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肝臓友の会との関わりで成長した肝臓専門医のブログです。2017.2.12より新規開始しました。

第47回 日本肝臓学会総会 報告 2

2011年06月05日 | 学会研究会報告新聞記事など

B型肝炎の無症候性キャリアのかたのs抗原の消失について検討している発表がいくつかありました。消えた人をさかのぼると10年くらい前にs抗原の数値が1000となり5年くらい前には100となっているそうです。消えてない人に当てはまるわけではないですが、経過として説明するにはいい話かなあと思ってメモしていました。

B型のキャリアの人の肝癌の発生は、どんなに落ち着いていてもあり得るとしか今は言えないって感じの発表でしたが、血小板などの値がいい人はほとんど心配しなくてもいいレベルになってきているような気がします。検診を最低年二回は受ける事が今は勧められていますがこうだったら大丈夫ってのが言えるようになるにはもう少しってところまで来てるのかなという気がします。55才くらいでs抗原が消え始めてきている人がいるとしかし、DNAは今の測定技術だとまだ残っているということで、s抗原の消失が治癒とは言えないのは確かです。s抗体がでてくる人たちの報告が今度は出てくると思うので期待して行きたいと思います。

C型肝炎では、ベータの先行投与が効果的という発表が多かったかな。
IL28がらみのものは、同じような傾向なのでそうだなあって感じでした。

あと、亜鉛の投与(プロマックなど)が味覚や肝臓の働きをよくする可能性があるという報告があったのはうれしい感じでした。

NASHについては
脂肪化が起こる遺伝子が日本人の七割にあることがわかり、非常に今後の肝臓病にとっては大事になるという展開が起こっているそうです。
検診で100にんみたら2人はNASHになる可能性をもっていると。今回の学会ではNBNCの肝がんの症例がたくさん集められていて、脂肪肝を本格的に診ていく時代になっていくようでした。健診や糖尿病を見ている医師に脂肪肝を見つけてもらって連携をして肝がんや肝硬変になるのをいかに予防していくかということが大事だと話していました。いろんなことが肝臓には起こるんだなあとつくづく思います。

B型肝炎は世界で22億人が感染し3億人がキャリアである状態
HBc抗体で高力価低力価という分け方はあまり意味が無くなってきていて、キャリアでも肝炎を発症していない場合はc抗体は低力価になることがわかってきていると。s抗原は感度がよくなってきているので、c抗体で判断する意味はほとんど無くなってっきているといっていました。うーん、s抗原陰性でc抗体低力価は、既感染と言い切れない世の中になってきたかなあ。。。
再活性化の話もたくさんありました。

C型肝炎は世界で1億7千万人いるとちょっとあやふやなメモ。今後の治療の話もしていました。

肝がんについてはソラフェニブの次の薬も出てくることになるだろうと、

肝再生については、肝細胞増殖因子と肝幹細胞移植自己骨髄移植やiPS細胞の話も出てきていて、今後に期待したいという感じでした。

第47回 日本肝臓学会総会 報告

2011年06月03日 | 学会研究会報告新聞記事など

相変わらずのメモ形式なので、誤字脱字あったら教えていただけたら幸いです。

今回はB型肝炎の方が私としては興味がある内容が多かったです。

ポスター発表から
P-60 ベータ型のインターフェロンのあとペグリバを継続する報告が奥新先生達のグループから有りました。これは、ベータの二回うち(1日量を朝夕に分けて二回打つことでウイルスの減少効果を高める方法)2週でウイルスを減らせるとその後のペグりば24週で済むという優れた治療です。現実的には外来で実施しずらいのでなかなかうちでは出来ないのですが、これにより、ウイルス量が1週目に2Log IU/ml以上か未検出の患者さん、2週目で3LogIU/ml以上か未検出となった患者さん、4週目で未検出となった患者さんで検討した結果が示されていました。2週目までに条件をクリアしている患者さんでは80%にSVRがえられるという力強い結果(もちろん早くウイルスが減るほど効果がいいのはよく言われていることです)、この治療のいいところは、26週で終了となることです。そして、最初のうちにウイルス量のヘリが遅い場合には、違う方法を検討しましょうと言えると。実際の臨床では開始時には月2回のウイルス測定ができますので、臨床の先生がたがすぐ応用できる結果となっています。奥新先生の発表はいつもすぐ応用できるので楽しみにしています。開始時のウイルスは前月に測って、開始月は1週目2週目、そして次の月には4週目を測ればこの方法が使えるということになります。ベータ型を先行しなくても、αでもこのペースで減るなら十分効果を期待できると言えると思います。

口頭発表では急性肝炎のB型についてのセッションに参加したとき
今の日本では、B型の急性肝炎が増えてきていて、ゲノタイプAが慢性化するというのは以前からいわれてきたことですが、性行為での感染が増えてきていて、B型だけではなくHIVやクラミジアなど他の性行為感染症もチェックしていくことが重要であることが、いわれていました。急性肝炎で核酸アナログ製剤を使うかどうかについては、発症時が明確でないためにまだ難しいのですが、自然経過をみていて治ってしまう場合も含まれているので核酸アナログが本当に必要な症例を絞りきれない所があるようです。
ゲノタイプのAの場合は、s抗原の陰性化も半年前後かかることが特徴で経過からもわかるようです。

ランチョンでB型肝炎のユニバーサルワクチンの話が聞けました。
国際化に伴い年間150から1500例のB型の急性肝炎の発症がある時代になってきていると。それも、慢性化するゲノタイプのAの比率が半分を占めるようになってきている。ピークは20代30代なので性行為による物が多く、やはりワクチンの必要性がましてきていることがわかります。
国民のB型キャリア(s抗原陽性)率は、8%以上の国が60%もある時代で、日本は2%以下の少ない国ですが、この時代は交流が多いことから国だけで考えるわけにはいかないということがよくわかります。そして、先進国では日本は数少ないB型肝炎ワクチンをじっしていない国になっちゃっています。国民を守っていないといわれるような感じ。。。
そうなると乳幼児期にワクチンをしておくことが、国民を守ることにつながり、たくさんの人が受けることで高齢者や合併症のある人たちもまもれるようになることから、アメリカでは予防接種は社会人の義務として定着していると話していました。
また、日本では有害事象(薬と関係なく起こるものも含む)と副作用(薬によるもの)をごっちゃにしているために、マスコミの対応も非常に問題で教育の必要性も述べられていました。
そして、海外では同日に複数のワクチンを接種することが当たり前となっており、日本でも小児科学会では認めているのに、国が添付文書に単独投与を考慮する事と追記させていてこれも実施する上で足かせになり得ることを述べていました。責任を追及されることを避けるための言い訳なんだろうなあと思って聞いていました。
じっさい、アメリカでは同時接種(異なるワクチンを混ぜて1本の注射にしてはいけないけど)により副作用が増えたりすることがないこともしっかりと確認されているそうです。
打つワクチンが沢山あるのでチェック票を作って、わかりやすくする工夫も現在はされているそうです。

皮下注射と筋肉注射についても、皮下のほうがうったあとの痛みや腫れが多く、筋注が望ましいことも意外と知られていないといっていました。効果も筋注の方がいいようと。

補償と救済制度についても改善が必要といっていました。アメリカでは誰もがネットを通じて副作用や有害事象を報告できるようになっていて、補償のでる範囲もしっかりと決められていて、でると最初から認めているものについてはすぐでるそうです。微妙なものは検討すると。

ワクチンを国策として導入するにも検討する組織が国とは独立してあることも大事だと話していました。

酵母をつかったワクチンが増えているので酵母アレルギーについて質問が出ていましたが、乳幼児期にはほとんどないアレルギーで、実際に報告もないのでほとんど心配ないと話していました。

あと、B型肝炎の核酸アナログ製剤をやめる方法などについてもたくさんの報告がされるようになってきていて、安心してやめられる方法が見えてきている感じがします。