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ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

3年生で実践した松本竣介の「立てる像」の生徒の解釈と感想をお届けします!!

2016-01-28 17:06:05 | 対話型鑑賞


ひとりで実践をするので、鑑賞風景を画像に残すことができません。すみません。

2学期末に松本竣介の「立てる像」を3年生で鑑賞しました。その時の生徒の「解釈」と「感想」をお伝えします。

解釈
この絵の背景の地面は茶色や黒のくすんだ色をしていて、空襲か空襲による火事で焼けただれてしまったんだと思います。建物(背景の)も無残に壊れていて元の形もいまいちよく分からないような状態になっています。
建物をあそこまで破壊することができるのは空襲の他には無いと思いました。そんなところから戦争中の様子を描いたものだと考えました。背景の空は灰色で雲も多いので、曇り空なんだろうなと思いました。空の色が灰色だということで絵の雰囲気も少しどんよりとした感じになっていると思います。もし、空が青空だったらもう少し晴れやかな雰囲気になっていると思います。空がどんよりした灰色だから立っている少年の雰囲気もどこか物悲しそうな雰囲気になっていると思います。この絵をみて、主人公?の少年の様子が寂しそうだけれど単に寂しいだけなら、もっとうつむいたり座り込んだりしてもいいのに、この絵の少年はまっすぐに地面に立っています。
戦争でいろんなものを失って(辺り一面焼け野原だから、住んでいた家も焼けてしまったのかも?)「悲しい」という感情もたしかにあると思うけれど(顔の色が全体に暗いところから)、一方で焼け野原で立ち上がって、これから頑張って生きていこうとする意志もこの絵から感じられました。
表情は遠くを見る感じに辺り一面の焼け野原を見渡してボーゼンとした感じになっています。でも、口元は引き締まっているので、どんなことにも耐えて、のたうちまわってでも生き抜いてやるという決心も表情にあらわれていると思います。
この絵は背景に無残な建物の残骸があることと、どこか悲しそうだけれど何かを決心したような表情から戦争の悲惨さと、そこからはい上がって生きてやるという意思があらわれているのではないかと考えました。(女子)

先生の言われたことや周りの意見をきいて、この作品は戦争の時の絵だと思いました。まわりが茶色や黒とかで描かれているので、焼け野原だと思ったからです。(金ボタンを付けて黒い服を着ていたので学ランだから若い男)。少年は左手でにぎりこぶしをつくっていたので戦争にいけなくてくやしいという気持ちもあったと思います。でも、左手はこぶしをつくっていなくて手の力がぬけているかんじだったので戦争が終わって安心しているのかなと思いました。少年の顔がまゆげが逆ハの字になっていて口が引き締まっていて色が暗い感じの色になっていたので悲しいことやつらいこと(絶望している)があったのかなと思いました。
少年は斜め上を向いていて、目が上の方をむいていたから遠くをみていると思います。この少年の目線の先にはたぶん背景と同じような感じになってしまった自分の町があるのかなと思いました。これらのことから自分の町を守れなかった悔しさと戦争が終わって安心していることが分かると思います。
この作者は戦争で大切なものをたくさんなくしてきたと思います。だから戦時中に早くこの戦いが終わってほしいと思って、この絵をかいたと思います。上記に少年の目線は自分の町と書きましたが、それだけではなく、これからのことに希望をいだいているというのもあると思います。この絵は絶望の中にも希望があるということが伝えたいのかなあと思いました。(女子)

戦争の時代だと思った。全体的に黒に近い色であったり、どんよりした感じがしたので戦争の時代だと思った。この男の人は作業服を着ているので、たぶん私たちと同じくらいか高校生くらいだと思う。大人は戦争に行っているけれど、子どもは作業をしたりしていると本に書いてあったので、そう思った。
この男の人が見ているものは、焼け野原だと思うけど、この人の中には固い意志があると思います。怒り、苦しみ、光、不安など、どうしようもないこの状況に立ち向かっていっているような気がします。手が左手は握りしめているようだけど、右手はダラ~ンとしています。たくさんの異なる気持ちがぶつかりあっていると思います。先生があとから言われて、なるほどと思ったことがあります。耳が不自由だったということです。耳が不自由だからみんなと一緒に戦えない。自分は役に立てないだという、不甲斐なさがどこか悲しげで、でも、キリッと意思のある顔から感じました。男の子が異常に大きく描いてあるのは1人の人として、二度と戦争はしたくない、してはいけないという決意の大きさだと思います。(女子)

僕はこの絵をみて、この男の人は自分は男であるにもかかわらず、戦地へ行くことができなかったという残念な気持ちと、戦争をしてもいいのだろうかという戦争を反対する思いを両方持っている人だと思いました。なぜなら、この人は左手の拳を強くにぎりしめていて、足も大きく開いて、何か怒りのような思いを持っているようにも見えますが、肩は落ちていて、自分が戦争に行けなかったのを残念に思っているという気持ちもあるように思えたからです。遠くを見ているようなその目線は、きっと、未来のことを考えているのではないかと思います。自分は戦地に行けなくても、行けなかった人の気持ちを、絵に描いて表そう、その時に、自分の戦争に対しての反対の気持ちも一緒に表そうと、そう思って、遠くを見ている、拳を握りしめている絵にしたと思いました。また、この絵にある木が枯れていることから、冬の季節だと思いました。冬という寒い季節であるにもかかわらず、サンダルを履いている姿から、この人は、家を飛び出してきたか、靴を持っていない人だと思いました。
また、この人が大きく描かれている理由とした拳もにぎっている姿から、自分自身の心を大きくさせたいと思っているのではないかなと思いました。戦争の時代には、飯塚さんが言われたとおり、1人1人の命が大切だというよりも、1人1人が戦争に勝つための道具だと思われていたのかも知れません。その中でこの青年は、自分自身が強くならなければならない。こらからの未来と背負っていかなければならないという強い決心をしたと思いました。
また、全体的に暗い色を使うことで、その時代の雰囲気をあらわしていると思いました。きっと、この時代はとても大変な時代で、人々も暗く疲れていたはずです。その中で、この青年は、自分の心を変えようとしていると思いました。(男子)

私はこの絵をみて、真ん中に立っている男の人のくつが草履のようなもので、現代にはあまりこういう服装の人は見られないし、男の人より小さく見える建物はおそらく遠くにあると思って、でも、近くには建物はないけど、土台のようなものが描いてあるし、焦げ茶色に塗ってるので焼け跡なのかなと思ったので、戦時中の場所を描いた絵だと思いました。そして、男の人は右手は脱力したようにダラッと開かれているけど左手は何かを決意したように握られていて、戦争で変わり果ててしまった町をみて、悔しさや悲しさを感じて放心していたけど、その戦争に負けず、これからも生きていこうと決めたという心の切り換えの瞬間なのかなと思いました。さらに、その場をみず、遠くの方をみているので、今の現状に打ちひしがれる気持ちより未来に向かう気持ちの方が大きいと想像しました。
そして、空の色が灰色がかった雲で覆われたような印象を受けさせるし、実際戦時中に描かれた絵だと知って、この絵を描いた作者の気持ちが表れているなと思いました。晴れた青空ではなく、重く沈んだ色は戦争の悲惨さや悲しさが感じられます。(女子)

感想
今回は2回目の鑑賞でしたが、前回よりも内容が難しかったです。この授業をしたら、小さな情報を発展させて考える想像力がつくなと思いました。内容が難しい分、シンプルな絵ということもあり、見やすい絵だったので、いろいろ分かることも多かったです。美術のセンスは無いかも知れないけれど、絵をみる目はもちたいなと思いました。(男子)

やはり、この企画は好きです。しっかりとその絵をみていることができるので、好きです。また、やりたいです。1人でやるより、みんなでやるのが楽しいと思います。(男子)

この鑑賞活動を通して、絵をみながら友だちの考えをしっかり聴くことで自分の考えと比較しながら鑑賞することができました。皆と意見を話し合ったりする中で自分の考えをより深めることもできるし、全く違った視点で鑑賞したりすることができるので、楽しめました。(女子)

今回は自分の思っていた意見と同じ人がけっこういました。自分の思っていたこと以外にも気付いていた人やもっと深いところまで考えた人がいて、この絵のことについてしっかりと考えることができました。他の意見をきいてなるほどなあと思う意見もあって、色々なことを考えさせられるような鑑賞会でした。(男子)

今回は2回目の鑑賞でしたが、前回より内容が難しかったです。この授業をしたら小さな情報を発展させて考える想像力がつくなと思いました。内容が難しい分、シンプルな絵ということもあり、見やすい絵だったのでいろいろ分かることも多かったです。美術のセンスはないかも知れないけど、絵をみる目は持ちたいなと思いました。(男子)

この学年は1クラス37名~40名に及ぶ人数構成で、2年生の時は落ち着きがなくとても対話型鑑賞を行う雰囲気ではありませんでした。3年生の1学期後半くらいから最上級生としての落ち着きが感じられるようになり、また、生徒と私との関係もいくらかは築けた気がしたので実践に踏み切りました。
1作品目はゴッホの椅子です。この時に1作品目からかなり高度な鑑賞ができたので、自信をもちました。
2作品目に松本竣介の「立てる像」はかなり冒険でしたが、3年生の2学期の後半にみせる作品はこれをおいて他には無いと思っているので、チャレンジしました。生徒は自身の現在と重ね合わせながら、戦争に関する知識も駆使して作品を鑑賞していきました。ここに披露したのはほんの数名の生徒のものですが、15歳という年齢が人をどのくらい成長させているのかを垣間見ることの出来る貴重なひとときでした。
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3年生で実践した松本竣介の「立てる像」の生徒の解釈と感想をお届けします!!

2016-01-28 17:04:57 | 対話型鑑賞


ひとりで実践をするので、鑑賞風景を画像に残すことができません。すみません。

2学期末に松本竣介の「立てる像」を3年生で鑑賞しました。その時の生徒の「解釈」と「感想」をお伝えします。

解釈
この絵の背景の地面は茶色や黒のくすんだ色をしていて、空襲か空襲による火事で焼けただれてしまったんだと思います。建物(背景の)も無残に壊れていて元の形もいまいちよく分からないような状態になっています。
建物をあそこまで破壊することができるのは空襲の他には無いと思いました。そんなところから戦争中の様子を描いたものだと考えました。背景の空は灰色で雲も多いので、曇り空なんだろうなと思いました。空の色が灰色だということで絵の雰囲気も少しどんよりとした感じになっていると思います。もし、空が青空だったらもう少し晴れやかな雰囲気になっていると思います。空がどんよりした灰色だから立っている少年の雰囲気もどこか物悲しそうな雰囲気になっていると思います。この絵をみて、主人公?の少年の様子が寂しそうだけれど単に寂しいだけなら、もっとうつむいたり座り込んだりしてもいいのに、この絵の少年はまっすぐに地面に立っています。
戦争でいろんなものを失って(辺り一面焼け野原だから、住んでいた家も焼けてしまったのかも?)「悲しい」という感情もたしかにあると思うけれど(顔の色が全体に暗いところから)、一方で焼け野原で立ち上がって、これから頑張って生きていこうとする意志もこの絵から感じられました。
表情は遠くを見る感じに辺り一面の焼け野原を見渡してボーゼンとした感じになっています。でも、口元は引き締まっているので、どんなことにも耐えて、のたうちまわってでも生き抜いてやるという決心も表情にあらわれていると思います。
この絵は背景に無残な建物の残骸があることと、どこか悲しそうだけれど何かを決心したような表情から戦争の悲惨さと、そこからはい上がって生きてやるという意思があらわれているのではないかと考えました。(女子)

先生の言われたことや周りの意見をきいて、この作品は戦争の時の絵だと思いました。まわりが茶色や黒とかで描かれているので、焼け野原だと思ったからです。(金ボタンを付けて黒い服を着ていたので学ランだから若い男)。少年は左手でにぎりこぶしをつくっていたので戦争にいけなくてくやしいという気持ちもあったと思います。でも、左手はこぶしをつくっていなくて手の力がぬけているかんじだったので戦争が終わって安心しているのかなと思いました。少年の顔がまゆげが逆ハの字になっていて口が引き締まっていて色が暗い感じの色になっていたので悲しいことやつらいこと(絶望している)があったのかなと思いました。
少年は斜め上を向いていて、目が上の方をむいていたから遠くをみていると思います。この少年の目線の先にはたぶん背景と同じような感じになってしまった自分の町があるのかなと思いました。これらのことから自分の町を守れなかった悔しさと戦争が終わって安心していることが分かると思います。
この作者は戦争で大切なものをたくさんなくしてきたと思います。だから戦時中に早くこの戦いが終わってほしいと思って、この絵をかいたと思います。上記に少年の目線は自分の町と書きましたが、それだけではなく、これからのことに希望をいだいているというのもあると思います。この絵は絶望の中にも希望があるということが伝えたいのかなあと思いました。(女子)

戦争の時代だと思った。全体的に黒に近い色であったり、どんよりした感じがしたので戦争の時代だと思った。この男の人は作業服を着ているので、たぶん私たちと同じくらいか高校生くらいだと思う。大人は戦争に行っているけれど、子どもは作業をしたりしていると本に書いてあったので、そう思った。
この男の人が見ているものは、焼け野原だと思うけど、この人の中には固い意志があると思います。怒り、苦しみ、光、不安など、どうしようもないこの状況に立ち向かっていっているような気がします。手が左手は握りしめているようだけど、右手はダラ~ンとしています。たくさんの異なる気持ちがぶつかりあっていると思います。先生があとから言われて、なるほどと思ったことがあります。耳が不自由だったということです。耳が不自由だからみんなと一緒に戦えない。自分は役に立てないだという、不甲斐なさがどこか悲しげで、でも、キリッと意思のある顔から感じました。男の子が異常に大きく描いてあるのは1人の人として、二度と戦争はしたくない、してはいけないという決意の大きさだと思います。(女子)

僕はこの絵をみて、この男の人は自分は男であるにもかかわらず、戦地へ行くことができなかったという残念な気持ちと、戦争をしてもいいのだろうかという戦争を反対する思いを両方持っている人だと思いました。なぜなら、この人は左手の拳を強くにぎりしめていて、足も大きく開いて、何か怒りのような思いを持っているようにも見えますが、肩は落ちていて、自分が戦争に行けなかったのを残念に思っているという気持ちもあるように思えたからです。遠くを見ているようなその目線は、きっと、未来のことを考えているのではないかと思います。自分は戦地に行けなくても、行けなかった人の気持ちを、絵に描いて表そう、その時に、自分の戦争に対しての反対の気持ちも一緒に表そうと、そう思って、遠くを見ている、拳を握りしめている絵にしたと思いました。また、この絵にある木が枯れていることから、冬の季節だと思いました。冬という寒い季節であるにもかかわらず、サンダルを履いている姿から、この人は、家を飛び出してきたか、靴を持っていない人だと思いました。
また、この人が大きく描かれている理由とした拳もにぎっている姿から、自分自身の心を大きくさせたいと思っているのではないかなと思いました。戦争の時代には、飯塚さんが言われたとおり、1人1人の命が大切だというよりも、1人1人が戦争に勝つための道具だと思われていたのかも知れません。その中でこの青年は、自分自身が強くならなければならない。こらからの未来と背負っていかなければならないという強い決心をしたと思いました。
また、全体的に暗い色を使うことで、その時代の雰囲気をあらわしていると思いました。きっと、この時代はとても大変な時代で、人々も暗く疲れていたはずです。その中で、この青年は、自分の心を変えようとしていると思いました。(男子)

私はこの絵をみて、真ん中に立っている男の人のくつが草履のようなもので、現代にはあまりこういう服装の人は見られないし、男の人より小さく見える建物はおそらく遠くにあると思って、でも、近くには建物はないけど、土台のようなものが描いてあるし、焦げ茶色に塗ってるので焼け跡なのかなと思ったので、戦時中の場所を描いた絵だと思いました。そして、男の人は右手は脱力したようにダラッと開かれているけど左手は何かを決意したように握られていて、戦争で変わり果ててしまった町をみて、悔しさや悲しさを感じて放心していたけど、その戦争に負けず、これからも生きていこうと決めたという心の切り換えの瞬間なのかなと思いました。さらに、その場をみず、遠くの方をみているので、今の現状に打ちひしがれる気持ちより未来に向かう気持ちの方が大きいと想像しました。
そして、空の色が灰色がかった雲で覆われたような印象を受けさせるし、実際戦時中に描かれた絵だと知って、この絵を描いた作者の気持ちが表れているなと思いました。晴れた青空ではなく、重く沈んだ色は戦争の悲惨さや悲しさが感じられます。(女子)

感想
今回は2回目の鑑賞でしたが、前回よりも内容が難しかったです。この授業をしたら、小さな情報を発展させて考える想像力がつくなと思いました。内容が難しい分、シンプルな絵ということもあり、見やすい絵だったので、いろいろ分かることも多かったです。美術のセンスは無いかも知れないけれど、絵をみる目はもちたいなと思いました。(男子)

やはり、この企画は好きです。しっかりとその絵をみていることができるので、好きです。また、やりたいです。1人でやるより、みんなでやるのが楽しいと思います。(男子)

この鑑賞活動を通して、絵をみながら友だちの考えをしっかり聴くことで自分の考えと比較しながら鑑賞することができました。皆と意見を話し合ったりする中で自分の考えをより深めることもできるし、全く違った視点で鑑賞したりすることができるので、楽しめました。(女子)

今回は自分の思っていた意見と同じ人がけっこういました。自分の思っていたこと以外にも気付いていた人やもっと深いところまで考えた人がいて、この絵のことについてしっかりと考えることができました。他の意見をきいてなるほどなあと思う意見もあって、色々なことを考えさせられるような鑑賞会でした。(男子)

今回は2回目の鑑賞でしたが、前回より内容が難しかったです。この授業をしたら小さな情報を発展させて考える想像力がつくなと思いました。内容が難しい分、シンプルな絵ということもあり、見やすい絵だったのでいろいろ分かることも多かったです。美術のセンスはないかも知れないけど、絵をみる目は持ちたいなと思いました。(男子)

この学年は1クラス37名~40名に及ぶ人数構成で、2年生の時は落ち着きがなくとても対話型鑑賞を行う雰囲気ではありませんでした。3年生の1学期後半くらいから最上級生としての落ち着きが感じられるようになり、また、生徒と私との関係もいくらかは築けた気がしたので実践に踏み切りました。
1作品目はゴッホの椅子です。この時に1作品目からかなり高度な鑑賞ができたので、自信をもちました。
2作品目に松本竣介の「立てる像」はかなり冒険でしたが、3年生の2学期の後半にみせる作品はこれをおいて他には無いと思っているので、チャレンジしました。生徒は自身の現在と重ね合わせながら、戦争に関する知識も駆使して作品を鑑賞していきました。ここに披露したのはほんの数名の生徒のものですが、15歳という年齢が人をどのくらい成長させているのかを垣間見ることの出来る貴重なひとときでした。
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愛媛県美術館公開セミナーでお話しさせていただきました

2016-01-25 19:10:27 | 対話型鑑賞


公開セミナー「ともにもみる、ともに考える」
1月23日(土)愛媛県美術館 講堂

上記の日程で開催されたセミナーに講師として登壇させていただき、中学校の現場からの報告をしました。参加者の皆さまから質問をいただきました。セミナーの終わりの会での時間では答えきれなかった部分もありましたので、ブログにUPすると宣言しました。
そこで、
セミナーでの質問に答えたいと思います。意を汲みきれない部分や、どんなに言葉を尽くしても、文字情報だけでは伝えきれないところがあります。どうか、そういうところがありましたら、また、ご意見をお寄せください。また、来年度開催される愛媛県美術館の研修会に参加しましょう。

作品選びに関すること
Q1 達磨大師さんの絵が何百年も受け継がれてきた絵だから、子どももこれだけのことを感じるのだと言われたのをきいて、作品を選ぶのに世間の名の知れた作品のほうがよいのでしょうか?

A1 世間に名の知れたというのをどこまでの範囲とするのかは難しいところですが、やはり歴史を経て現在に残されている作品を選ぶのがよいと思います。どんな作品がよいのかは、基本を学んで、実践していく中で分かっていくと思います。

Q2 中学校の教材はどうやって選んだのですか?教材を選ぶときに何を一番重要視していますか?

A2 どの年齢でもそうですが、この鑑賞にはじめて取り組むときには、描かれているものが分かりやすく、しかも、色んな解釈のできそうな作品を選ぶのがよいと思います。だんだんとこの鑑賞法の回数を重ねて経験地があがっていけば、複雑で多様な解釈の出来る作品を選ぶとよいと思います。
  セミナーのときに光中学校で実践した作品を紹介しましたが、それらがみるみるの会ではてっぱん作品です。

Q3 いろんな校種、グループ年齢への実践、すごいなあと思います。実践を繰り返すうちにひとりの生徒が変容していくのもとても興味深かったです。みる作品はどのように選んでいますか?

A3 お褒めの言葉をありがとうございます。1,2でもお答えしたように、この鑑賞法の経験値と年齢に応じた作品を選ぶのがよいと思います。低年齢の作品は私の幼稚園での実践作品をブログでチェックしていただいて参考にしていただければ幸いです。

Q4 古い時代のものは表現のコード(きまり)が今の時代と違っていてうまく読み解けない読み取れないものもあると思いますが、そういったものは教材としては不適当ですか?

A4 古い時代のものでも、たとえばギリシャ彫刻等は鑑賞作品として使用しています。カラカラ帝の頭像などです。どんなものをイメージされて質問されたのかが分かりにくいのでお答えしにくいのですが、モナリザなどルネサンス期のものはかなり古い時代になると思いますが、可能です。もっと前のエジプトの壁画なども利用できます。ですから、コードを知らなくても、みえているものを根拠に解釈はできると思います。ただ、宗教の教義が関わるようなものは日本人には馴染まない面があるのは否定できません。しかし、学校の授業場面で鑑賞ができる時数は限られているので、あえてそのような作品を扱わなくても、オーソドックスな作品で鑑賞されれば十分ではないかと考えています。(この時の宗教とは主にキリスト教を指します。)

ナビゲーターのスキルに関すること
Q5 ナビゲーターの力量を上げるために効果的だったことはありますか?

A5 自分のやっているときの様子をビデオやボイスレコーダーに取っておいて、後でその様子を文字起こしすると、鑑賞者の発言をどのように拾ってつなげて行ったかをチェックできます。時間はかかりますが有効です。そのほかには、同じナビゲーターを志す仲間に同席してもらってナビの様子を観察してもらうこと。同じ学校や職場にナビを志す仲間がいればお互いにチェックしあうと力がつくと思います。しかし現実的に仲間が身近にいることは稀なので、私たちはサークルを立ち上げ、研鑽に励んでいるわけです。

Q6 対話型鑑賞法に興味を持ってしようと思うとき、ナビゲーターのスキルをつけるにはどうすればよいのか?みるみるの活動を少し教えてください。

A6 ナビゲーターのスキルは、愛媛の学校関係者であれば、来年度の愛媛県美術館の企画に応募してください。そうでない方は、福先生のいらっしゃる京都造形芸術大学の教員免許更新講習に参加するとよいと思います。この講習は教員の方以外の参加もOKなので、そちらを活用してください。詳細はACOPのHPに掲載されると思います。
  みるみるの会では月に1回美術館でナビゲーターのスキルアップ会を開催し、会員が交代でナビ役を務め、他の会員が鑑賞者になり、その後振り返りをすることでより質の高いナビができるよう研鑽に励んでいます。この会には一般の方も参加できますので、このブログを時々チェックしてみてください。

Q7 歴史的事実(回答に類するもの)を話すタイミングやその「コツ」などがありましたら教えてください。

A7 とてもお答えするのが難しい質問です。「コツ」はナビをしていくうちにつかめるものだと思います。鑑賞者のニーズの高まりや、このタイミングで情報(歴史的事実)を伝えると鑑賞が深まると感じるタイミングは千差万別、まさにケースバイケースです。ナビを繰り返しやるうちに身についていくものだと思いますので、しっかり実践を繰り返していきましょう。

Q8 ナビゲーターとして注意していることなど何かありますか?

A8 まず「聴く」ことを意識します。鑑賞者が何を語っているのかを的確につかむことが一番重要だと思っています。
  次に大事なのは、どの発言も平等に扱うことです。ちょっとおかしいな?とか変だな?と思うような発言にも耳を傾け、聴くことで話し手の伝えたい事を読み取り、他の鑑賞者に伝える努力をします。私もまだまだ十分に聴く力がついているとは言えません。日々精進です。

Q9 対話型鑑賞がうまくいかなかった例と原因などを教えてください。

A9 初めてこの鑑賞を行うときに、鑑賞者に戸惑いがあることです。何を言ってもよいと言われても何を言えばいいのか分からないといった混乱が起きるからです。しばらく手が挙がらず「し~~~~ん」となることはままあります。そんなときにどんな言葉を投げかけるかは結構気を使います。中学生のときは「みえているものを言って!」と言います。そうすると、ゴッホのいすの作品のときは「いす?」とかって、すごく不安そうに発言するので「そうだよね。いすがあるよね?みんないすはみえているよね?」などと声をかけ、「なあんだ。ホントにみえているものを言えばいいのだ。」と安心させるとバンバン手が挙がって「ドアがある」とか「奥に箱みたいなものがある」とか言うようになります。
 もうひとつは、「怒らないこと」です。ふざけたことや変なことを言っても「どうしてそう思ったの?」「どこからそう思ったの?」と冷静に対応することが重要だと思います。怒ると生徒は萎縮し発言しなくなるからです。この鑑賞法を面白いと感じてもらうためにも、つまらない、しかられたという負の評価が出ないように心がけています。

Q10 中学生でふざけた発言は実際にありましたか?そうなら、どう対応されましたか?

A10 残念ながら、ふざけた発言に出会うことはありませんでした。どんなことを言っても良い。とは言いますが、あくまで授業なので、評価をするわけです。限られた時数の中での鑑賞の授業なので、この鑑賞法で鑑賞の評価を行うことをあらかじめアナウンスします。発言したことやその内容、授業後の振り返りで評価をすると告げると、真剣な態度で臨む生徒がほとんどです。時折、不真面目な発言をする生徒も出ますが、その時は、怒らず「どうしてそう思ったの?」「どこからそう思ったの?」と問い続けると、降参しますね。でも、それだけです。くどくどは言いません。「根拠に基づいた自分の考えを言えるようにすること。」と働きかけ続けるだけです。評価をすることをあらかじめアナウンスすることも大事ではないでしょうか?私は評価の規準も示してから始めるようにしています。

Q11 スタート時の不安について、実際はどうでしたか?失敗したこと、どう解決したか知りたいです。

A11 初めの頃は、私もおっかなびっくりだったので、それが生徒にも伝わるのか挙手発言がなかったので、指名しました。しかも片っ端から・・・。そうすると、次は自分が当たると生徒は危機感を感じて、必死で自分の考えを考え始めました。「わかりません。」と言って逃れようとする生徒もいますが、「作品はみえているのなら、みえていることを言って。」と言わすようにします。そうすると、必ず何か言います。そうすれば、もっと問い続けて話させるように働きかけます。また、「一緒です。」という生徒も出ます。そういう時は「一緒でいいから、自分の言葉で言って。」というと、不思議なことに同じことは言いません。そういう時は「一緒って言ったのに、ちゃんと自分の言葉で言えたね。」と褒めます。そうすると生徒は「わかりません」も「一緒です」も通用しないことに気づき、真剣に自分の言葉で考えるようになります。
また、最初の頃は生徒の発言も上手く繋げることができないので、全員1回は言ってもらう。などのノルマを生徒に課して、当てたりもしました。近頃の生徒は、単語で答えることが多いので、そこは突っ込んで確認することを忘れないようにしました。自分が上手くナビできていない(失敗した)と思っても、生徒には分からないので、その時間中に軌道修正できればするし、できなければ、次回に生かす轍としました。

Q12 私が中学生の頃はいじめやスクールカーストがあり、自分の意見を言いにくい、言ったらからかわれるという空気でした。春日先生はそういう学級で対話型鑑賞をしたことはありますか?また、そのときのエピソードがあれば教えてください。

A12 クラス経営が上手くいっていない学級もあると思います。私は美術科の教師として学校規模(島根は中小規模校が多い)から全学年全学級の美術の授業を行うことが多いです。どの学級にも平等にこの鑑賞法を実施しなければ公正な評価もできないので、クラスの実態がどうであろうとこの鑑賞を行ってきました。しかし、授業ですので、A10でも触れましたが、評価も行うわけです。授業のねらいに沿って授業を行うので、発言を促し、発表すれば、内容ももちろん大事ですが、発言したことを褒め、特定の生徒に発言が偏らないように配慮しながら発言を求めます。同じ生徒しか手が挙がらない場合は、「手を挙げてくれているのに指名しないのは悪いけど、他の人の意見も聴きたいので」と断って、手を挙げていない生徒にも発言を求めたりします。そうやって、さまざまな意見をクラス内で披露することで、他者理解が進むと思うし、自分の発言にクラスメイトが感嘆の声をあげる場面などでは自己肯定感も満たされると思います。どちらかといえば、学級経営が上手く行ってないクラスでこの鑑賞をやると、クラスが変われるかもしれませんね。そんな場面には残念ながらまだ出くわしていませんが・・・。

授業に関すること
Q13 ワークシートに個々で記述する前に、その時間の対話型の着地点、締めくくり方で気を付けていることはありますか?

A13 中学校の1時間の授業時間は50分です。振り返りの時間をある程度担保してやろうと考えた時に対話型鑑賞が正味できる時間は30~40分です。その時間内に1作品を十分に語りきることは出来ません。ワークシートにじっくり自分の考えを記述するように促すので、終了のチャイムが鳴っても、まだ書き続けている生徒がほとんどです。ですから、「時間が来ても途中止めにせずしっかり書くこと。回収は終礼時。」と指示するにとどめます。生徒の記述の中で生徒に紹介したいと思ったものは「美術通信」などをつくって配布したり、美術室に掲示して共有できるようにしています。作家名と作品タイトルも通信で知らせることが多いです。

その他
Q14 アクティブラーニングでは音は使わないのですか?それは音楽の授業の範囲なのでしょうか?リンクさせることも面白いのではないかと思いますが?

A14 音を使っての実践もできると思います。作品鑑賞と音を組み合わせる活動は島根県立石見美術館で実践が行われています。HPをチェックしてみてください。私はセミナーの翌日にこの試みに参加しましたが、とても面白いコラボレーションになっていました。音楽の先生ならば、挑戦してみてください。私も挑戦してみます。

感想から
〇今の子どもにとって「聴く」って難しいですが、この活動だと「聴く」価値を伝えられると思いました。

〇楽しい時間が目に浮かぶようです。

〇対話型鑑賞法を実践することで得るものは大きいということが分かりました。同じ中学校教員なのでやってみたいと思いました。

〇中学生での対話型鑑賞が、コミュニケーションを高めるものということがよく分かった。

質問や感想をお寄せくださった皆さまへ

 私の授業の最後に言わせてもらいましたが、みなさんがファーストペンギンになってくださることが何よりです。私が福先生に背中を押していただいたように、最初からうまくなんかできません。でも、やれば、子どもの力が伸びていくことが確実にわかります。私たち教師は、私たちの生きない時代を生き抜いていかなければならない子どもたちを育てていることを忘れてはいけないと思います。この子たちが未来を生きていくときに、どんな力を持っていればいいのかを、私たちが想像し、創造していかなければ教育とは言えないのではないでしょうか。
 ともに前を向いて進んでいきましょう!!
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2016年 初のみるみるの会を開催しました!!

2016-01-16 21:11:40 | 対話型鑑賞


あなたはどう見る?~よく見て話そう、美術について~」
島根県立石見美術館 関連イベント

みるみるとじっくり見てみる?

美術館とみるみるのコラボイベントが今日から始まりました!
今年で3年目・・・楽しみにしてくださる常連さん、初めて参加されて「おもしろい!」と言ってくださった方、みるみる会員で、今年度、第1回目も楽しいスタートとなりました!

第1回 みるみるとじっくり見てみる?
☆日 時    平成28年1月16日(土)
☆ナビゲーター 房野
☆鑑賞作品  
作家 ベルナール・フォコン 
①「島の祭り<時の不確かな進化>より」 1983年 フレッソン・プリント
②小さな木<偶像と生贄>より     1991年 フレッソン・プリント
③ミュケナイの門<偶像と生贄>より   1991年 フレッソン・プリント

☆参加者 10代~60代の一般の方5名、みるみる会員5名  計10名

☆鑑賞会

最初に石見美術館A室を訪れた時、「どうしようかな~」となかなか今日のナビ作品が決まりませんでした。今年の作品をセレクトしたのは、石見美術館の学芸員であり、みるみるの会員でもある廣田さんですが、今日は欠席だったので、シークエンス(作品の組み合わせ)の意図をお聞きすることができません。どのテーマも少し難解な感じもするし、う~む・・・と悩んでいると、常連さんが、今回の作品を一目見て、「これ、おもしろいな」と一言。これを聞いて、決まりました(^^♪

ベルナール・フォコンは、マネキンを風景の中において、一見かわいらしくもあるけれど、違和感、嫌悪感、そのほか、ザワザワと複雑な感情を想起させる作品で知られていますが、今回は人の姿もマネキンもない風景の写真作品が3点。私は初めて見るものばかりでした。

① は夕方の薄暗がりの遠くに煌々とライトをともした白いものが見える草原、
②③は荒涼な岩肌を背景に真っ赤な川のようなものが流れている、なんだか???と首をかしげる作品です。ナビとして予備知識も見通しもないまま、
「皆さんにいろいろ教えてもらおう」というスタンスで見切り発進したのでした。

鑑賞会では、思いのほか、様々な意見がありました。一人では決して考えつかないような人の気付きを聞くにつけ、「なるほど~。そう見えるのか!」「では、こういうことも考えられるのでは?」と、一見???な作品を自分なりに解釈できていくことに気づきます。その驚きと楽しさと言ったら!

参加者の感想に
「自分には<船>に見えるものが、<神社のような神聖な場所での祭りでは>という意見を聞いて、自分ひとりの見方だけでなく、いろんな見方ができたのがとても面白かったです。ひと粒で2度おいしいというか…。ほかの方の意見を聞くのも、おもしろいし、ためになりました。何のことかわからない作品も、みんなで見たことで意味のある作品になりました。」
「タイトルがつけてないと、いろいろ意見が出ておもしろい。」
とありましたが、その通りだと思います。

私のナビについては、
・時間を気にしすぎて腕時計を何度も見ていたのが、鑑賞者に気を使わせてしまってよくなかった。時間の把握は、それとなくできるように工夫を。
・美術館で本物の作品を鑑賞するので、鑑賞者が手を触れないように、ポインティングには気を付ける。言葉だけで言ってもらうか、近づきすぎないように結界を張る必要があるかも。
・ナビのパラフレーズが飛躍しすぎた場面があった。発言者が否定しなかったからそのまま流れたが、パラフレーズが発言者の意を汲んでいるか、確認も必要。

などの反省点がその後の振り返りで出ました。貴重なご意見をありがとうございます。次のナビに活かしたいと思います!

この日は、ミーティングで春日さんの「愛媛県美術館」での発表のリハーサルもあり、対話型鑑賞についての理論と実践について、30分で濃厚な研修をすることができました。本番に参加できない私にとっては本当にありがたい機会でした!春日さん、ありがとうございました(^◇^)本番、1月23日、頑張ってくださいね~!!

参加できそうな方は、ぜひ、愛媛県美へ申し込みを!
コメント
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