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モバライダー mobarider

惑星表面からの光を直接観測すれば大気の有無が判別できるようです。

2019年09月04日 | 宇宙 space
赤外線天文衛星“スピッツァー”の観測により、地球に似た系外惑星の表面の様子が初めて明らかになりました。

惑星表面から放射される赤外線から分かってきたのは、大気はほぼ存在しないこと。
表面は暗い色の火山岩に覆われているようです。


系外惑星の見つけ方

2018年のこと、NASAの系外惑星探査衛星“TESS”によって系外惑星“LHS 3844 b”が発見されます。

“LHS 3844 b”はインディアン座の方向約48.6光年彼方に位置していて、半径は地球の1.3倍ほど。
主星の“LHS 3844”は“M型矮星”と呼ばれるタイプの恒星で、表面温度は摂氏約2700度と低く、サイズは太陽の5分の1ほどしかありませんでした。
  “M型矮星”は寿命が長く、数が非常に多いので、天の川銀河の惑星の多くは“M型矮星”を主星に持つと考えられている。

“TESS”は、地球から見て惑星が恒星の手前を通過(トランジット)するときに見られる、わずかな減光から惑星の存在を探ります。

この方法の場合、惑星からの光は主星の明るさに埋もれてしまうので、惑星の光を直接検出することは難しくなります。

そこで、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの研究チームが考えたのは、NASAの赤外線天文衛星“スピッツァー”を使って“LHS 3844 b”からの赤外線を直接検出することでした。


惑星表面から放射される赤外線

“LHS 3844 b”は主星から90万キロしか離れていないので、潮汐力によって主星にいつも同じ面を向けて公転しています。

この現象を“潮汐ロック”といい、主星と向かい合う昼側の表面温度は約770度にも達しているんですねー

研究チームがとらえたのは、この高温の惑星表面から放射される赤外線でした。
○○○
(上)地球から見た“LHS 3844 b”の動き。主星の周りを11.1時間周期で公転していて、定期的に主星の手前を横切る。
(下)主星と惑星を合わせた光度の変化。惑星が主星の手前を横切る(3)と、光度が5%ほど暗くなる。また、惑星が主星の奥側を公転する間(6から12)は、主星と向き合う面が地球から見えるので、わずかに明るくなる。このときの光度曲線の形から大気の有無を判定できる。
観測の結果明らかになったのは、“LHS 3844 b”の昼半球と夜半球の間では熱がほとんど移動していないことでした。

もし、惑星に大気があれば、昼側で熱せられた大気は膨張し、風が発生して夜側へと熱を運ぶはずです。

でも、“LHS 3844 b”の熱の分布には、主星に向かい合っている点を挟んで完全に東西対象になっていて、温度差が均されているような兆しが全く見られず…

さらに、“LHS 3844 b”の昼夜の温度差は、この条件下で生じうる最大の値に近いもの。
この状況とよく一致するのは、惑星が大気を持たない岩肌のモデルでした。

これまでに“スピッツァー”や“ハッブル宇宙望遠鏡”によって、ガス惑星の大気についてはいくつも観測が行われてきました。

でも、今回の“LHS 3844 b”は、表面からの光を直接観測して大気の有無を判別できた例としては、過去最少の惑星になりそうです。


惑星が大気を失う要因

“M型矮星”を回る惑星で、どのように大気が保たれるかという理論はたくさんあります。
でも、これまで理論を実験的に検証することはできていなかったんですねー

今回、太陽系外の地球型惑星としては初めて、大気が存在しないことを観測から断定することができました。

惑星の大気が保たれたり、失われたりする要因を知ることは、生命が存在できる環境を太陽系外で探す上で非常に重要なことになります。

大気があるおかげで、地球に液体の水が存在し、生命が繁栄できています。
火星の場合は、大気圧が地球の1%にも満たないので、かつて表面に存在した海や川は失われています。

今回の観測によると、“LHS 3844 b”には地球の大気圧の10倍(10気圧)より濃い大気は存在しないことが確実で、1~10気圧の大気を持つ可能性もほとんどないそうです。

これほど主星に近い惑星では、もし希薄な大気があったとしても、主星からの強力な放射や恒星風によって失われると考えられます。

特に“M型矮星”の場合、光度は太陽より弱くても、紫外線の放射は太陽よりも強くなります。

若い段階の“M型矮星”であれば活動が激しく、フレアが頻繁に発生することもあるはず。
これにより生まれたばかりの惑星の大気を失わせてしまう可能性もあります。

さらに、研究チームでは、“LHS 3844 b”の表面の反射率の測定から、惑星の化学組成も推定しています。

そこから分かったのは、“LHS 3844 b”の表面は非常に暗い色をしていること。
火山岩の一種である玄武岩で覆われているようですよ。
○○○
“LHS 3844 b”のイメージ図。表面は暗い色の溶岩が固まった岩石で覆われている。大気はほぼ存在しない。


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