今日は、九州西海岸の第三セクター鉄道「肥薩おれんじ鉄道」に珍しいお客さんがやって来ました。
JR西日本管内の京都から遥々と、路線の状態を検査するためにやって来た「電車のお医者さん」、クモヤ443系です!

正午過ぎ、肥薩おれんじ鉄道の肥後高田駅に日奈久温泉駅方から進入するクモヤ443系。
今ではディーゼルカーの普通列車と貨物列車しか走らなくなったかつてのJR鹿児島本線を颯爽と走る姿は、国鉄の特急電車のような貫禄があります。
実際、クモヤ443系は今では九州からは引退して姿を消した国鉄型特急電車485系の設計思想やデザインを取り入れて造られているので、「国鉄型の最後の末裔」のような存在です。

肥後高田駅のプラットホームに身を横たえるクモヤ443系。この駅で暫しの小休止。




クモヤ443系の正式名称は「電気検測試験車」。
電化区間の架線の状態を調べる検測用の特別なパンタグラフと、走りながら架線の検測を行う各種センサーを搭載した検測ドームを備えています。
架線の安全を見守る重大な任務を帯びた車輌です。

JR西日本の旧・京都総合運転所に所属する車輌であることを示す標記。
現在、クモヤ443系はJR西日本管内にとどまらず広く西日本一帯の電化区間の検測を行っています。JR九州や肥薩おれんじ鉄道線にも定期的に「往診」にやって来るのです。

日本国有鉄道、昭和50年と刻まれたプレートが長年の活躍を物語ります。
あまりお客の目に触れる機会のない地味な車輌ですが、電車・電気機関車の運行を支えるまさに縁の下の力持ちです!

やがて、行き合いの下り普通列車が肥後高田駅に到着。

普通列車と行き違いに、クモヤ443系は八代駅方に向かって発車していきます。
…クモヤ443系は製造から40年が経過した2016年の今もなお、西日本各地を検測して走り回っていますが、車体の老朽化が進んでいる為に引退の噂が絶えません。
とは言え、引退が囁かれ始めて以来既に10年近くも、そんな噂を吹き飛ばすかのように元気に走り続けているタフな車輌であることも事実。
これからも末永く、国鉄特急の面影を残す風貌で時々ふらっとやって来て欲しいものです。
がんばれクモヤ443!
撮影地:肥薩おれんじ鉄道 肥後高田駅