10月例会は房野さんと正田さんがナビ担当でした。
房野さんから振り返りのレポートが届きましたので、お届けします。
みるみる10月の例会
10月15日(土)14:30~ 浜田市世界こども美術館図書室
作品 「漁婦」(日本画) 神田羊二 制作年不詳
みるみるの房野です。10月は正田さんと二人で作品をナビしました。
この日は、いつも会場にさせていただいている「浜田市世界こども美術館」の特別展「ダンボールの変身展」の初日と重なっており、また、いつものコレクション室は「石見神楽」の展示でした。ナビのための作品選びに、早めに展示室を見て回りましたが、今回は特別展もコレクション室も作品とスペースが対話型鑑賞には不向きでした。そこで、急遽、美術館の収蔵作品をお借りして、図書室に運び込むことにしました。そんな急なお願いにも快く応えてくださる、美術館の館長さん、スタッフの皆様の懐の大きさに感謝です!本当にありがとうございます!
鑑賞には「作品選び」がとても重要です。昔、某O先生が飲み会の席で、テーブルにあったレンゲのスプーンを手に「僕はこれを使ってでも子どもたちと鑑賞をすることができるよ」とおっしゃっていましたが、私にはまだそこまでのスキルはありません。リッチな対話のためには、作品の力も必要だと考えます。
と、いうわけで、館長さんのはからいで、図書室に搬入しやすく、収蔵場所から取り出しやすい3点から選ぶことに。島根県出雲市出身の神田羊二氏の日本画でした。私は「漁婦」という、人物画を選びました。
今回の私の目標は9月の春日さんのように「パラフレーズで鑑賞者を満足させること」でした。鑑賞者の意見を的確に要約し、さらに別の言いかえで「そうそう、私の言いたかったのは、そういうことなのよ!」と納得いただく。そうすることで鑑賞を深め、「今日はいい鑑賞会だったな」と満足していただきたかったのです。
みるみるメンバー6名に加え、常連の2名、小6のお嬢さんが鑑賞会に参加してくださいました。作品は手に貝らしきものを持った人物しか描かれていませんでしたが、鑑賞に慣れた方が多く、服装や姿勢など細かいところまでよく見て途切れることなく意見が出ました。「山陰の海」「海女、もしくは海で貝や海苔を採る人」「二人の人物、もしくは二人は同一人物では」「顔のしわの様子から、長い間、この仕事をしてきた人」など、モチーフから考えられることに加え、日本画の材料や描き方、構図やデッサンにも話が及び、実際に絵を描かれる方ならではの指摘もありました。一見、ジャンルの違う切り口に見えても、それが「自分はこの作品をどう解釈するのか」という命題に対するヒントとなり、対話によって化学変化するのがこの鑑賞の醍醐味でもあります。今回の話題は大きく枝葉が分かれることなく、絵のタイトルと同様の内容に終始しました。そこで最後に「漁婦」というタイトルを明かし、「絵そのものを見て話すことで、テーマに迫った話をすることができて楽しかったです」と、結びました。
反省会で「海女という意見の時に、女性だという思い込みのまま話が流れたが、一度もこの人物が女性だと確認しなかった。」「ナビが色について問いかけるのはもっと早く前半にすべき。細かい素材を前半に出しておいて、後半は『○○という意見が出たが、そこ(・・)から(・・)皆さん、どう(・・)思います(・・・・)か(・)?』と、解釈の方向へもっていくと鑑賞が深まる」という意見をいただきました。確かに!!
こんなふうに、自分のナビに対して即座にブラッシュアップしてもらえるのがみるみる例会のいいところです!授業で、やりっぱなしではこうはいきませんから。ましてや、島根県の中学校では美術科教員は各校一人いるか、いないかですからね。貴重な研鑽の機会となっています。ありがとうございました!
来月の例会は19日(土)の予定です。会場は浜田市世界こども美術館です。