日本時間の2023年6月20日のこと、JAXAとヨーロッパ宇宙機関(ESA)の水星探査機“ベピコロンボ”が3回目の水星でのスイングバイを実施。
探査機は水星の上空236キロの距離を通過したそうです。
探査は、日本の水星磁気圏探査機“みお(MMO : Mercury Magnetospheric Orbiter)”とヨーロッパ宇宙機関の水星表面探査機“MPO(Mercury Planetary Orbiter)”の2機で行われる予定。
この2機の探査機は、水星周回軌道投入までの飛行を担当するヨーロッパ宇宙機関の電気推進モジュール“MTM(Mercury Transfer Module)”に積み重なった状態になっています。
そして、MTMに搭載されているイオンエンジンを使い、減速するように水星を目指しています。
これは、地球よりも内側の惑星に行くには、加速ではなく減速が必要なため。
水星の周回軌道に入るのに必要なエネルギーを、もし地球の外側にに向けて使ったとすると、太陽の重力圏を脱出できてしまうぐらいになってしまいます。
そう、距離としては近い地球と水星ですが、到達するためのエネルギー的には遠い存在になります。
このため用いられるのが、燃料消費の無いスイングバイという飛行方式です。
そして、打ち上げから約7年かけて水星に到達し、世界初となる2機の探査機を周回軌道へ投入することになります。
ベピコロンボ探査機が、水星に最接近した時刻は日本時間の2023年6月20日4時34分で、水星表面から約236キロ離れたところを通過。
最接近時のベピコロンボ探査機は太陽光が届かない水星の夜側にいましたが、遠ざかるにつれて昼側の地形が探査機のモニタリングカメラ“MCAM”でとらえられるようになりました。
翌日の日本時間6月21日には、スイングバイ中に撮影された3点の画像がヨーロッパ宇宙機関から公開されています。
1点目の画像は、MTMに搭載されているMCAMで最接近の15分後に撮影されたもの。
撮影時点での水星表面からの距離は約2536キロでした。
細長い楕円形をしているスヴェインスドッティル・クレーター(直径約213キロ)は、水星表面に対して天体が斜めに衝突したことで形成されたと考えられています。
その他に見られるのは、2008年にNASAの探査機“メッセンジャー”が発見したビーグル断崖。
ビーグル断崖の全長は約600キロで、スヴェインスドッティル・クレーターを引き裂くように走っています。
ヨーロッパ宇宙機関によれば、こうした断崖は水星のあちらこちらで見つかっていて、水星の地殻変動史を研究するのにうってつけの場所だそうです。
これらの断崖に見られる複雑な相互作用は、水星が冷えて収縮するときに地殻が滑って崩れたことを示しています。
2点目もMCAMの画像で、最接近の22分後に撮影されたものになります。
撮影時点での水星表面からの距離は約4000キロでした。
ビーグル断崖の右下には、ジャマイカの芸術家エドナ・マンリーにちなんだマンリー・クレーター(直径約218キロ)があります。
マンリー・クレーターは国際天文学連合“IAU”の惑星系命名ワーキンググループによって、2023年6月13日付で命名されたばかりでした。
その理由は、水星の初期に存在した炭素に富む地殻の名残りかもしない暗い色(反射率が低い)の物質が、そこで掘り起こされているから。
さらに、クレーター内の窪みは滑らかな溶岩で満たされていて、水星の火山活動が長期にわたっていたことを示しています。
同様の物質が存在する他の場所とともに、マンリー・クレーターはベピコロンボミッションで詳しく調査される予定です。
3点目の画像は、最接近の55分後にMCAMで撮影されたもの。
撮影時点での水星表面からの距離は約1万キロでした。
ヨーロッパ宇宙機関では、ベピコロンボ探査機の本体とアンテナの間に水星が見える様子を「水星を抱きしめているようだ」と表現しています。
ベピコロンボ探査機が、2025年12月に水星周回軌道に入るのに必要な水星スイングバイはあと3回。
次の第4回水星スイングバイは2024年9月5に実施される予定ですが、それまでにもベピコロンボ運用チームがやるべきことは多くありそうです。
今後、ベピコロンボは電気スラスターの推進力で、太陽の強力な重力に対してブレーキをかける重要な期間に入ります。
スラスターは8月初めから約6週間稼働し、その後も断続的に、数日から最大2か月の出力が実施される予定です。
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探査機は水星の上空236キロの距離を通過したそうです。
スイングバイのため水星に接近したベピコロンボ探査機のイメージ図。(Credit: ESA/ATG medialab) |
減速するように水星を目指す探査機
国際水星探査計画“ベピコロンボ”は、JAXAとヨーロッパ宇宙機関のそれぞれの周回探査機で、水星の総合的な観測を行う日欧協力の大型ミッションです。探査は、日本の水星磁気圏探査機“みお(MMO : Mercury Magnetospheric Orbiter)”とヨーロッパ宇宙機関の水星表面探査機“MPO(Mercury Planetary Orbiter)”の2機で行われる予定。
この2機の探査機は、水星周回軌道投入までの飛行を担当するヨーロッパ宇宙機関の電気推進モジュール“MTM(Mercury Transfer Module)”に積み重なった状態になっています。
そして、MTMに搭載されているイオンエンジンを使い、減速するように水星を目指しています。
これは、地球よりも内側の惑星に行くには、加速ではなく減速が必要なため。
水星の周回軌道に入るのに必要なエネルギーを、もし地球の外側にに向けて使ったとすると、太陽の重力圏を脱出できてしまうぐらいになってしまいます。
そう、距離としては近い地球と水星ですが、到達するためのエネルギー的には遠い存在になります。
このため用いられるのが、燃料消費の無いスイングバイという飛行方式です。
探査機が、惑星の近傍を通過するとき、その惑星の重力や公転運動量などを利用して、速度や方向を変える飛行方式。燃料を消費せずに軌道変更と加速や減速が行える。積極的に軌道や速度を変更する場合をスインバイ、観測に重点が置かれる場合をフライバイと言い、使い分けている。
“ベピコロンボ”は1回の地球スイングバイ、2回の金星スイングバイ、そして6回の水星スイングバイを実施することで、これらの惑星の重力を使って徐々に減速するんですねーそして、打ち上げから約7年かけて水星に到達し、世界初となる2機の探査機を周回軌道へ投入することになります。
打ち上げから9回のスイングバイを経て、水星の周回軌道に入るまでの軌道の変化を示した動画。(Credit: ESA - European Space Agency) |
スインバイ中に撮影された水星の地形
ベピコロンボのミッションにとって、今回の水星スイングバイは3回目になります。ベピコロンボ探査機が、水星に最接近した時刻は日本時間の2023年6月20日4時34分で、水星表面から約236キロ離れたところを通過。
最接近時のベピコロンボ探査機は太陽光が届かない水星の夜側にいましたが、遠ざかるにつれて昼側の地形が探査機のモニタリングカメラ“MCAM”でとらえられるようになりました。
翌日の日本時間6月21日には、スイングバイ中に撮影された3点の画像がヨーロッパ宇宙機関から公開されています。
ベピコロンボの電気推進モジュール“MTM”のカメラで日本時間2023年6月20日4時49分に撮影された水星。(Credit: ESA/BepiColombo/MTM) |
撮影時点での水星表面からの距離は約2536キロでした。
細長い楕円形をしているスヴェインスドッティル・クレーター(直径約213キロ)は、水星表面に対して天体が斜めに衝突したことで形成されたと考えられています。
その他に見られるのは、2008年にNASAの探査機“メッセンジャー”が発見したビーグル断崖。
ビーグル断崖の全長は約600キロで、スヴェインスドッティル・クレーターを引き裂くように走っています。
ヨーロッパ宇宙機関によれば、こうした断崖は水星のあちらこちらで見つかっていて、水星の地殻変動史を研究するのにうってつけの場所だそうです。
これらの断崖に見られる複雑な相互作用は、水星が冷えて収縮するときに地殻が滑って崩れたことを示しています。
ベピコロンボの電気推進モジュール“MTM”のカメラで日本時間2023年6月20日4時56分に撮影された水星。(Credit: ESA/BepiColombo/MTM) |
撮影時点での水星表面からの距離は約4000キロでした。
ビーグル断崖の右下には、ジャマイカの芸術家エドナ・マンリーにちなんだマンリー・クレーター(直径約218キロ)があります。
マンリー・クレーターは国際天文学連合“IAU”の惑星系命名ワーキンググループによって、2023年6月13日付で命名されたばかりでした。
水星のクレーター名は音楽家や画家、作家などから採用される。
MCAMチームの一員であるオープン大学のDavid Rothery教授によると、マンリークレーターは興味深い探査対象になるようです。その理由は、水星の初期に存在した炭素に富む地殻の名残りかもしない暗い色(反射率が低い)の物質が、そこで掘り起こされているから。
さらに、クレーター内の窪みは滑らかな溶岩で満たされていて、水星の火山活動が長期にわたっていたことを示しています。
同様の物質が存在する他の場所とともに、マンリー・クレーターはベピコロンボミッションで詳しく調査される予定です。
ベピコロンボの電気推進モジュール“MTM”のカメラで日本時間2023年6月20日5時29分に撮影された水星。(Credit: ESA/BepiColombo/MTM) |
撮影時点での水星表面からの距離は約1万キロでした。
ヨーロッパ宇宙機関では、ベピコロンボ探査機の本体とアンテナの間に水星が見える様子を「水星を抱きしめているようだ」と表現しています。
ベピコロンボ探査機が、2025年12月に水星周回軌道に入るのに必要な水星スイングバイはあと3回。
次の第4回水星スイングバイは2024年9月5に実施される予定ですが、それまでにもベピコロンボ運用チームがやるべきことは多くありそうです。
今後、ベピコロンボは電気スラスターの推進力で、太陽の強力な重力に対してブレーキをかける重要な期間に入ります。
スラスターは8月初めから約6週間稼働し、その後も断続的に、数日から最大2か月の出力が実施される予定です。
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