火星へ探査に行くとしたら （その5） 地球への帰還

ついに、地球に帰るときがやってきました。

火星の重力を振り切り、飛行士を安全に宇宙へ送り出すため、
火星上昇機“MAV”の内装の重量は、徹底的に押えられなければいけません。

“MAV”は片道宇宙タクシーであって、居住空間ではないんですねー
実際、座席すら用意されない可能性もあります。

その場合、宇宙飛行士らは輸送中ずっと立っていることになります。


どこでドッキングするか

ロケットによる上昇は7分間。
でも、それで終わりではないんですねー

飛行士らは、燃料をさらに使って地球帰還機“ERV”と、
ランデブーおよびドッキングする軌道まで移動する必要があります。

“ERV”が待っているのは、
火星の高度250キロから33800キロを回る1火星日の楕円軌道なので、
“MAV”の搭乗時間は最長で43時間にも及ぶ可能性があります。

クルーは火星表面から打ち上げられ、 火星上空のパーキング軌道で待つ地球帰還機“ERV”とのランデブー飛行を行うまで、 最長で43時間“MAV”に搭乗する。

ただ電気推進システムの技術者は、軌道上に浮かぶ巨大な居住空間“ERV”を、
出来るだけ高い位置に保ちたいと考えています。

彼らが望んでいるのは5から10火星日の位置で、
そこまで上昇機“MAV”に来てほしいと思っています。

でも、“MAV”の搭乗時間が長くなると、必要な施設が増えることになります。

43時間であれば、宇宙服を着たままの状態でも、
なんとか耐えてもらえるでしょう。

それが3日や5日、あるいは7日にまで延びたとしたら…
いろいろな物が必要になり、“MAV”のサイズがどんどん大きくなることに。

この問題は、火星ミッション計画者の間でも、
まだ未解決のままになっています。

ドッキングが完了し、クルーや積荷を“ERV”に移動したら、
“MAV”は切り離され、未来の火星ミッションと干渉しない軌道に移動し、
廃棄されることになります。

人類史における重要な役割を果たした小型宇宙船は、
こうしてむなしい最期を迎えます。

一方でクルーと帰還機“ERV”には、地球に向けた長い航海が待っています。

無事、地球に帰るまで火星探査は終わっていないんですねー


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