浜田市世界こども美術館で開催中の「はまだの風景画展」での鑑賞会レポートをお届けします!
当日は、二つの作品を鑑賞しました。今回は、一つ目の作品でナビゲーターをした正田さんのレポートです。
みるみる例会レポート 正田 裕子
実施日:平成30年6月9日(土) 浜田市世界こども美術館
作品:「薫風の石見灘」 (F100 号 油彩)1986年 寺戸恒晴
参加者:浜田市立浜田東中学校美術部生徒7人・引率教諭1人
大人3名・会員1名
「鑑賞の様子」
中学校の美術部として来館した7名の中学生及び引率者に歓迎の言葉を伝え、今回、鑑賞する作品に案内した。作品の前で、鑑賞のやり方は「見る・考える・話す・聴く」という流れで行うこと、「作品を見て、思ったこと・感じたこと・気づいたこと、何でも話してよいこと」を伝えた。考えや意見を言う時には、作品のどこからそう思ったのか(根拠)を発言して欲しいことを伝えた。
鑑賞の流れとしては、まず「空と青の色が同じでエメラルドグリーンが使われている。」「空の色と海の色が同じ色だけれど、海の色の方が濃い。」「中間の山並みの向こう側には雲海が広がっている。」「遠くに富士山のような形の山が見える。」といった背景の色の美しさや描写に関する発言が続いた。初めて対話型鑑賞を体験する中学生の発言を皮切りに大人の発言も続いた。そこに「海の光が差し込んでいるかのように見える色合いと描かれている漁船と漁船の周りにいる人々の様子から、早朝ではないか。」という、描かれている風景の時間について解釈が加わった。合わせて、「漁船の周囲にいる漁師の服装や道を歩く人々の服から春から初夏にかけての季節が描かれていると思う。」「港の岸辺の様子から砂浜に見えるし車が走っていないから、これは現代の風景ではない。」と描かれた年代についても意見が及んだ。
一通り描かれている事柄と時間・季節などが出たところで、「描かれている町の様子についてじっくり見ていきましょう。」と投げかけた。鑑賞者は「古い家もあるが、鉄筋の建物もある。」「市場がある。」「家の壁は白っぽくて古い感じ。」
さらに「その他にありませんか?」という問いに対しては、「お宮が画面中央にあるので、これが中心だと思う。」「古いお宮だと思う。根拠は神社の石段の下にある石碑と神社の周りの松が大きく成長している所から古い神社だと思う。」「港に灯台があるけれど、描かれている神社の位置が高いところにあることから、昔は灯台の代わりで、船が帰る目印になっていたのでは。」などの発言が続き、「神社はこの漁師町の守り神で漁の安全を見守っているものではないか。」と、描かれている漁師町と古い神社との関係に関する解釈に関する発言があった。
最後に、初めて参加した中学生から感想をそれぞれ聞き、第1作品目の鑑賞を終えた。
「ナビゲーションの課題」
途中で「市場って何?」という中学生の質問や「神社の左後方にある海の色と同じ色をした場所が何かよくわからない。」という質問があったにもかかわらず、ナビが直接答えてしまったり、そのまま問いに答えなかったりしたまま、進めてしまったところがあった。「質問に対しては、質問で返す」というセオリーから外れていたし、もっと周りの鑑賞者に意見を求めても良かったと思われる。
漁師町の市場の人々の様子や砂浜の歩行者への発言があった後に、1列目の鑑賞者にしばし屈むことを促すなど2列目の鑑賞者が見えやすいようにする配慮もできたのではないか、など考える点などがあった。そして、会員より「鑑賞者の発言の真意をナビの私見なく聴くことができていたのか。」という重要な意見があった。参加者の意見の根拠を十分に聴き、その根拠を鑑賞者全員と確認し、他の鑑賞者との橋渡しをしながら、意見を求めることができたら、初めて参加する中学生も、緊張せずもっと発言がしやすかったのではなかったかと思う。
一期一会の鑑賞者との関係をどう作り、鑑賞者にとって心地よい場の雰囲気を作りながら意見を傾聴できるために、自分の聴き方の癖を見直し、鑑賞者が学びの主体者となるために、ナビがやるべきことを再度立ち返り整理したい。
「はまだの風景画展」2作品を鑑賞した参加者の感想(対話型鑑賞の経験・年齢)
・他の人の意見が、聞けたのでよかったです。(初めて・中学2年)
・2作品目の「何もない山の赤いのが何か分からなかった。」(初めて・10代)
・空や雲、人の服装など、いつも見ないところをよく見て鑑賞することができた。
(初めて・中学2年)
・今日は、鑑賞がとても興味深かった。(初めて・中学1年生)
・また来たいと思いました。(初めて・30代)
7月の鑑賞会も「はまだの風景画展」会場にて行います(参加は申し込み不要&無料ですが、企画展の観覧料が必要となります)。
7月7日(土)14:00~15:00 浜田市世界こども美術館にて
次回の鑑賞会は、ちょうど七夕ですね。みるみるの会鑑賞会にて、作品とのすてきな出会いがきっとあるはず!
みなさまのご来館をメンバー一同、お待ちしております。
当日は、二つの作品を鑑賞しました。今回は、一つ目の作品でナビゲーターをした正田さんのレポートです。
みるみる例会レポート 正田 裕子
実施日:平成30年6月9日(土) 浜田市世界こども美術館
作品:「薫風の石見灘」 (F100 号 油彩)1986年 寺戸恒晴
参加者:浜田市立浜田東中学校美術部生徒7人・引率教諭1人
大人3名・会員1名
「鑑賞の様子」
中学校の美術部として来館した7名の中学生及び引率者に歓迎の言葉を伝え、今回、鑑賞する作品に案内した。作品の前で、鑑賞のやり方は「見る・考える・話す・聴く」という流れで行うこと、「作品を見て、思ったこと・感じたこと・気づいたこと、何でも話してよいこと」を伝えた。考えや意見を言う時には、作品のどこからそう思ったのか(根拠)を発言して欲しいことを伝えた。
鑑賞の流れとしては、まず「空と青の色が同じでエメラルドグリーンが使われている。」「空の色と海の色が同じ色だけれど、海の色の方が濃い。」「中間の山並みの向こう側には雲海が広がっている。」「遠くに富士山のような形の山が見える。」といった背景の色の美しさや描写に関する発言が続いた。初めて対話型鑑賞を体験する中学生の発言を皮切りに大人の発言も続いた。そこに「海の光が差し込んでいるかのように見える色合いと描かれている漁船と漁船の周りにいる人々の様子から、早朝ではないか。」という、描かれている風景の時間について解釈が加わった。合わせて、「漁船の周囲にいる漁師の服装や道を歩く人々の服から春から初夏にかけての季節が描かれていると思う。」「港の岸辺の様子から砂浜に見えるし車が走っていないから、これは現代の風景ではない。」と描かれた年代についても意見が及んだ。
一通り描かれている事柄と時間・季節などが出たところで、「描かれている町の様子についてじっくり見ていきましょう。」と投げかけた。鑑賞者は「古い家もあるが、鉄筋の建物もある。」「市場がある。」「家の壁は白っぽくて古い感じ。」
さらに「その他にありませんか?」という問いに対しては、「お宮が画面中央にあるので、これが中心だと思う。」「古いお宮だと思う。根拠は神社の石段の下にある石碑と神社の周りの松が大きく成長している所から古い神社だと思う。」「港に灯台があるけれど、描かれている神社の位置が高いところにあることから、昔は灯台の代わりで、船が帰る目印になっていたのでは。」などの発言が続き、「神社はこの漁師町の守り神で漁の安全を見守っているものではないか。」と、描かれている漁師町と古い神社との関係に関する解釈に関する発言があった。
最後に、初めて参加した中学生から感想をそれぞれ聞き、第1作品目の鑑賞を終えた。
「ナビゲーションの課題」
途中で「市場って何?」という中学生の質問や「神社の左後方にある海の色と同じ色をした場所が何かよくわからない。」という質問があったにもかかわらず、ナビが直接答えてしまったり、そのまま問いに答えなかったりしたまま、進めてしまったところがあった。「質問に対しては、質問で返す」というセオリーから外れていたし、もっと周りの鑑賞者に意見を求めても良かったと思われる。
漁師町の市場の人々の様子や砂浜の歩行者への発言があった後に、1列目の鑑賞者にしばし屈むことを促すなど2列目の鑑賞者が見えやすいようにする配慮もできたのではないか、など考える点などがあった。そして、会員より「鑑賞者の発言の真意をナビの私見なく聴くことができていたのか。」という重要な意見があった。参加者の意見の根拠を十分に聴き、その根拠を鑑賞者全員と確認し、他の鑑賞者との橋渡しをしながら、意見を求めることができたら、初めて参加する中学生も、緊張せずもっと発言がしやすかったのではなかったかと思う。
一期一会の鑑賞者との関係をどう作り、鑑賞者にとって心地よい場の雰囲気を作りながら意見を傾聴できるために、自分の聴き方の癖を見直し、鑑賞者が学びの主体者となるために、ナビがやるべきことを再度立ち返り整理したい。
「はまだの風景画展」2作品を鑑賞した参加者の感想(対話型鑑賞の経験・年齢)
・他の人の意見が、聞けたのでよかったです。(初めて・中学2年)
・2作品目の「何もない山の赤いのが何か分からなかった。」(初めて・10代)
・空や雲、人の服装など、いつも見ないところをよく見て鑑賞することができた。
(初めて・中学2年)
・今日は、鑑賞がとても興味深かった。(初めて・中学1年生)
・また来たいと思いました。(初めて・30代)
7月の鑑賞会も「はまだの風景画展」会場にて行います(参加は申し込み不要&無料ですが、企画展の観覧料が必要となります)。
7月7日(土)14:00~15:00 浜田市世界こども美術館にて
次回の鑑賞会は、ちょうど七夕ですね。みるみるの会鑑賞会にて、作品とのすてきな出会いがきっとあるはず!
みなさまのご来館をメンバー一同、お待ちしております。