみてすごく古いイメージがわきました。いすやゆかをみればわかるけど、すごく使われていると思いました。右から光があたっていると思いました。理由はいすの右前の脚と左前の脚を比べて右前は明るいのに、左前は暗いのでそう思いました。A君はドアは使っているから色あせていると言っていたけど、僕は光があたっているからドアが色あせていると思います。僕は、この絵の床はレンガの階段だと思います。左下のほうを見るとすごく暗くなっているし、レンガとレンガをつなぐ白い線がみえないので、左下の部分は階段の側面じゃないかと思います。僕はこの絵を描いた人はこのいすに愛着があったと思います。こんなに古いいすを残しているし、この絵の中央にドンといすを描くということはこの絵はいすがメインなので、このいすがメインということは、愛着があるから描こうと思ったと思います。N君が言った、手作りであるというのは僕も賛成です。背あての一番上の木がゆがんでいるので、すごく手作り感が出ていると思います。あと、木の部材、ひとつひとつに直線がなく、全て、ゆがんでいるので手作りだと思いました。僕は、ドアの金具がさびているということから外だと思います。ドアがさびるということは風にあたったり、雨などで濡れたりするからだと思いました。
この人のよいところは、「いすが描かれたこと」に関する自分なりの解釈をみえているものから考えて行っているところです。真ん中にドンと置かれているから、いすがメインであること、そのことから、「いすに愛着があるのではないか」と考えているところが素晴らしいです。ただ、「すごく使われている」ことに関する根拠が示せていないことや、いすが「レンガの階段に置かれる」か、といった常識的に考えたとき、どうなのか(階段や階段のそばにいすは置かないだろう)という客観性がもう少しもてるともっと読み取ったことに共感してくれる仲間が増えると思います。記述の仕方もひとつひとつの読み取りを挙げ、最後に「いすの描かれた」ことについて書くと流れがよくなります。
続いて2組です。
初めての対話型鑑賞でしたが、2組は男子も女子も積極的に発言して充実した鑑賞会になりました。アンケートの結果も「みる・考える・話す・聴く」に関して意識して取り組んだ様子が伺えました。ただ「話す」ことに関しては、発言できなかった人が多いので仕方がないと思います。対話ができる時間は30分程度に限られているので全員が発言することは不可能です。だからこそ重要なのが「聴く」ことなのです。皆さんのワークシートに書かれた記述を読むと、友だちの話をしっかりと聴いて考えて、書いていることがよくわかりました。発言はしてほしいのですが、無理でも、しっかりと聴いて考えたことを書けるようにしていきましょう。ワークシートに評価とともに、どんなことを考えていくといいのかについてアドバイスをしていますので参考にしてください。
では、38名の記述の中から、ひとりの人の記述を紹介し、よいところや、もう少し考えるとよいところを示しますので今後の参考にしてください。
私はこの絵は、人が住んでいる部屋で、その人が好きだった場所をあの中におさめたと思います。理由は、まず、タバコなどがある時点で、人がそこにいないと不自然に思います。私の想像では、おじいさんの1人暮らしで、角の方にある箱のようなものの隣には暖炉があると思います。あのいすは色が黒ずんでいたりするところから古いいすだと思います。だから住んでいるおじいさんはそのいすが大好きでそのいすに毎日座って暖炉などであたたまっていると思います。部屋の床が黒ずんでいるところから、そうじがきちんとできていないと思うので、男の人の1人暮らしで、全体的に古いところから、おじいさんだと思いました。おじいさんの年齢になると、やることがなくなってくると思うので、自分の好きな場所を絵におさめたと思います。
この人のよいところは、作品のみえているものひとつひとつについてしっかりと考えたうえで、「そこからどう思うのか」という作品全体をみての考えまで考えられているところです。それは「自分の好きな場所を絵におさめた」という記述です。最後までよく読むと、しかも、この絵を描いたのもおじいさん自身だと言うことが分かります。「イスが古い」「床が汚れていて、掃除が行き届いていないから、男の人の1人暮らし」「おじいさんが一人暮らし」「年取って暇だから自分の好きな場所を絵に描いた」と考えが論理的に組み立っています。このような作品の読み取り(解釈)ができていくと、作品からのメッセージが読み取れると思います。
ただ、記述の中で暖炉があるのではないかと言うことに対する作品の中のどこからそう思うのかについての根拠が示されていないので、この考え(解釈)は想像の域を出ないので客観性はないといえます。
自分の考えが「作品のどこからそう思ったのか」を踏まえて、さらに「そこからどう思うのか」を考えていくことができれば、敷居が高いと思える「芸術作品」も身近に感じられるようになります。次回もお楽しみに!!
最後は3組です。
初めての対話型鑑賞でしたが、3組は男子が積極的に発言して充実した鑑賞会になりました。アンケートの結果も「みる・考える・話す・聴く」に関して意識して取り組んだ様子が伺えました。ただ「話す」ことに関しては、発言できなかった人が多いので仕方がないと思います。対話ができる時間は30分程度に限られているので全員が発言することは不可能です。だからこそ重要なのが「聴く」ことなのです。皆さんのワークシートに書かれた記述を読むと、友だちの話をしっかりと聴いて考えて、書いていることがよくわかりました。発言はしてほしいのですが、無理でも、しっかりと聴いて考えたことを書けるようにしていきましょう。ワークシートに評価とともに、どんなことを考えていくといいのかについてアドバイスをしていますので参考にしてください。
では、39名の記述の中から、しっかりと「どこからそう思うのか(根拠)」に基づいて考えることの出来ているものを紹介します。今後の参考にしてください。(でも、これが模範解答というものではありません。)
私はこの絵は屋内を描いていると思いました。それは、外では感じないような暖かさがいすの黄色や床の赤・オレンジ色から伝わってきたからです。そして、このいすを使っている人が年を取ったおじいさんくらいの人だと思いました。若い人だともう少しおしゃれでキレイないすを使うと思うけど、木目のような模様が入っていて、おそらく木でできているこのいすはパーツの形や太さがバラバラでデザインもすごくシンプルだからです。そしてこの部屋は物があまり描かれていないので、けっこうさびしさも感じられるので、その人は1人でここに住んでいると思いました。このいすとパイプはその人が長年愛用していたのかなと想像しました。それは、後ろの壁のうすいくらさに引き立てられてすごくいすの色の暖かさがあって、愛情や思い入れがあるからこういう表現ができるのかなと思ったからです。
この人のよいところは、色から受ける印象もしっかりと受け取っているところです。自分の考えが、作品のどこからなのかということが描かれているものの色からも考えられていることは大切です。色や形、描かれているものが根拠になるからです。根拠があいまいなものや作品から離れている場合は、自分勝手な妄想でしかないので、友だちを納得させることは出来ないと思います。友だちが「なるほど!」と唸ってくれるような論理的な意見を考えなくてはいけません。そして、次に大事なことは「そこからどう思うか」という、自分自身の作品に対する解釈です。上記の人も自分自身の解釈ができていますが、「では、なぜ、パイプの載ったいすの絵は描かれたのか?」ということについての記述はありません。また、描いたのは誰なのでしょう?そんなことまで考えられるといいですね。
作品からみえるものひとつひとつを細かくみて・考えたら、次は、それらを踏まえて、作品全体をどうみて解釈するのかを次回の課題にしていくと、もっと作品はあなたたちに語りかけてくれます。
作品をどう読み解いていくのかについては、いろいろな意見があると思います。このことについても「正解」は無いのではないかと思います。私は、このようなやり方で、生徒に描かれているものを詳細にみていくことによって、みえてくるものを論理的に構築して解釈していくという鑑賞を実践しています。