みるみるの会10月例会
日時:2024年10月20日(日)11:20~11:48
浜田市世界こども美術館 『光と影の不思議展』にて
鑑賞作品:「Lifelog.シャンデリア」2010-2022年 小松宏誠 作 羽根(ガチョウ)ベアリング、ワイヤー
「Secret garden」2010-2022年 羽根(ガチョウ)、ACファンLED、アクリルなど
参加者:一般鑑賞者 3名 みるみる会員2名
ファシリテーター:房野伸枝
1作品目が、人工物を使って、その影も含めて鑑賞をする作品でしたので、2作品目は自然物による空間を使った作品を選びました。本来、大きな作品「Lifelog.シャンデリア」とその両脇に対で展示してある「Secret garden」は別の作品ですが、その3つで大きな空間を表現しているように展示してありました。使用されている白い羽根も共通の材料でしたので、キャプションを見なければ、ひとつの作品のようにも見えます。そこで、特に分けることなく、この空間を皆さんがどう感じるのかを楽しみに鑑賞をスタートしました。
<鑑賞の流れ>
〇前半・作品全体や部分について
まず、壁に移った影から木の枝や葉を感じ、森にいるような感覚になったという意見の後、通りがかった小さなお子さんが二人、展示室に入るなり、作品を見て「おお~」と声を上げたので、「どう?何が見える?」と尋ねると、
・葉っぱみたい
・浮いてる
・下から風が吹いているから、羽根、しっぽみたい
・ヘリコプターみたいにクルクルしてる
・影がある
と立て続けに発見したことを発言して、去っていきました。
そのあと、それらに関連した意見を大人の方が詳しく発言されました。
・作品の中心部分が回転しており、その周りに羽根のような部品が配置されていて、作品全体が浮遊している。
という特徴にも注目が集まりました。
〇後半・作品の象徴性の解釈
・真ん中の一つの作品に光が当たって、二つの影ができている。
・両脇の二つの作品など、対になっているものがあることからどういう意味があるのか。
・中心部分が仏像のように鎮座して、両脇の小さな作品が脇侍のように見えることから、作品がシンボリックな意味を持っているように感じる。
・作品の白い色彩や浮遊する様子から、神聖さや荘厳さを感じる。
・作品の構造がらせん状に回転しており、風が吹いていることからも、自然や生命力を表現している。
など、みえているもの、感じたことから解釈が生まれてきました。
〇作品の動きと時間の表現
・作品の中心部分がゆっくりと回転しているのに対し、両脇の小さな作品が速く回転していることに注目。これらの異なる速度の動きが、ゆっくりと変化する進化などの時間と、急速に変化する時間を表現しているのではないか。
〇作品の素材と自然との関係
・作品に使用されている素材がガチョウの羽根であることから、羽根が自然界の要素を表しており、作品全体が自然との関係性を持っているのではないか。
・特に、両脇の回転体は種にも見える。
・羽根が種を運ぶ鳥の役割を連想させることから、作品が自然の循環を表現している。
・当たっている光もゆっくり点滅していて、ひとつとして止まっている部分がない。
・影が森のように映っていることから実際の空間よりも大きな空間を感じさせる。
・回転も部分によっては逆回転になっていて、影もそれに従って動いている。
・動きが生命を感じさせ、自然の営みを感じさせる。
<振り返り>
・子どもが加わった時には、ファシリとしてはかがんで目線を合わせたほうが良い。
・要素が多く羅列的になってしまったので、ファシリはフレーミングやサマライズ(こまとめ)で、構築的に解釈を深められるように進めたい。ディスクリプションの点をつなげて面にして、それを立体にするような感覚で。
・最後に「今回の鑑賞ではこの作品をこんな風に皆さんでみましたね」という一言があったほうが、鑑賞者の満足度は高い。
風や光、動きのある空間そのものを鑑賞するにあたり、形状や影、色、動きなどに着目し、それらが草木や森、自然や生命力、神聖さを連想させるなど、作品に込められた意味や象徴性について語られていきました。最終的には空間全体をDNAのような微細なものから大きな自然の循環まで感じさせるなど、様々な視点から解釈が進み、私自身も気づかなかった発見やハッとさせられる意見を伺うことができ、ワクワクした鑑賞になりました。参加されたみなさまの深い鑑賞のおかげです。ありがとうございました。
<次回に向けて>
・フレーミングとサマライズによる構築を意識してファシリテーションをしたいと思います。