ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

書制作をしています

2013-05-29 17:00:50 | 対話型鑑賞
書制作をしています


みるみるの活動とは直接関係ありませんが、私が最近行っている制作についてお伝えしようと思います。

実は、書道が好きです。あの墨の何とも言えない香りが好きです。習字は5歳(今でいう幼稚園の年長)から近所の習字教室に行き始めて、最初は硬筆をやり、小学校に入学するまでに、かなり綺麗な字で「あいうえお・・・」が書けるようになっていました。若かった母が最初の子どもである私にいろいろな意味で期待をし、教育熱心だったことがわかります。ついでにピアノも習わされましたが、外で遊ぶ方が好きだったお転婆な私は、ピアノの前に座るのが嫌で、練習もせずにレッスンに行き、先生を落胆させ、母親の期待に応えられない結果を招いたのは余談です。
小学校2年生になって硬筆を卒業し、墨汁が使えるようになった時には天にも昇るうれしさでした。半紙に筆で字を書いているお兄さんやお姉さんがとてもカッコよくてうらやましかったからです。自分も早くそんな風になりたいと思いながら、鉛筆ばかりで字を書かされるのにも飽きていたからです。
同じ年の友だちがこの習字教室にはたくさんいて、みんなかなり上手だったので負けじとばかりに練習したのを覚えています。ひとつ年下にすごく上手な男の子がいて、その子にバカにされるのが嫌で、いつも見返してやろうと思って書いていました。おかげでずいぶん上達しました。小学校卒業記念に半切に「心を砕く」と書いた時の気持ちよさを忘れることができずにいました。あの時そのまま続けていればと後で悔みましたが、部活動も始まり、土曜日の午後に通い続けることは困難と思い、中学校進学を機会にやめました。
そして、時は流れに流れ、御年30ん歳になって、再び筆を手に取りました。習字が好きなのは、一発勝負なところです。うまく書けるか、書けないか、書き終わった時にすぐにわかります。気に入らなければ、また、書きます。気に入るまで書き続ければそのうち納得のいきそうなものができます。私が大学時代に専攻したのは染色で、これは、作品が出来上がるまでに長い時間を要します。特に絞り染めなどは、糸を解いた時に泣きが入っていると泣きたくなります。そして、また、一からやり直しです。気が遠くなりそうです。そして、そんな制作は子育てをしながら仕事もそれなりにやりながらだと、はなはだ困難で、やる気もおきません。だけど、何かを造りたい創作意欲はムクムクと湧くので、手っ取り早い習字を再開したわけです。
ここで気になるのが、習字いや、書道は芸術なのか?ということです。お手本のあるようなものは芸術とは言えないとおっしゃる方もありましたが、昨今の様子を見る限り、芸術の仲間入りをさせていただいたような気がしています。本当は、もっと、岡本太郎の「芸術は爆発だ!!」と言うような、前衛書を書きたいとも思っているのですが、基本があっての創作活動であることは書の道にも言えることなので、基本を踏まえながらの、わずかな創作性を漂わせた作品制作に取り組んでいるところです。
私は「島根書道協会」に所属し、1年に1回の協会展に会員として出品しています。会員になると必ず展示されるので、忙しいことを言い訳に、普段まったくお稽古をせず、1点集中で作品を作っています。もっと精進しなければと、協会展中は自己嫌悪に陥りますが、のど元過ぎれば熱さを忘れるのことわざ通り、終わってしまうと、また、次の協会展前に慌てて作品作りに追われるという繰り返しをここ5年くらいしています。師匠に申し訳ない不出来な弟子です。でも、退職後の愉しみに細々とではありますが、続けていこうと思っています。
さて、書道は芸術か?という話題に戻りますが、日本最大の公募展である「日展」に書部門があるということは、書も芸術として認められるのではないかと考えています。テレビ番組のタイトルなどにも筆文字が多く登場するようになっていますし、あいだみつをさんの書作品は美術館もできたほどですから、やはり芸術なのではないかと思います。私は石飛博光さんの書が好きです。NHKの番組などにもよく登場しています。誰にでも読みやすく、でも、この人にしか書けない美しく創作された文字を、古典を踏まえたうえで書いていきたいと思っています。
今回は、松本竣介の「立てる像」にピッタリくる高浜虚子の句を半切に書きました。来年、担当している3年生が卒業する時に、この書を見せて、送り出してやりたいと思っています。
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グラントワに行ってきました

2013-05-27 21:46:04 | 対話型鑑賞
日曜美術館のアートシーンでも紹介された「和歌と美術」展を観に行ってきました。

人麻呂さんの肖像画がかなりあり、見比べるだけでもかなり興味深かったです。

最初の人麻呂像を描いたのは誰なのだろうと、好奇心がわきました。きっと、その人の描いた人麻呂像がモデルになって延々と描き続けられたのだろうと思いました。最初に描かれた人麻呂の特徴を押さえつつ、画家のオリジナリティも感じられるのが面白いです。

どの表情を見ても、ちょっとたれ目で人が好さそうです。歌を詠むくらいだから教養も高く、感性の優れた人なのだとは思いますが、でも、なんとなく弱そうです。情けないような表情でいます。だけど、そんな人麻呂さんの画像の軸を飾って歌会をしたというのもすごい出来事だと思います。

やっぱり、亡くなって、軸に描かれて、人に祀られるというのは、すごいことだと、当時の風俗画をみて思いました。昔の人で、実在の人物で、今も祀られているような人はいませんから、その偉大さはいかなものかと感じるばかりです。

歌は歌でも歌手ですが、美空ひばりはすごい歌手でした。だけど祀られて、歌を志す人の信心の対象になったとは聞きませんからね。そこいくと人麻呂さんは祀られて、お供え物もあって、その前で偉い人たちが歌を詠んだのだから、どれほど崇拝されていたかと言うことになりますよね。

それに、当時は情報ネットワークだって、今とは比べものにならないはずなのに、どのような手段で人麻呂さんの肖像画が伝播していったのでしょうね。そこ突っ込みたくなりますし、そもそも本人に似ているのかさえ疑わしく思えますが、当時の人は「これが人麻呂だ!!」って信じて祀ったのでしょうね。すごいことです。

また、人麻呂さん以外にも、貝合わせやカルタが展示されていますが、その精緻な作りにただただ驚くばかりです。老眼になりつつある眼ではその精緻さを観ようとするときに、メガネを外して観るのか、離れながら焦点を合わせるのか、ガラスケースの向こうのそれを詳細に見つめるには老眼鏡が必要であることを痛感しながら、日本人の手先の器用さと、細部にまでこだわるテクニックに改めて感心するばかりでした。

そして、貝合わせでは、京大の大野先生の貝体新書の実践を思い出し、今度は貝に絵を描くことを取り入れても面白いのではないかと思いながら観ていました。

私としては、江戸時代の鈴木剘一(剘の字が違うかも?)の三十六歌仙の軸と花と鳥を描いた屏風が好みでした。同じ題材を扱っても描き手の創意工夫で違うものとなり、それぞれに味わい深いものになることを改めて思いました。花鳥風月を愛でる日本人の心は今も昔も変わらないけれど、その時々で表現の様式には変化があり、その変化は、画家の感性もあるけれど、時代の人々の感覚の変化や時代の要請もあったのだろうと並べられた作品から考えることができました。そういう意味でも、私にとっては、充実した鑑賞になりました。

みるみるの会員である廣田学芸員がお薦めの展覧会であると宣伝していた通りでした。まだ、観ていない方は、観に出かけてくださいませ。

次の KIMONO BEAUTY も楽しみです。
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18日の実践報告です

2013-05-20 17:46:07 | 対話型鑑賞
18日に対話型鑑賞のファシリテーターをやってくださった、会員からのレポートが届きましたので、ご覧ください。

第1回 絵をみて話そう レポート  正田 裕子
日時:平成25年5月18日(土)
場所:浜田市世界こども美術館(Hamada Children’s Museum of Art)
展示:「やなせたかしの世界」展
鑑賞作品:「デユエットでいななくや朝の海」(2003年)やなせたかし作
「朝日の海のアンパンマンバルーン」(不明 年)やなせたかし作
参加者:中学生11人・大人10人(うち会員6名)
今回の振り返り
とても楽しかったです!!特に中学生の鑑賞者の発言がたくさん聞けたのが嬉しかったです。最初は、アイスブレークをどうしようかとか、初めてお会いする大人の鑑賞者がいらっしゃるな…とか思って緊張していましたが、中学生の方の発言をきっかけに大人の方の意見も交えていただき、自分自身が皆さんの意見を聴くのが楽しいひと時になり、感謝しています。
一作目の「デユエットで…」については、全体には青紫がかった寒色を中心に静かな海と夜明け間近の夜空が広がる風景の中に男女のシルエットとそう離れてないところに表情のわかる馬が二頭描かれた作品です。対になるモチーフが二人の男女、白馬と黒馬のペア、背景には、月と日の出、海と岸部(大陸)と幅広い読み取りができそうな作品だと感じ、一作品目に選びました。
最初から、「海が広がっていてその近くに二人の男女がいて、近くに馬が二匹います」「背の高さが高い人と低い人がいるので高いほうが男性、低いほうが女性だと思いました。」などと見えたことを根拠に考えたことを伝えてくれました。対になるモチーフについても早い段階からそれぞれ話題にあがり、海の水平線から光が差し込んでいるのは、「朝日」、「夕日」それぞれに見えるということでした。「夕日」に感じられる鑑賞者と「朝日」に見える鑑賞者では、それぞれ思い描いた物語が異なり、「遠くから来た二人が、馬に乗ってやってきて夕焼けの海を見ている」とか手綱のつけられていない馬が静かに立っている姿から、「(野生の)馬なら人を襲ってもおかしくないけれど、近くで待っている姿から、人が馬に乗ってきたと思う」とか「朝早くに馬に乗ってやってきた二人が朝日を見ながら一日を迎え希望に満ちた思いでいる」などと作品から受ける物語を聞かせてもらいました。また、「二人の人も親しい間柄だけど二頭の馬も仲が良い、それは黒い馬が白い馬に寄り添っているように見えるから」「人と人や馬も互いに仲が良いけれど人と馬の関係もとても近くてよい関係である」などと持ち前の感性や思いを発言してくださいました。また、描かれている人たちの背景である光景についても「向こうの海の波の様子から波音も静かな音が聞こえ続け、静かな世界が広がり続けているようだ」とか「星空の中の月と夜明け前の太陽が、画面の中に描かれていて、新しい一日がつながる場面が描かれている。」などの意見がありました。その大人の意見も聞きながら、中学生の鑑賞者が「人々と動物と両方の存在が大切で両方とも同じ重みでバランスをとりながら生きている姿を描いている」など”生き物の命の尊さ”であったり”支え合い共存する関係”に気づくなど、中学生の深い「生」への思いを触れて感動しました。また、作品のキャプションには「朝日」という言葉があるにも関わらず、主体的に「夕日」という見方ができるのも素敵なことだと感じました。せっかく、大人の鑑賞者からも発言がかなり出たので、もっと「自然」についての思いや、「平和」や「時間の永遠性」、「死生観」など深められることができたかも…という反省が残りました。どんなふうに掘り下げていけばよかったのか、まだまだ課題が残りました。
二作目「朝日の海のアンパンマンバルーン」は、やなせたかし氏の代表的な作品「アンパンマン」を題材にした作品でした。2作品目をどの作品にしようか正直迷っていましたが、「やなせたかし」氏といえば、長年の制作活動の中で遅咲きの作家であることや、やなせ氏を世に表してくれる代表作となったアンパンマンの中に作者の生き方、考え方が込められていると思い、鑑賞者の皆さん共に味わえたらいいなあと思い選びました。
一作品目でウオーミングアップできたためか、一、二分作品を見た後にさっそく中学生が造型的な要素から印象を発言をしてくれました。「オレンジ色の背景が印象的でとても暖かくなります。体も暖かくなるし、気持ちもあったかくて幸せな気持ちになります。」というスタートでした。そこを切り口にして、アンパンマン(顔型)バルーンがさんさんと輝く太陽の上を飛んでいく状況に一人一人が物語を紡いでいってもらった感じでした。
この作品も太陽が「朝日」なのか「夕日」なのかでそれぞれ読み取りが違いましたが、「夕日」なら「人助けをして充実した一日を達成感を感じながら帰っていくところである」「バルーンの笑顔、特に口のほほえみや赤みのあるふっくらとした頬から達成感を感じる」という意見もあり、「朝日」と見た人は「これからおなかをすかせた人など困っている人を探しに行く」とアンパンストーリーと関連付けて考えていかのようでした。その点では見えているものだけでなく、他の情報に左右されることも大きいと感じました。
その中である中学生が「その笑顔は作り笑いでいろいろストレスを抱えながらも一日頑張って生きている表情のように思います。」「太陽の光が下からあたっていることから頬の赤みもどんより暗い赤に見えるから」と根拠も伝えてくれました。独創的な見方でしたが、その場で彼女の見方を共有する雰囲気もあり、また作品自体にも単純に勧善懲悪の善を表すというよりは、そのヒーローにも人間くさい悲しさや苦しさをも感じられたのではないかと思いました。大人の鑑賞者の方からは、「構図上、太陽とアンパンマンが画面の中心線上に縦に配置され、二つの存在が生命を生かしてくれる存在であったり、困っている人を助けてくれる絶対的な揺るぎない存在であることをあらわしているように思う。」と見えている造型的な要素からの読み取りがなされました。それらを聞いて最初に発言をしてくれた鑑賞者が「太陽に向かい希望をもって生きている姿」と締めくくってくれました。見えている要素が少なく、作品自体が小さく、バルーンにつながっているものが紙飛行機に見えたり、鳥に見えたり(実際は三つの旗)、また気球のかごに乗っている姿が、アンパンマンとバイキンマンにも見えたり(実はジャムおじさんとバタ子さん)と実際に描かれている姿と違う見方をして対話が進んでいったところがありました。鑑賞者すべてがそういう見方をしたわけではないのですが、キャラクターの影響が個人の見方に影響を与えてしまったり、一作目の人類と動物のように「善悪の共存」的な読み方が影響を与えたのかもしれないとも思いました。
自分の反省点としては、作品の大きさに対して人数が多かったので、作品の近くに行って「観る」時間を保障しなくてはならないこと。複数作品を見る場合、どちらを先にすればよいか考えること。そして、最大の反省は、鑑賞者の読み取りに自分の解釈(読み取ってほしいと願っていること)を載せずに、鑑賞者の意見をしっかり聞き取り、言い換え(パラフレーズ)することかなと思っています。
鑑賞者の方に楽しんでいただくことができることを目標に実践に取り組んでいきたいです。鑑賞者の皆さんからすべての意見を言ってもらうことができなかったことを反省材料に、次回はたくさん意見を言っていただけるように、実践を積んでいきたいと思います。皆さんと素敵な時間を過ごさせていただくことができ感謝感謝です!!

以上です。しっかりと実践の振り返りをしていて素晴らしいと思います。今後も会員同士が研鑽を積み、ファシリテーターとしてのスキルを上げたいと思います。
また、美術館の館長さんから、もっと、一般来館者にこの活動に参加してもらえるように働きかける必要があるとのご指摘を受けましたので、参加者を増やしていく活動にも取り組みたいと思います。

興味のある方は、どうぞ遠慮なくお越しください。お待ちしています。
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浜田世界こども美術館で今年度最初の実践を行いました

2013-05-18 21:18:53 | 対話型鑑賞
浜田世界こども美術館で今年度最初の実践を行いました


今日は、みるみるの会の今年度最初の実践を行いました。

会場は浜田世界こども美術館です。このブログを立ち上げた昨年末にはこの会場での活動を終えていたので、今日はその会場である美術館の外観も画像で紹介しました。島根県出身の建築家 高松 伸さんの設計によるものです。青空に白とガラスの建物が映えます。今日は日本海も穏やかで、帰り道に全国夕日ランキング1位、ほんとなのかな?に選ばれた五十猛からの薄曇りの夕日も掲載しましたので、ご覧ください。

明日までこども美術館ではやなせたかし展が開催されています。アンパンマンの原画もあります。対話型鑑賞に適した作品があるのか、若干不安でしたが、今日の当番会員がなかなかナイスな作品を2点チョイスしてくれました。

参加者は会員の勤務する中学校の美術部員11名と我々会員5名と、なんと、遠路はるばる広島から教育センターの指導主事さんと中学校の先生が2名おいでくださるという、サプライズもあり、対話も盛り上がりました。

著作権の絡みがあり、実践の様子に作品が映るとまずいので、座ってみている中学生と足ばかりの大人の様子しか画像には入っていませんが、ご容赦ください。

これから月に1回は実践の様子を報告できると思いますが、それ以外は、会員が学校現場で実践している授業の様子や授業実践の紹介もできればと考えています。すでに、私の授業の様子はお知らせしていますが、このブログを対話型鑑賞の実践紹介と情報発信にとどまらず、美術教育全般を語れる場にもしていきたいと考えています。

会員からの取り組みも適宜紹介していきますので、お楽しみに!!

明日は日曜日ですが、わたくしの勤務する学校はPTA総会開催のため出校日です。今から、保護者会に向けての資料準備をしなければなりませんので、このあたりで、今夜は失礼します。

本日の取り組みの様子を当番会員が報告してくれるのを待ちたいと思います。

それでは、また
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カラカラ帝

2013-05-08 20:37:15 | 対話型鑑賞
3年生の最初の鑑賞は、対話型鑑賞でカラカラ帝で行いました。

やっと、文字起こしができたのでUPしたいと思います。

情報提供を行いながら実践しましたが、情報提供のタイミングや話題となっていることの積み上げの難しさを痛感しました。まだまだ修行が足りません。頑張らなくちゃね。

カラカラ帝 3年1組

T1.はい、誰からでも。はい、N君。
S1.石膏の彫刻の作品。
T2.どこからそう思ったの?
S1.色とか、欠けたりしているところから。
T3.どこが欠けていますか?
S1.鼻、耳・・・。
T4.そういうところが欠けているので彫刻じゃないか?で、素材は石膏じゃないか?
石膏だと思ったのは、白いから?
S1.はい。
T5.と言う風に言ってくれたんですけど、これは、その通りで、彫刻作品です。彫刻作品を写真に撮ったものです。素材は今、石膏と言ってくれたんですけど、実は大理石です。白い、まあ、石ですね。白い石を彫って人の頭のところが見えていると思います。はい、他に?はい、Kさん。
S2.外国の人だと思う。
T6.どこから、外国の人だと思いますか?
S2.鼻が高いところと、目と眉毛が近いところ。
T7.この辺の(指さしながら)表情が日本人じゃない。外国の人じゃないかな?と。でも、外国の人って言っても、いろいろありますよね?どの辺の人だと思いますか?アメリカ、ヨーロッパ、ロシアなど、いろいろありますよね?
S2.アメリカ?
T8.アメリカね。はい、外国の人。他に。はい。
S3.誰かをにらみつけている。
T9.にらみつけていると思うのはどこから?
S3.額のところとかに、しわがあるから。
T10.ああ、ここに(指さしながら)しわがあるね。で、しわが入っていて、目つきもなんだかにらんでいるみたい。誰をにらんでいると思いますか?はい、他に?
S4.怒っている。
T11.どうして怒っていると思いますか?
S4.眉間にしわが寄っているから。
T12.にらんでいる。怒っているという意見が出ましたが、にらんでいるのは誰を?怒っているのは何に?どうでしょう?
(沈黙が続く)
みんな、自分の意見はないですか?最後のワークシートのアンケートの「自分の意見を言うことができた」の欄にまた、1に〇をするのですか?まだ、この人が男か女かも出てないのですが・・・。はい、Y君。
S5.男。
T13.どこから男だと思いましたか?
S5.髪が短い。
T14.髪が短いだけ?髪の短い女の人はいるよ。他に男性だって思えるところはないですか?はい、S君。
S6.髭が生えている。
T15.(口の周りや、もみあげのあたりを指さしながら)この辺りに髭が生えているように見えますね。どうやら男の人のようですね。他に、男の人だって思えるような要素が言える人。はい、Uさん。
S7.顔がごつい。
T16.顔がごつごつして、骨ばってる。女の人のようなするっとした顔じゃない。あごのところも、昨日のクラスでけつあごって言った人もいますけど、骨格がごつい感じがするので、男だと。そうですね。男性ですね。その通りです。で、にらんでるとか、怒っているとか言ってくれたんですけど、表情とかどうですか?
(やや、沈黙)はい、Hさん。
S8.にらんでいるっていうより、どこか遠くを見ているような・・・。
T17.ほう、遠くを見ている?それはどこから?
S8.目が、にらんでいるっていうより、上を向いているので、遠くを見ているように見える。
T18.この人の目線がにらんでいるというより、遠くを見ているように見えるってそういうこと。なるほど。はい、他にどうでしょう?
(沈黙)では、この人はどのくらいの歳でしょう?(沈黙)いくつぐらい?若い?歳?
M君どうですか?今、目があいましたので。
S9.40代くらい
T19.どこからそう思いますか?
S9.法令線が出ているから
T20.ここに法令線が出ているから、ちょっと歳じゃないか?あなたの頭の中では法令線が出るのは40歳くらいってことだね。はい、他にないでしょうか?みんな40歳くらいでいい?
(沈黙)黙っていると、みんな40代だってことになるけど、本当?40だと思う人?はい、30代だと思う人(挙手させる)。はい、Mさん。あなたは、何で30代だと思うの?
S10.40よりは若い。ヨーロッパの人だから、日本人よりは老けて見えると思うので、見た目よりは若い。
T21.なるほど。日本人から見て40歳くらいってことは、30くらいじゃないかと。そういうことね。はい、N君。
S1.時代が中世くらいだったら、あまり長生きはしていないと思うので、見た目よりは若いと思う。
T21.時代的に短命だったから、思ったよりは若いんじゃないかと・・・。なるほど、ありがとう。実は、この人は20代です。30代になる前の、この男の人の像です。ということは、意外と若い。男の人ですよ。で、何をしている人なんでしょうね?はい、I君。
S11.レスリングをする人。
T22.どこからそう思うの?
S11.耳とかがぼこぼこになっているから。
T23.ああ、ここの耳のところ(指しながら)ね。で、戦う人じゃないかと?はい、ありがとう。耳のところをみて言ってくれました。他にないですか?
S12.ボクシング
T24.どうしてボクシング?
S12.鼻が曲がっているから。
T25.殴られて曲がった?はい、という武闘派な意見が出ていますが、他にはないですか?
S1.皇帝。
T26.おお、いきなり、皇帝。王様ですか?なんで?
S1.鼻とか、耳とかが欠けているから、恨みを買いやすい人かな?と思ったから。
T27.恨みを買いやすいということは、頭に立つ人、と言うことで皇帝?と言うことはいつの時代の人ですか?
S1.古代
T28.古代で、皇帝と呼ばれる時代とは?
S13.ローマ。
T29.はい、そうですね。この時代はローマ時代です。ローマ時代の彫刻です。で、大理石で彫られてました。長らく地中に埋もれていました。埋もれていたものが発掘されたので、鼻が欠けていたり、首から下が
欠けていたりしている訳です。で、今、N君が言ってくれたように、ローマ時代の皇帝です。じゃあ、さっきの話に戻るけど、歳はいくつでした?そう、20代でしたね。20代でローマ帝国の皇帝になりました。そして、この人の表情は、さっきI君が言ってくれたようににらんでいる、怒っている、
遠くを見てる、でした。はい、じゃあ、この人の表情に注目して、この人は一体、今どんな気持ちでいるでしょう。
(沈黙)どんな気持ちでいるでしょう?
(沈黙)
にらんでいるとしたら、何に対して?誰に対して、どういう気持ちでにらんでいるのでしょう?怒っているとしたら、何に対して怒るのでしょう?遠くを見つめているとしたら、なぜ、遠くを見つめる必要があるんでしょう?この人はこの表情で何を考えているんでしょう?どうですか?
(沈黙)
ラストチャンス。誰か言う人いませんか?
Y君、どうですか?当てられて考えているようではだめだよ。いつでも答えられるように考えていないと・・・。M君どうですか?
S14.信頼していた家臣に裏切られて、家臣につかまって、その家臣をにらみつけている。
T30.ほう、家臣にやられるんじゃないかと?で、家臣ににらみを利かせている。
S14.やられて、つかまって・・・
T31.その先は、どうなるの?
S14.殺される。
T32.殺されちゃうんだけど、最後に家臣に対して威嚇している。と、思うわけだ。家臣をにらみつけている。ということで、M君はM君の考えを言ってくれましたけど、みんなにはみんなの考えがあると思います。あまり発言はなかったけど、発言してくれたことはこの像を語るのに大事な内容だったと思います。それらの内容も踏まえながら美術室に帰って、この人はローマの皇帝だったのだけど、この人の表情から、この人は何を考えていたのかをよくみて考えて書きましょう。

これで約20分くらいの実践です。もう少し時間が取れると彼の内面に迫ることができたと思うのですが、記述時間も確保しようとすると、ぎりぎりです。しかし、情報は提供したほうが読み取りに深まりが出ると感じました。

次の機会にはもう少し読み取りを積み上げられるようにファシリテートしたいです。
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